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始動

救出された3人の体調も治ったところで、今後の展望を皆に話すヒロ。

「・・大体こんな感じだ」

「しかし驚いたぜ。ヒロがそこまで考えてたとは・・」

「ガルデアをダンジョンや冒険者を中心にした都市に変えてしまおうなんて、私にはとても思い浮かびませんでした!」

フリージアがヒロにキラキラと憧れの目を向ける。

「武器屋や防具屋、道具屋、鑑定屋に寺院・・あと冒険者ギルドとか言ったか? そりゃ何だ?」

キルシュレドの言葉に、ヒロが飲んでいたジョッキをテーブルに置く。

「ああ。今でもカズンたちが警備してるが、ダンジョンは誰でも好き勝手に入っていいという訳には行かないだろう。ダンジョンに入っていいという資格を発行し、冒険者全員を管理する団体が必要になる。それが冒険者ギルドだ」

「ふーむ、全く見当がつかんが・・」

腕を組むカズンにユウが声を掛ける。

「カズンさん、良ければ冒険者ギルドをやってみませんか?」

「えっ! 俺が!? 何で俺?」

カズンは椅子から飛び上がらんばかりだ。

「カズンさんは奥さんも子供もいるし、もう危険はこりごりだと、ダンジョンには潜らないと言ってましたよね。冒険者ギルドはカズンさんのダンジョン警備、元の仕事の延長ということになります」

「そう・・なのか?」

首を傾げるカズンに、ヒロが熱っぽく語る。

「カズン、これは滅多にないチャンスだぞ。ガルデアはこれから冒険者が中心の街になる。その冒険者たちを束ねる冒険者ギルドは、かなりの権力を持つことになるんだ。領主ですらその存在を無視できない。冒険者たちに何かを命令しようとしたら、冒険者ギルドを通さざるを得ないからな」

「・・・」

カズンは黙って聞いている。ヒロがユウに目配せし、ユウが言葉を続ける。

「カズンさんは立派にダンジョン警備の仕事をこなされています。領主の娘がダンジョンに入るのを力づくでも止めると言うのは中々できる事じゃありません。今後、同じようにダンジョン探索に来た人たちを冒険者として認めるかどうか。それは実際にダンジョンに入ったカズンさんにこそ判断できると思うんです」

「・・少し考えさせてくれ。頭を冷やしてくる」

カズンは立ち上がり、外の空気を吸いに行った。キルシュレドが口を開く。

「俺は地元に帰るぜ。穴がどんなものか調査をしに来ただけなんでな」

「ああ。こっちもしばらくバタバタするだろうけど、なるべく早く戻ってきてくれよ」

ヒロの言葉にキルシュレドが顔を顰める。

「何戻ってくる前提の話してんだ。ダンジョン? 冒険者? お前らは好きにすりゃいいが、俺はもうゴメンだぜ。誰が好き好んで命の危険があるとこに飛び込むかよ。頭おかしいんじゃねえか?」

「なっ! 何を言うんです!」

フリージアが椅子から立ち上がり抗議の声を上げる。が、ヒロが遮った。

「いや、お前は戻ってくる。キルシュ」

「あん?」

「ダンジョン探索はお前の好きなカード勝負の何倍もスリルがあるからな。それにリターンも莫大だ。こんな楽しい勝負は無いぞ、キルシュ。お前、もうカード勝負をしたって前ほど楽しくないんじゃないか?」

「うっ!?」

キルシュレドは胸を抑えた。確かに最近はカードをしていても集中できず、負けた時に冷静に受け止める自分に戸惑うくらいだった。今まで原因は分からなかったが、ヒロの言う通りだと悟った。

呆然とするキルシュレドにユウが優しく話しかける。

「キルシュレドさん。冒険者には職業、クラスという枠組みがあります。例えばボクやヒロは戦士、リーファさんは魔法使いですね。キルシュレドさんは・・」

「俺は?」

ユウはニッコリと微笑んだ。

「トレジャーハンターです。ダンジョンや宝箱の危険な罠を解除するスペシャリスト。いくら魔物を倒しても、宝箱が開けられないんじゃ財宝は手に入りません。パーティに無くてはならない存在なんです」

「トレジャーハンター・・」

キルシュレドは頭をブンブンと振って甘い妄想を追い出す。

「フ、フン! ガキの夢物語じゃあるまいし。もう借金を返しても有り余るほどの金が手に入るんだ。二度とこんなとこには来ねーよ!」

そして席から立ち上がり、自分の部屋へと去って行った。ユウとヒロが顔を見合わせる。

「キルシュレドさん、大丈夫かな?」

「ああ、大丈夫だ。念のため後でダメ押しをしておこう」

ずっと黙って聞いていたリーファが口を開いた。

「あんたたち、二人組の詐欺師みたいね」

ヒロが肩をすくめる。

「酷い評価だな」

そこへカズンが外から戻ってきて席につき、ジョッキの中身を一気に飲み干す。

「・・冒険者ギルドとやら、やってみようと思うんだ。だが全く分からないから、フォローはしてくれよな」

「もちろん! さすがカズンだ。決断を誤らない」

「カズンさん、ありがとうございます。やった!」

ヒロとユウが軽く拳をぶつける。

「ほんと、息ピッタリよね」

リーファの言葉にフリージアが瞳を輝かせた。

「ええ。とっても素敵です」

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