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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
日常編
8/21

第7話 じゅうにんといろ

夕食の準備をしていると外から次々と帰ってきた。


最初に帰ってきたのはソフィアとヘスティア。抱えた紙袋には色とりどりの野菜がぎっしり詰まっている。

 


ロア

「姉さんたちももらったの?僕もおじさんにもらったよ」


ソフィア

「あらそうなの?まぁ十人もいるからすぐ無くなるよ」

 


と笑いながら台所に置いた。


次に帰ってきたのはラウルとアスベル。アスベルはいつものようにぐったりしていた。起きてはいるようで帰ってそうそう座ろうとしていたが、戦闘後のようでラウルがシャワーを浴びさせに風呂場に連行していった。


最後に姿を見せたのはデュオンとルシファー。

ルシファーの手には蕾のついた枝。



ルシファー

「見てアスベル!蕾がついてるの」


アスベル

「綺麗だね」

 


湯上がりでほかほかになったアスベルの元に行って見せびらかしに行った。アスベルは愛おしそうに相槌を打った。その隣ではデュオンとソフィアが薬草の確認をしていた。



デュオン

「少し萎れちゃった…」


ソフィア

「全然大丈夫!ありがとうね」



台所には穏やかな空気が満ちる。



 ✳︎



ロア

「ほらみんな、座った座った!」



ロアが料理を皿に盛りつけ、ラウルが手際よく運んでいく。

ゼナとデュオンは飲み物を注ぎ、ディンはルークの早食いを止めようと話しかけていた。



みんな

「いただきます!」



香り立つ湯気の中、賑やかな晩餐が始まる。

味覚の鈍いラウルとデュオンも、楽しそうに口を動かしている。

一方でルークは熱々のまま勢いよく平らげ、ロアに心配される始末。



ロア

「ルーク、もうちょっと冷まして食べなよ〜」


ルーク

「熱いの平気だよぼく」


ロア

「いやびっくりするから。僕が」

 


ふとディンが人参を匙に乗せてニヤニヤしながら言った。



ディン

「あ、デュオンほら"にーにん"だよ"にーにん"。"にーにん"入ってるよ」


デュオン

「絶対言ってくると思った」


ルーク

「人参見ると絶対言うよねディン」


ディン

「本当に可愛かったんだよぉ。デュオンに"にーにん"って言ってほしくて一時期ずっと人参出してた」


デュオン

「小さい時の話でしょ」



みんなが笑い出す。

かつての幼いデュオンは、発音がうまくできず"にーにん"や"リン(ディン)"と呼んでいたらしい。

今の落ち着いた姿からは想像もできない可愛い過去話に、場が一層和む。



デュオン

「まだ発音が難しかったの」


ディン

「舌足らずな感じがしんぼうたまらんかった。まじで可愛かったからね?」


ルーク

「かわいかったよね」


アスベル

「今だと想像出来なさすぎてちょっと聞いてみたかった気持ちはある」



デュオンは慣れっこなのか、はいはいと流す。



✳︎



楽しい晩餐が一段落し、湯気の名残りがまだ漂う食卓に、のんびりとした空気が流れていた。

食器を片付ける音も落ち着き、笑い声が余韻のように残る中——

ディンとルークが、こそこそと動き出した。



ディン

「デュオン、ちょっとおいで」


デュオン

「?」



食後の食器を洗う音が台所から響いていた。



ソフィア

「ふふ、またいつものかな?」


ラウル

「そうみたいだな」

 


ソフィアとラウルが並んで皿を流し、湯気の向こうで静かに笑っている。

リビングの中心では、ディンとルークが真剣な顔で何かを並べている。



ディン

「はいどうぞデュオン」


ルーク

「どっちがどっちの贈り物でしょうか?」



机の上に装飾のついた髪の飾り紐と、群青の石の耳飾りが置かれた。

 


