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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
天冥界編
22/30

第21話 帰還

鐘が鳴り、会合の終了を知らせた。

界域主も退出していく。



セティーナ

「悪いなグレイス」


グレイス

「…………。」



複雑な面持ちの弟に軽く小突いて謝る兄。

余計に機嫌を損ねてしまったようだ。

 


ステラ

「グレイス様もシオン様も、良かったではありませんか?今度改めてご挨拶に」


シオン

「ステラ様…」


セティーナ

「この場で決まったんだ。安易に手は出されんさ」


グレイス

「……わかってる…」


セティーナ

「嬉しい反面、叶えてやれなかった罪悪感か?」


グレイス

「そうだよ」


セティーナ

「はっはっは!今度一緒に謝ってやる。そう怒るな」


ステラ

「また近々、お話聞かせてくださいね」


シオン

「はい」



セティーナとステラもロゼットを連れて退出した。

グレイスたちも会場を後にした。



 ✳︎



ラウル

「言い返してくれて嬉しく思った」


デュオン

「流石にムカついた」


ラウル

「ふふ…あのまま静かにしていれば"追放"だったのに」



それを聞いてデュオンは口を尖らせた。

自分でもそう思うようだ。

 


デュオン

「そうだったかもしれないけど…帰ってから思い出してイライラしそうだったから、言い返して良かったよ」


ラウル

「そうかもな」


デュオン

「……あ」



少し落ち着いて景色が見られるようになった頃、ふと思い出した。



ラウル

「?どうした?」


デュオン

「虹の塔見てくるの忘れてた」


ラウル

「それは、また今度にしよう」


デュオン

「うん。また今度」



デュオンとラウルは転移門で天界第肆界域に戻るとやっと一息ついた。



フェイクシード

「思っていたより暗い顔してないな」


 

フェイクシードが話しかける。

いつもより長い会合に心配してくれていたようだった。



デュオン

「うん…なんか後半よくわからなかったし」


フェイクシード

「面倒な連中もいただろう。よく耐えたな」


デュオン

「なんだか想像していたより柔らかい人たちだったよ」


フェイクシード

「……そうか。お前は、そう思ったのか」


デュオン

「うん。ずっと寛容だった。もっと怒ってきたり、罵られたりするものかと思ってた」


フェイクシード

「まぁ…悪い結果ではなかったようで、良かったな」


デュオン

「ありがと」

 


とりあえずさっさと神殿に戻れ。とフェイクシードが促した。

転移門から少し離れるとデュオンがまた右手をあげた。

また、合図だ。

ラウルも黙って左腕を差し出す。

デュオンはそこへ指先を預け、静かに歩き出した。



ラウル

「デュオン、わざわざ俺の腕を借りなくてもいいんだぞ」


 

来た道を辿れば神殿に着く。困っている様子もない。

それでもデュオンは、指先を離さなかった。



デュオン

「うん。知ってるよ」


ラウル

「知ってる…」


 

デュオンがラウルの顔を見てにこっとした。

困っていなければ、こうする必要がないことを"知っている"。でも困っているわけでもなさそう。

 


ラウル

「………そうか」


デュオン

「うん。行こう、ラウル」


 

意図がよくわからないが、至近距離であれば何があっても守ることができる、ラウルにとっても都合がよかった。


やっと神殿に戻り、至聖所に入った。



ペデルギウス

「おかえりなさい!お疲れ様でした!大変でしたね」


レオレイア

「身軽になってくるといい。ここには私たち以外入ってこないからな」


レティシア

「預かっていた衣服は、中に置いてあります」


 

ペデルギウスとレオレイア、レティシアが出迎えてくれた。ラウルはともかく、重装のデュオンは早く身軽になりたくて仕方がない。座る前に着替えてしまうことにした。



デュオン

「疲れたぁ…」



デュオンは椅子に座って天井を見上げた。

いくら堂々としていたとはいえ、緊張していたのだろう。

身体の強張りを解いて深く息を吸った。



ラウル

「大丈夫か?」


デュオン

「流石に緊張したのかな…なかなか身体の力が抜けないや」


ラウル

「デュオンって緊張するのか…??」


デュオン

「するよ…ちゃんと…」


レオレイア

「よく頑張ったな。二人が戻ってきたら帰れるからな」


デュオン

「うん。ありがとうレオ」


 

労わるように優しく背をさすってくれた。



ラウル

「立派だった」


ペデルギウス

「少しだけ見てみたかったです」


ラウル

「あそこまで白熱するとは思っていなかった…」


デュオン

「天界第壱界域の人みたいに怒って、なんだお前はー!ってなってもらいたかったんだけど…」


ラウル

「でも良かったんじゃないか?グレイス様たちにお会いしたい時に会いやすいだろうから」


デュオン

「そうだけど…。まぁそこは信用しないとか…」


 

