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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編
24/29

第23話 陽の国 デューレブラッド

砂嵐が窓の外を覆い、景色は灰色に溶けていた。

揺れに身を預けるうち、ソフィアとヘスティアは静かに眠っている。

 


ロア

「ディン、ちょっと服」



小声で呼びかけながら、ロアがディンの横腹を軽く引っ張る。

 


ディン

「わっ!?なに?」


ロア

「声大きいよ。姉さんたち寝てるでしょ…もう…。ヘスティア姉さんにかけるの」


ディン

「あぁ…そういうこと」



ロアはディンが尻に敷いていた自分の服を引き抜き、真ん中に座ったまま眠るヘスティアの肩にそっと掛けた。



ディン

「寝てるのによくわかるね」


ロア

「なにが?」


ディン

「どっちがどっちか」


ロア

「逆になんで君はわからないの…実弟なのに…」


ディン

「わかんないよ。同じ顔だもん。最近はお揃いの服ばっか着てるから余計わかんない」


ロア

「デリカシーないよね本当に」


ディン

「喋ってればまだわかるんだけどなぁ」



ディンは座席から身を乗り出し、眠る二人を覗き込むように目を凝らした。



ルーク

「あ!明るくなってきた!」


ルシファー

「わぁ…!」



外が少しずつ明るくなり、砂嵐が晴れはじめる。

窓には砂の色が残り、視界はまだ茶色く濁っていた。



ディン

「窓汚な」


ルシファー

「砂嵐は終わったけど…見えにくいね」



『お客様にご連絡申し上げます。砂嵐を抜けましたため、機体の洗浄を行います。魔法道具によるものですので、ご安心くださいませ』


 

ルーク

「え?なになに?」


ロア

「え?魔法道具?」



車内に、低く重たい音が響いた。


ゴゴゴゴゴ……。


 

ルシファー

「なにが始まるの……?」

 


次の瞬間、機体の先頭から、勢いよく光が走る。


シャーーーッ!!


淡く光る膜が窓を覆い、前方から一気に流れ落ちた。

砂色に曇っていた視界が、なぞられるように洗い流されていく。

 


ルーク

「わぁ…!」


 

光の層が幾重にも重なり、窓を覆っては消える。

機体をなぞるたび、砂の色が削ぎ落とされ、景色が少しずつ本来の色を取り戻していった。



ロア

「ほえぇ…先頭から順番に……洗ってるんだ」


ヘスティア

「うるさ…なに…?なんですか…?」


ソフィア

「ヘス!見てみて!すごいよ!」



振動と音に揺すられ、二人は目を覚ましたようだ。

 


ヘスティア

「わ…!魔法道具ですか…?」


 

低い振動が床を伝い、足元に響く。

洗浄は一定のリズムを保ったまま、後方へと進んでいく。

やがて、窓の外がふっと明るくなった。



ルシファー

「すごーい!あっという間に綺麗になった!」


ヘスティア

「(こういう使い方も出来るんですね…)」


ルーク

「景色が茶色い!」



窓の向こうには、ほとんど緑のない大地が広がっていた。

土と砂の色に覆われた、乾いた景色だ。

遠方には鉱山のようなものが聳え立っている。


『まもなく、デューレブラッドに到着いたします。長らくのご乗車お疲れ様でした。お降りの際はお気をつけくださいませ』



 ✳︎



デューレブラッドの駅に到着した。

何か…何かが…異常だ。



ディン

「おぇ…あっつ…どうなってんの!?」


ロア

「あっっっっっつ…!」


ディン

「暑すぎる!ロアくん!早よして!」



息を吸い込むと肺が熱くなるほど。

熱風を吸い込んでいるのだ。

 


ロア

「わかってるわかってる!…なんか話に聞いてたのと違わない…?いや…ルシファーちゃんたちを疑っているのではなく…」



ロアが白と青の魔法陣を展開した。

ロアの周りが涼しくなっていく。

 


ルシファー

「可笑しいなぁ…前に来た時こんなに暑くなかったよ」


ヘスティア

「……前っていつですか…?」


ルシファー

「80年くらい前?」



ルシファーが何食わぬ顔で年数を口にした。



ディン

「昔すぎるよ!!」


ソフィア

「80年も経ってたらまぁ…気候が変わっててもおかしくないかも…」


ルシファー

「えぇ…ごめん…そんな昔…?」



ルシファーがごめんね…と申し訳なさそうにしていると…。



ルーク

「(良い匂いする…)」



ルークが何かに吊られて、ふらふらと歩き出してしまった。

 


