第8話 花の国 オルデリア
ルシファー
「アスくん起きて〜!そろそろ行くよ〜」
アスベル
「……一日の最初の視界がルシファーとか最高すぎ…」
ルシファー
「ふふ。アスくん大丈夫?」
王都へ向かう日。
お出かけ日和の空は雲ひとつなく、朝の光が草木を綺麗に照らしている。
アスベル
「まぶし……チッ、まじで良い加減にしろよ太陽……」
ロア
「アスベルくん太陽にキレないで。さっきまで幸せそうにしてたじゃん」
寝起きのアスベルは、光に顔をしかめながらもどこか穏やか。
面白がるロアの突っ込みを、アスベルを背負ったラウルが困ったような笑みで聞いている。
ルーク
「髪紐つけてくれたんだ」
デュオン
「うん。似合うでしょ?」
ルーク
「すっごく似合う」
ディン
「デュオン、耳は?耳飾りは?」
デュオン
「つけてるよ。ほら」
相変わらず、ルークとディンはデュオンに甘々。自分たちが贈った物を身につけてくれるのが相当嬉しいようだ。二人揃って胸に手を当ててHAPPYと言いたげな笑みを浮かべている。
ルシファー
「…どっちがどっち?」
ヘスティア
「こっちがソフィアでこっちがヘスティアです」
ソフィア
「お揃いなの。いいでしょ?」
ゼナ
「同じすぎない?ヘスティアが目ぱっちり開くと本当にわからない」
髪型も服装も完全にお揃いのソフィアとヘスティア。
ゼナとルシファーは、朝から“見分けクイズ”に苦戦中。
そんな笑い声に包まれながら、王都へ向かう旅が静かに始まろうとしていた。
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ディン
「それじゃ、17時にまたここに集合ね」
ソフィア、ヘスティア、ルシファーの三人は生地布や刺繍糸、装飾品を見に城下町へ。
ルーク、ディン、デュオン、ゼナ、ラウル、アスベル、ロアの7人は噂の大鉄道へ。
ここは"オルデリア"という、家から一番近い王都。
花が美しい国で、治安も良いので観光地としても人気がある。
城下町のあちこちが花びらで彩られていて、道行く人もどこか浮き立って見えた。
また後でね。と三人と分かれて大鉄道に向かった。
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町人
「お嬢さん!よかったらこれどうぞー!」
ディン
「は?ちょ、ボク男なんですけど」
振り返ったディンの頬が引きつる。紙を押し付けられた手を見つめ、眉をひそめる。
デュオン
「ディン何もらったの?」
ディン
「んー?なんだろね」
ルーク
「なんて書いてあるの?」
ディン
「……ハッピーフラワーウキウキフェスティバル…?」
アスベル
「頭悪そうな名前で草」
どうやらオルデリアでは今週、大きなお祭りが開かれているらしい。
ディンが紙を広げると、デュオンがその横にそっと寄って覗き込む。
それに合わせて、ルークたちも自然と体勢を低くした。
デュオンの身長に合わせようとするその動きは、誰かが合図を出したわけでもないのに息がぴったりだ。
小柄なデュオンを囲むように、ディンをはじめ、背の高いメンバーたちがぐるりと屈みこむ。
外から見れば、小柄な子を中心に大人たちが膝を折って輪を作る、なんとも微笑ましい光景だった。
城下町を歩く人々がその前を通りすぎる。
花飾りを抱えた女性がふと足を止め、
町人
「……あの子たち、兄弟かな?」
町人
「かわいいねぇ」
と隣の男性と顔を見合わせて笑った。
ルーク
「お祭り!」
ロア
「楽しそうだね〜。姉さんたちと合流したら行ってみよっか」
ゼナ
「見て!屋台出てるって」
誰かが読み上げるわけでもなく、全員が一枚のチラシを真剣に覗き込みながら口々に感想を言う。
デュオンの肩の高さに集まる七人の視線。
花の国オルデリアの陽光の下、その光景はまるで“幸せそのもの”のように見えた。
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駅の入り口は、花の国らしくツタと花弁の飾りで彩られていた。