異例で特別扱いはありがたい部分もあるのは確かだけど、後から面倒なのでは…とふと頭をよぎる。けど、そこはもう信用するしかないか…と言葉を飲み込んだ。



ラウル

「とにかく、人間界に帰れるんだ。デュオンも、それで承認してくれた界域に言い返さなかったんだろう?」


デュオン

「……うん…。そういえば、僕は承認してもらえたけどラウルは?ラウルってどうなるんだろう?」


ラウル

「…………。確かに」


 

人の心配している場合ではないな…と自分の置かれている状態に焦り出した。



グレイス

「その心配はない。ラウルも気にせずに帰りなさい」



ちょうど帰ってきたようで扉がバン!と開いた。

 


ラウル

「グレイス様!?おかえりなさいませ…」


グレイス

「二人ともご苦労だった。皇族と皇降族は一揃いだ。デュオンが良いならラウルも大丈夫だ」


デュオン

「良かったねラウル」


ラウル

「あぁ…いや本当に…」


 

ひと安心しているとグレイスがデュオンに向かって膝をついて話し出した。

 


グレイス

「デュオン…」


 

グレイスがデュオンに向かって頭を下げる。



グレイス

「本当にすまない。思っていた結果ではなかったよな…?」


デュオン

「……うん。だけど平気だよ。望んでいた結果ではなかったけど、納得はしたから」


グレイス

「………そう…か…」


デュオン

「でも」


グレイス

「?」


デュオン

「もし、何かあったら、その時は助けて」


グレイス

「……あぁ…もちろんだ…!」



グレイスがデュオンの手を力強く包んだ。

約束だと。

 


シオン

「それにしても、エメット様が意見されるとは…」


グレイス

「いつも会合の時は興味なさそうに座っているだけなんだがな…」


 

グレイスとシオンが中心に話をしてくれた。

ペデルギウスたち3人は真剣に話を聞いている。

今回の会合の結果を喜んでくれているようだ。

間違いなく、良い方向に進んだと思う。


 

デュオン

「さ、そろそろ帰ろう。ラウル」


ラウル

「あぁ」


 

デュオンとラウルが人間界に戻る時が来た。

一人一人とハグをして、また会おうと約束した。



デュオン

「来て良かったよ。みんなにも会えて」


グレイス

「来てくれてありがとうな。二人ともどうか元気で過ごしてくれ。何か助けになれることがあれば、いつでも頼ってくれると嬉しい」


 

グレイスがデュオンとラウルの頭を撫でた。

ラウルとライザも最後の挨拶を交わした。



ラウル

「母上とヴィヴィにもよろしくお伝えください。また今度、必ずお会いしますと」


ライザ

「あぁ。デュオン様をしっかりお守りするんだぞ。………本当に、またお前の顔が見られて、声が聞けて心から嬉しく思う」


 

ライザとラウルがハグを交わした。

力強いハグだった。

 


グレイス

「フェイクシードが人間界に送ってくれる」


フェイクシード

「人使いが荒い」



いつのまにか部屋に入ってきていたようで、グレイスの周りをふよふよ飛んでいた。

 


グレイス

「いつもすまんな」


フェイクシード

「グレイスたちに頼まれればそちらまで行く。それ以外では行かない。達者に過ごせよグレイスの子供…と冥界神」


デュオン

「ありがとう。フェイクシードがずっと人間界で僕を捜索してくれてたんだって聞いたよ。巡り合わせてくれてありがとうね」


フェイクシード

「うん」


ラウル

「フェイクシードも元気でな」



フェイクシードが姿を消し、鈴の音が響き渡った。


 

ラウル

「戻ってきた」


デュオン

「身体が軽い〜」


 

デュオンが伸びをした。ぴょんぴょんとその場で跳ねてみたり、強い重力から解放されたことを確かめた。

 


ラウル

「よし、家に帰るぞ」


デュオン

「うん!」


 

ラウルがデュオンの前を歩いた。

すぐ近くに見える家まで、早足になる。



デュオン

「五日も会ってないと久しぶりに感じるなぁ。二日くらいは会わないことあったけど」


ラウル

「そうだな」


 

そんなこんな話しているうちに家の前についた。

何やら騒がしいような。



デュオン

「なんか騒いでる?声が…」


ラウル

「とりあえず開けてみるか」



ラウルがゆっくりと家の扉を開けた。


 

デュオン・ラウル

「「ただいま」」


ディン

「!デュオン!!」


デュオン

「うわぁ!?」

 


ディンがものすごい勢いでデュオンに抱きついた。

デュオンもラウルも久しぶりだしな…と思っていると…



ソフィア

「随分と早かったね」


ラウル

「早い?」


ゼナ

「うん…一日経ったかな?」


ラウル

「い…一日…??」


 

天冥界では五日経っていたけど、人間界では一日くらいしか経っていないらしい。時差のことを忘れていた。

 


ラウル

「天冥界だと五日ほど経ったんだ。こちらは一日しか…そうか…」


ロア

「えぇ!?五日も?そんなに時間差があるんだね」


ルーク

「それで?ちゃんとお話できた?」


ラウル

「あぁ。とりあえず、人間界で過ごすことは承認してもらえた」


ゼナ

「それはよかった」


デュオン

「予想外なことに味方してくれる人数が多くてさ」


アスベル

「デュオンさんはどんな脅しをしたんで?」


デュオン

「脅してないよ」


 