ディン

「あ!?ちょっと待って!ルーくん!ストップ!ロア何してんの!早くこっち来て!ルーくんがどっか行く!」


ロア

「痛だだだだ!引っ張らないで!一人で追いかければいいじゃんか!」


ディン

「暑いんだってば!」


ロア

「涼しさとルークどっちが大事なの!?」


ディン

「ルーくんに決まってるだろ!」


ロア

「じゃあ手離して!早く行けってば!」


ディン

「行くから早く来て!」


ソフィア

「ルークもう行っちゃったけど…」


ディン

「ロアがモタモタしてるから!」


ロア

「君が覚悟決めて行かないから!」



早く行けよ…と、呆れて見ながらもルークの後を追った。



 ✳︎


ディン

「くっそ…あづ…暑すぎる…」


ルーク

「あ!ディン!見て!ごはんごはん!」


ディン

「そ…そうだね…」



ディンが汗だくでルークの元に辿りついたようだ。

駅構内にある飲食店の前に着いた。



ロア

「すごいな…」


ソフィア

「凄い根性」


ヘスティア

「ですが…本当にいい香りですね。鼻がツンとするような…ハーブに似た感じ…」


ルシファー

「とりあえず…ご飯食べる?」


ルーク

「食べる!」



 ✳︎



ディン

「涼し…ロアくん好き…」


ロア

「きもっちわり」



座席に座り、お品書きを見た。

ページを捲る手が止まった。1ページ目で。

 


ソフィア

「これは…」


ヘスティア

「料金表あってます?」



一瞬、桁を読み間違えたかと思った。



ソフィア

「最安値が1000フォンス…」



ソフィアがパラパラと全ページを確認した。



ディン

「1000?最低が?」


ソフィア

「うん」


ディン

「本当だ…。オルデリアだと300くらいなのに。……税金高…」


ロア

「経済回してこ。ってことで好きなの食べていい?」



ロアがディンの方を見る。

 


ディン

「ボクが出すんですか?」


ロア

「お会計ディン持ちね。どれにしよっかな〜」


ディン

「何?え?ボクなの?」


ロア

「当たり前でしょ。僕のこと強制連行してきたんだから。僕、お留守番が良かったのに…」


ソフィア

「(根に持ってる…)」


ディン

「いや、自分で行きますって言ったじゃん…」


ロア

「ご飯くらいご馳走してくれないとね〜?」


ヘスティア

「ご馳走様です」


ディン

「姉さん?」



なぜか全員分ディンが出すことに。



ディン

「まぁ…いいけど…」


ロア

「いいんだ」


ディン

「無駄遣いじゃないからね」



ドヤァ…と好きなものを頼みたまえと偉そうにしてきた。



ルーク

「これなんて書いてある?」


ディン

「さぼてん。……さぼてんって何?」


ソフィア

「砂漠地帯に生息する植物」


ルーク

「ぼくこれにするー!果物みたい」


ルシファー

「わたしスパイスシチューってやつにする」


ロア

「僕スパゲッティ!好きなんだよね〜」


ソフィア

「私、この豆と野菜のフライにする」


ディン

「ボクは豆のスープにしようかなぁ」


ヘスティア

「わたくしはこの赤紫色のスープで。カンショ?のスープ」



ヘスティアがいかにも身体に悪そうな色をしているスープを選んだ。お世辞にも食欲が湧く色ではない…。


 

ディン

「色やば。毎回やばいの食べるよねぇ…美味しいの食べればいいのに」


ヘスティア

「美味しい料理は、家で食べられるので」


ロア

「……………。」



ロアがその話を聞いて思わずニヤけてしまう。

 


ルシファー

「ロアのご飯美味しいもんね」


ロア

「そうかな…」


 

ウェイターを呼んで、料理を注文した。

一番最初に来たのはルークが注文したサボテンの盛り合わせ。丸い形のサボテンだったり、薄平いサボテンが乗っており、ナイフが添えられて運ばれてきた。

 


ルーク

「いただきま〜す!」



ルークが棘のついたまま口に運んだ。



ソフィア・ヘスティア・ロア・ルシファー

「え!?」


ディン

「え"!?ちょっちょっちょ!ルーくん!?棘取らないと!いで食べるやつなんじゃない?」


ルーク

「え、そうなの?」


ディン

「口の中は!?痛くない?棘刺さってない??」



ディンがルークの顔をガッと掴んだ。

 