デュオン

「いつもありがとう。うぅん…髪紐がルークで耳飾りがディン?」


ディン

「正解!」


ルーク

「すご〜い!連続正解更新だね」


ディン

「なんでわかるの?」


デュオン

「なんとなく。長年の勘です」



ドヤァとフンスするデュオン。



ディン

「くそかわ…」



その仕草にディンがテーブルに突っ伏して悶絶し、ルークは隣でにっこり微笑む。


いつも冷静沈着で大人びたデュオンも、ルークとディンの前ではまるで年の離れた弟のようだ。


デュオンは、贈られた髪紐と耳飾りを手に、どこか嬉しそうに笑っていた。

その様子に、ディンとルークは完全に溶けてしまっている。

笑いながら話す三人の姿に、リビングの空気はますます柔らかく満ちていた。


台所では、ソフィアとラウルが洗い物の続きをしている。

十人分の食器はなかなかの量で、二人の手は休まる暇がない。

少し遠くから聞こえる笑い声や話し声は良いbgmになっているようだ。


その一方で、ヘスティア・ゼナ・ロア・アスベル・ルシファーの五人は、大きなソフィアの周辺でくつろいでいるようだ。アスベルがソファの大半を寝そべって占領している。

そんなソファに沈んだアスベルが、ぽつりと呟いた。



アスベル

「そういえばさ——」



みんなの視線が集まる。



アスベル

「王都を走ってる“大鉄道”の噂、知ってる?」


ロア

「えぇ?知らないな〜」



ロアが紅茶を傾けながら応じる。



アスベル

「暴走列車が走ってるらしいよ」


ゼナ

「暴走列車?幽霊列車じゃなくて?」


アスベル

「うん。フォルヴァール(魔法の国)の魔法道具で運行してるでしょ?でも急に加速したり、急停車したりが頻繁に起こってるらしい。怖くない?」


ヘスティア

「魔法道具がおかしくなってるってことでしょうか」


アスベル

「どうだろ。意図的にやってるならバレるだろうし」


ロア

「機関師って国政師こくせいしだったよね?許可なく勝手なこと出来なさそうだけど」

 


アスベルが語るのは、**“暴走列車”**の噂。

急加速や急停車を繰り返す、大鉄道の異常。

幽霊でも怪奇でもなく、魔法道具の狂いの可能性が高い。

国政師が管理しているはずの列車で、何が起きているのか——。


国政師は王都共通重要公務。資格のある者しか携われない上、行動記録を取るため違反すればすぐに大ごとになる。

国を跨いで運行している大鉄道の"機関師"や、国の入場規制などを行う"守衛"、貿易などを行う"通商師"、国の治安を守る"騎士"などが代表的である。



アスベル

「そう。だから不気味だねって話してたよ。まだ大きな衝突事故とかは起きてないらしいけど、目的もよくわからないって」


ルシファー

「確かに不思議だね…」


ゼナ

「ちょっと気になるね」



何が原因で発生しているのか正直気になるところ。



ルシファー

「そうだ!明後日にね、ソフィアとヘスティアと王都までお出かけしようかって話してたのよね!ついでに見に行ってみる?」


ヘスティア

「いいですね。ありです」


ロア

「みんなで出かけますか〜」


ゼナ

「列車乗るの久しぶりだ」



こうして、噂から始まる**“暴走列車編”**の幕が、静かに上がる。


 ✳︎✳︎✳︎


【ワード集】


 国政師こくせいし

人間界には色んな国がありますが、全国共通で配置され ています。軍服のような装いに、黒地に金色の糸で刺繍された腕章を身につけています。腕章が国政師の証で、どこの国に行っても待遇が同じです。国政師というだけで信頼されるのですごい資格なのです。

常に行動記録がされるので、不正などは行いにくいです。

 

【小話】


デュオンは身体と言葉の発達が遅く、5歳くらいになってやっと話しだしました。聞き取りは出来ても発音が難しかったようです。1人で歩けるようになったのも5歳ごろで歩けないうちはルークかディンが抱っこして移動していました。"にーにん"の他にディンと言えずに"リン"呼んでいたりと可愛いエピソードがあります。

第7話を読んでいただきありがとうございます。


第0話〜第7話まで一気に公開しております。

第7話以降は定期的に更新していきますのでよろしくお願いします。


タイトルの「じゅうにんといろ」は、十人十色。10人と色。2つの意味を込めてひらがなで表記しています。

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