二人は会合の顛末をかいつまんで話した。

その後にラウルも親と再会出来たことやデュオンの兄弟の話をした。



ソフィア

「ラウルも親御さんに会えて良かったね。嬉しかったと思うよ」


ラウル

「あぁ。お元気そうでよかった。行って…良かったよ。ソフィア」


ソフィア

「うん」

 


ソフィアがよかったねと微笑んだ。みんなどちらかというとデュオンより、ラウルを心配していたようで、表情が明るくなって帰ってきたことに安堵していた。



デュオン

「そういえば聞いて!ただ聞いてほしいやつ」


ディン

「なになに?どしたの?なんでも聞いちゃう」


 

ラウルが話しているとデュオンが引っ付いているディンに聞いてほしいことがある。意見はいらない。ただ聞いてもらいたい。と声をあげた。



デュオン

「あのね、ラウルがね…」


 

ラウルの正装がものすごくかっこよくて、立ち振る舞いや仕草も綺麗でラウルの方がずっと皇族ぽかった。とデュオンが話した。


 

ディン

「そうだったんだぁ」

 


珍しく"聞いて"と甘えるデュオンに、ディンは黙って頷いた。

 


ロア

「えぇ?正装ってなに!?めっちゃ見たかったんだけど」


 

ディンが聞いてるだけに徹していたのにロアがその空気をぶっ壊した。



ディン

「ちょ、あのさぁ!ほんと!そういうとこぉ!」


ロア

「わぁぁあやめてよディン!ほっぺ引っ張んないで」


ディン

「うるさいよ!デュオンが一生懸命話してるでしょ!」


ロア

「痛い痛い!別に話遮ってないじゃん!昨日からずっとうるさかった君にうるさいとか言われたくないんだけど!」


 

話を聞いてもらいたかっただけなのにこんなに大騒動になるなんて。とデュオンがスン…となった。二人とも今が一番うるさいよ…。



ゼナ

「大丈夫?デュオン」


デュオン

「うん。なんか、帰ってきたなぁって思う」


ルーク

「頑張ったね」


 

ルークとゼナがデュオンに寄り添った。ルークがデュオンの頭を撫でた。デュオンもそれを無抵抗に受けた。

ぽすん…とルークに身も預けた。


 

デュオン

「うん。僕、頑張ったんだよ」


ルーク

「偉い!」


ゼナ

「髪の毛綺麗だね。誰にやってもらったの?」


デュオン

「ラウルだよ。髪紐はグレイスのおにいさんがくれてね。ルークにもらったのは腕につけてた」


ゼナ

「こんなに綺麗にできるんだ…ロアみたい…」


 

ルークとゼナがデュオンを真ん中に挟んで座った。

甘えてくるデュオンが可愛くて仕方ないようだ。



ヘスティア

「よっぽどお疲れだったんですね」


ラウル

「無理もない。一人で二十人相手したんだ。相当疲れているんだろう」


アスベル

「二十人?え、何?戦ってきたの?」


ラウル

「いや誤解だ。話し合いだ話し合い」

 


ルシファーとヘスティアが、神族って意外と野蛮なのかな…と顔を合わせたが、急いでラウルが誤解を解いた。



アスベル

「一人ってなんぞ。ラウルは何してたの」


ラウル

「俺はその、立場上発言権がなかったから…後ろで見守っていたんだが…ものすごい迫力だった…」


 

アスベルがなんで一人?二人じゃなかったの?と素直に質問した。なんとなくデュオンなら相手を黙らせるくらいはしそうだよな…と謎に納得してしまった。



ルシファー

「でも二人とも、ほっとした顔してる。いつもの二人に戻ってよかったね」

 


ルシファーがみんなも安心するよね。と優しく笑った。

なんの前触れもなく、事が進みすぎた今回。全員心の準備ができていなかった。当事者ならもっと不安だっただろう。笑って帰ってきてくれた事がとても嬉しい。



ラウル

「うん。よかった」


 

十の声がまた、家の中に満ちていく。

重たい空の下で過ごした日々も、今はもう遠く。

あたたかな灯りの中で、みんなの笑顔がひとつ、またひとつと咲いていった。



✳︎


【小話】


デュオンが困っていないのに右手を上げて合図を出していた理由、気になりますよね。

あの合図の意味は「離れるな」でした。


意外とひっつき虫なデュオンさん。

会合でずっと緊張していたこともあり、無意識に安心感を求めていたようです。

助けが必要だったわけではなく、ただ――

そばにいてほしかっただけ。


それが、デュオンなりの甘え方だったのでした。

ちなみにラウルはその合図が「離れるな」という意味だったのをまだ知りません。

『アルスダリアの祈り』第21話を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。


デュオンとラウル、頑張りましたね。

ゆっくりとお休みよ…

次話からまた新しいお話が始まります!

長かったです〜!

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