ルーク

「へーひらよ(平気だよ)」


ロア

「さすが…」


ディン

「心臓に悪いよぉ…」


ルーク

「これくらい食べても大丈夫だよ」


ディン

「ルーくん基準だったらね…?ヒヤッとしちゃうから」


ヘスティア

「周りをナイフで切ってお召し上がりください…とのことです」


ルシファー

「棘ごと食べるとは思わないよ…ナイフついてるし…」


ルーク

「あ、ディン!中のほう甘酸っぱくて美味しいよ!」


ディン

「良かったねぇ…」


ソフィア

「そこを主に食べるのね。本当に果物みたい」


ディン

「ボクのまだこないから切ってあげるよ…」


ルーク

「ありがとうディン」



続々と暖かい料理が運ばれてきた。

頼んだ料理からはスパイスの良い香りがする。



ルシファー

「ん〜!美味しい!」


ロア

「すごく美味しい!少し辛いけど、程よい辛さ!」


ヘスティア

「…………。」


ソフィア

「ヘス、大丈夫?私のと変える?」


ヘスティア

「いえ…美味しいんです。意外と」


ソフィア

「ふぅん…ほんとに?」



ソフィアがヘスティアが掬い上げたスープを自分の口へ持って行った。



ヘスティア

「な……」


ソフィア

「……ほんとだ。甘いね」


ロア

「(あららぁ…)」


ヘスティア

「………は?」


ソフィア

「私のもソースが美味しいんだよ。ヘス?ヘス〜?もしもし?」



ヘスティアが放心して固まってしまった。



ソフィア

「固まっちゃった。まぁいいか」


ロア

「(いいんだ…)」



お食事タイムも終わり、駅を出た。



ルーク

「ここがデューレブラッド!」



国全体が赤色の煉瓦造りの建物で統一されており、迫力のある街並みだ。



ディン

「眩しい……」


ヘスティア

「本当に日差しが強いですね…原住民の方は大丈夫なのでしょうか…」


ロア

「僕も帽子持ってくればよかった…」


ソフィア

「すごく綺麗な外観だね。統一感があって良いな」


ロア

「えぇ…?そうかな〜あんまり外観とか気にしてない国なのかと思ってた」


ソフィア

「?そう…?普通に綺麗だと思ったけど」


ロア

「だってあそことかなんか黒いの建ってない?」


ソフィア

「どこ?」


ロア

「だからあそこ。大きい建物」


ルシファー

「黒いの?」



ソフィアとルシファーが目を凝らすがそのような建物は見当たらない。

 


ロア

「え?僕幻覚見てる…??」


ソフィア

「具合悪い?大丈夫?」


ロア

「元気だけど…」


ルシファー

「えっと…とりあえずどこ行く?」



ルシファーが話を切り替えた。

ルークが探しているものを、見つけられたらいいなと思ってきたのだ。



ディン

「ん〜この辺に森とかないかなぁ…森までいかなくても植物が多い場所とか」


ルーク

「町の人に聞いてみようよ!」


ルシファー

「そうだね!知ってるかも!」



2人が勢いよく飛び出す!…が、ルシファーだけ急いで戻ってきた。



ルシファー

「暑かった…」


ディン

「ロアから離れたら死ぬって…喉が焼けちゃうみたいだもん呼吸すると」


ロア

「固まって歩いてね」


ディン

「ルーくんも!1人で遠く行かないで!」


ルーク

「わかってるー!」


ソフィア

「元気だなぁ」



こうして駅の前から移動して、座ってゆっくりしている人たちに話を聞いてみることにした。



町の人

「旅人さんか、珍しいね」


ルーク

「こんにちは!この辺に森とかってあったりする?」


町の人

「森?あぁここにはないが、デューレブラッドの駅からローカル線に乗って、グレンロックっていう小さい町に行ってみるといけるかもしれないよ」


ルーク

「列車で行けるんだ!よかった!」


町の人

「走る本数が少ないから、時刻表をよく見て行くといいよ。前に帰りの列車を逃してしまった旅人さんがいたんだよ」


ソフィア

「ご親切にどうも」


町の人

「気をつけてお行きよ」


ルシファー

「ありがとう!」



グレンロックに向かうため、再び駅に戻ることに。



ルシファー

「すごく優しい人たちだったね!」


ソフィア

「そうだね」


ディン

「逆に不気味じゃない?」


ルーク

「そういうこと言わない」


ディン

「だってボクたちよそ者だよ?警戒するでしょ普通」


ロア

「まぁ、一理あるかも」


ソフィア

「穏やかな人が多いだけなのかも」


ヘスティア

「どっちでもいいので屋内入りません?」



駅に入り、グレンロック行きの切符を買った。



ロア

「1時間に1本…しかも夕方までしか出てないんだ」


ソフィア

「町の人も言ってたもんね」



ちょうどグレンロック行きが出る頃だったようで、上手く乗ることができた。



ロア

「いやぁよかったね。ラッキー」


ヘスティア

「ここから15分ですか。割と遠いですね」


ディン

「また列車移動か…」


ソフィア

「気長に行こう」



『グレンロック行きが発車致します。』



汽笛が鳴り響き、列車が動き出した。

もう少し、列車旅だ。



✳︎✳︎✳︎


【ワード集】

フォンス

この世界のお金です。

1フォンス=1円


✳︎


【小話】

ヘスティアちゃん、外食はチャレンジ料理やら変わった料理をあえて食べているみたいです。

ちなみに好きな食べ物はロアくんのお料理らしいです。美味しいもんね。


『アルスダリアの祈り』第23話を最後まで読んでいただきましてありがとうございます。


車の自動洗浄機ってなんか楽しくないですか?

列車の洗浄シーンはあれだと思ってください。

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