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リーファとアイ

アイはヒロたちと同じ宿屋、リーファと同室に泊まる事になった。

リーファは極度に無言で無表情の少女にどう接していいのか戸惑うばかりだ。リーファに分かりやすく説明すると魔法人形(ゴーレム)のようなものだとヒロたちは言っていたが・・どう見ても普通の人間にしか見えない。こんな精巧なゴーレムがありえるのだろうか。だがアイが人に対する悪意を持ち合わせないのは理解できた。

部屋着に着替え終え、あとは寝るだけとなったリーファはベッドに寝転がり、アイに声を掛ける。

「ねぇアイ、あなたにちょっと聞きたいんだけど・・」

「なんでしょう」

アイはベッドから起き上がる。

「寝たままでいいわよ。みんなにも聞いてるんだけど・・あなたの生きる意味って何かしら」

アイは淀みなく答えた。

「私の生きる意味、存在意義は人を助ける事、人の社会に貢献する事です」

「アイが自分でやりたい事は無いの?」

「特にありません」

「そう・・」

それっきり言葉が続かずにいたところ、アイから問いかけられてリーファは驚いた。

「こちらからもリーファさんに訊ねたいことがあります」

「え? 何?」

「エルフはなぜ人と比べて長寿なのでしょう」

これまで何度も聞かれた質問だった。答えも決まっている。

「それは生まれ持った違いとしか言えないわね。過去に何人もの学者がエルフの長寿の秘訣を探ったけれど、これという結論に達した人はいないの」

「そうなのですか。よければ少し遺伝子情報の採取にご協力をお願いしたいのですが」

「遺伝子・・何? なんだか怖いからやめとくわ。さ、もう寝ましょ」

リーファは思わず布団にくるまってアイに背中を向ける。


宿の食堂で4人揃って朝食を取る。ヒロがリーファに尋ねた。

「アイは大人しかったろ?」

「ええ。でもちょっと気になる事が・・」

「何かあったんですか?」

リーファがアイをチラリと見て、躊躇いがちに口を開いた。

「夜中に起きたとき、アイの方からうなるような、呻き声のような音が聞こえたんだけど・・」

「えっ」

皆の視線がアイに集まる。アイはパンを咥えたまま平然と声を発した。

「それはデフラグ音です」

リーファが聞きなれない単語に眉根を寄せる。

「デフ・・デフラグ? 何なのそれは?」

「夜間スリープ中に、その日に集めた情報を整理して記憶領域の空きを確保する行為です」

「ええと・・記憶を整理してるってこと?」

「はい」

「そういえば人が夢を見るのは、そういった記憶の整理のためらしいな」

「そう考えると人と変わらないね」

ヒロとユウは他人事のように呑気だ。

「気になるようでしたら、今後は消音モードに切り替えます。効率が15%落ちてしまいますが」

「そうしてもらえると助かるわ」

リーファが安堵する。正直かなり不気味だった。

「しかしアイは普通に食事から栄養を取れるのか?」

「はい。消化機構は人と変わりません。ただ脂質は多めに取る必要があります」

アイがサラダのドレッシングをそのまま口に流し込んだ。

ヒロとユウは笑い、リーファは呆然とそれを見守るしかなかった。

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