古い木材の骨組みに、ところどころ金属の装飾が施されていて、田舎町らしい温もりと、王都らしい整然さが同居している。
構内に足を踏み入れると、すぐに機関車の低い唸りが耳に届く。
花売りの呼び声、パン屋の香ばしい匂い。
観光客やこれから外国へ行く人やらで賑わっていた。
どこか懐かしく、けれど確かに息づく王都の駅——。
空へ伸びる天井のガラスから光が差し込み、ホームの床に花びらが一枚、風に舞って落ちた。
ルークたちは三つ先の駅、"ベリスビレッジ"まで乗る予定だ。ベリスビレッジはのどかな田舎駅。
気分転換に列車旅をするにはもってこいの距離と風景が楽しめる。
ロア
「ベリスビレッジ行き…ベリスビレッジ行き……あった!すぐ出るのがあるじゃん!」
ディン
「一本後の乗ろうよぉ。珈琲とか飲み物買って行こ」
ロア
「え〜次の三十分待つじゃん」
ディンとロアが言い合いしている中、どうやらアスベルが構内をキョロキョロ見渡している。
ゼナ
「何か気になるものがあるとか?」
アスベル
「うん?いや、前に来た時より随分と大きな駅になったな〜と思って」
ゼナ
「前…ってどれくらい前?」
アスベル
「うーん…五十年くらい前だったかな。なんかでルシファーとここの駅に来たんだよね」
アスベルはさらっと五十年前の話をしているが、その話を聞いているゼナがまだ産まれる前の話。ゼナは自分が産まれるよりずっと前の話を昨日のことのように語る声に混乱しながらも返事を返した。
ゼナ
「……五十年も前か」
ゼナとアスベルが話をしながらゆっくり歩いている。
デュオンはルークの手を掴んで離れないようにしているようだ。ラウルはみんなを見守るように一番後ろを歩いていた。
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ディン
「田舎行きの路線は空いてていいねぇ」
ゼナ
「貨物車と一緒になってるんだね」
ロア
「人があんまり乗らないからついでに貨物も運んだほうがコスト的にいいんだろうね〜」
発車まであと三分。ちらほらお客さんが乗車しているが空席も目立つ。
ゼナ
「お、座席の向き変えられるみたいだね」
アスベル
「最近の乗り物はハイテクでいいね」
ディン
「ルーくんは一番奥ね」
座席の向きを変えて八人席を作った。これでみんなでお話しながら列車の旅に出られるというもの。今日は天気も良いので景色が綺麗に見える。
窓から入る風がみんなの髪を揺らした。
ゼナ
「…………ん?」
ラウル
「どうした?」
ゼナ
「いや…(なんか変な気配がした気がしたけど…)」
ゼナは周りを見渡しながら席についた。
奥にルークとアスベル。外側にディンとロアが座り、真ん中にデュオンとゼナ、ラウルが座る。
アナウンス
『まもなく、ベリスビレッジ行きが発車いたします』
大きく汽笛がなり、車輪が動き始めた。
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【キャラクター紹介】
アスベルとルシファーの種族は妖族。
妖族の中でも力の強い鬼神族という種類。
長寿で十人の中では最年長。
みんなと出会うまではルシファーといろんなところに行っていたので土地勘や行ったことがある国の特徴がわかるようだ。
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【ワード集】
妖族
長寿な種族。妖力というものを宿している。
大妖族という強い力を持っている種類がいる。
鬼神族・精霊族・海祇族、この三種族は純血種で大妖族。
その下位互換に妖精族・妖獣族・天狗族などの混血種がいる。
【小話】
オルデリア地方
王都オルデリアは花の国とも呼ばれている。
天候気候が一年中安定しているようだ。
第8話を読んでいただきありがとうございます。
次回も、水曜日 19:30分に投稿いたします。
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