第20話 決着
年始なので…今日も投稿してしまいました。
やっと会合始まりましたよ…
視線が集まる中、デュオンとラウルは中央へと進み、そこで足を止めた。
天使族 フレイクラウン
「天界第肆界域。
失踪していた第二皇子の生存を確認。
今後の扱いについての会合を行う。
執行者、フレイクラウン」
天使族がそう告げると、次の瞬間、その姿は跡形もなく消えた。
天使族 フレイクラウン
「鐘が鳴り次第、質疑応答を始めよ」
天使族の声だけが響いた。
デュオン
「(質疑応答から…?意思表示が先じゃないんだ…)」
刺すような視線が、一斉にデュオンへと集まった。
天界と冥界、それぞれ十名ずつが席についている。
皇族の背後には、対応する皇降族が一人、直立していた。
値踏みするように見つめる者。
興味深そうに観察する者。
最初から関心を持たない者。
その視線の種類は様々だが、
向けられている先は、ただ一人だった。
天使族が姿を消してから、しばし。
――鐘が、鳴り響いた。
空気が変わる。
今まで向けられていたのは、好奇と猜疑の視線。
だが鐘の音を合図に、それは“審理する目”へと変わった。
その多くが、同じところで止まった。
体躯。
小さい。
年月を経た神族の基準から見れば、成長が著しく遅い。
本来なら、威圧を纏っていてもおかしくない年齢だ。
だが――
そこには、何もない。
翼はなく、力を誇示する気配もない。
ただ、人の形をした存在が、中央に立っているだけだった。
それでも。
凛として佇むその姿と、
深く澄んだ、神秘的な青に、
視線を奪われずにはいられなかった。
最初に静寂を破ったのは天界神だった。
アモーリア(天界第弍界域主)
「長らくの失踪。見つかったこと自体は、喜ばしい。
その年月…人間界で過ごしていた、という認識で相違ないか」
デュオン
「相違ありません」
デュオンは淡々と、相手の目を見て返した。
その声に迷いも、恐れも感じられない。
アモーリア(天界第弍界域主)
「……ほう」
シルヴァーナ(冥界第伍界域主)
「背に翼がないようだが、神族である保証はあるのか?」
デュオン
「神族である証明はできません。否定も肯定もしません」
シルヴァーナ(冥界第伍界域主)
「象徴が欠けている以上、受け入れない者も多いだろう。それについてどう考える?」
デュオン
「神族にとって、翼が大事なものであることは理解していますが、僕個人としては大きな問題ではないと考えます」
シルヴァーナ(冥界第伍界域主)
「……大きな問題ではない…?」
デュオン
「翼の有無だけで価値を測るのは、残酷だと思います。見た目で判断すること自体を否定するつもりはありません。ですが―翼がなくとも、信頼関係は築ける。僕は、そう考えています」
シルヴァーナ(冥界第伍界域主)
「……翼がなければ、不信感は付きまとう」
デュオン
「……大事な人を、翼の有無で決めていないという前提で話します。その人が翼を失った時、同じことが言えるでしょうか。翼がないだけで、不信感を覚えますか?」
シルヴァーナ(冥界第伍界域主)
「…………。」
デュオン
「きっと、その人の生き方を見るはずだ。翼がないから神族ではない、とは言わない。――だから、僕は重要視しない」
シルヴィア(冥界第弍界域主)
「へぇ」
シルヴィアはデュオンとシルヴァーナの対話を聞いて面白がっている様子だ。
シルヴァーナ(冥界第伍界域主)
「そうか…君の考えは理解した。私の質疑は以上だ」
シルヴィア(冥界第弍界域主)
「問おう。第二皇子。お前は、この会合に何を求めている?」
デュオン
「人間界で生きることを望みます」
一瞬、ざわめきが走った。
デュオン
「天界や冥界を否定するつもりはありません。ただ、僕は人間界で育ち、そこで生きてきました。これからも、同じ場所で生きたいと考えています」
シルヴィア(冥界第弍界域主)
「お前は皇族であり、立場を有する。それでもそれを望むと?」
一瞬の沈黙。
デュオン
「皇位剥奪すればいい」
シルヴィア(冥界第弍界域主)
「……なるほど」
シルヴィアが面白そうに笑った。
ハウザー(天界第壱界域主)
「先ほどから聞いていれば……随分と、都合のいい話ばかりだな。笑わせてくれる」
発言した天界神に、自然と注目が集まった。
その視線は、明らかに――見下すものだった。
デュオン
「(この人か……)」
席の配置からして、おそらく天界第壱界域。
ハウザー(天界第壱界域主)
「人間界で生きたい?皇位を剥奪すればいい?ずいぶんと軽く言う。お前は人間という種族が、どんな存在か理解しているのか?」
デュオン
「……少なくとも、貴方よりは」
シルヴィア
「ふっ」
ハウザー(天界第壱界域主)
「………傲慢で、意地が悪く、争いを好む。短命ゆえに先のことも考えられず、力を持てばすぐに振りかざす。しかも、生き物を殺し、死体をバラバラにし、しかもさらに喰らうと言うではないか。そんな蛮族共の元で生きるだと?殺生に快感でも覚えているのではないか?」
周囲が、静まり返る。
数名が、わずかに眉をひそめた。
ハウザー(天界第壱界域主)
「穢らわしい。本当に穢らわしい。そんな危険因子を神聖なこの天冥界に置くなどありえない」
デュオン
「…………。」
天冥界に置きたくない。
その言葉自体は、望んでいた反応だ。
追放という形を取るには、むしろ好都合ですらある。
――でも。
一拍。
デュオンは深く息を吸い、ゆっくりと口を開いた。
デュオン
「……それは」
視線を上げる。
真っ直ぐに、ハウザーを見据えた。
デュオン
「僕に向けられた言葉ですか?」
ハウザー
「他に誰がいる」
デュオン
「……なるほど」
小さく息を吐く。
怒気はない。声も荒れていない。
だが、空気がはっきりと変わった。
デュオン
「僕個人への評価や侮辱は、好きにすればいい。それが、この場で許されるというのなら」
一歩、言葉を区切る。
デュオン
「ですが――」
静かに、しかし明確に告げた。
デュオン
「会ったこともない。名も、顔も、生き方も知らない人たちを、一括りにして貶める発言を、"裁きの席”で口にする理由は、どこにある」
ハウザー
「何が言いたい」
デュオン
「この会合は、僕の扱いを決める場のはずだ。人間という種族全体を貶める場ではない」
わずかに視線を巡らせ、
天界と冥界、双方の界域主を見渡す。
デュオン
「……それとも、"知らない存在を侮辱すること”を、神族の品位だと?」
デュオンは、ただハウザーを見つめた。
感情のない、澄んだ青で。
デュオン
「そうなら…僕は、貴方を軽蔑する」
空気が、凍りついた。
次の瞬間――
ハウザー(天界第壱界域主)
「……っ、貴様……!」
声が荒れる。
それまで作っていた尊大な余裕は、跡形もなかった。
ハウザー
「裁かれる立場の分際で!誰に向かって物を言っている!お前は“裁かれる側”だ!」
感情が、言葉を追い越している。
ハウザー
「人間に育てられた出来損ないが!神族の品位を語るな!貴様にその資格はない!」
その瞬間だった。
場のあちこちで、
わずかに――だが確かに、空気が変わった。
誰も、同調しない。
誰も、頷かない。
沈黙だけが、ハウザーの言葉を飲み込んでいく。
デュオン
「僕のこの命は……拾い上げてもらったもので…」
静かな声だった。
だが、その場にいる全員の耳に、はっきりと届いた。
デュオン
「何者かもわからず、何もできず……それでも、見返りを求めず、手を差し伸べてくれた人たちがいた」
視線は、ハウザーから逸れない。
デュオン
「僕は、その人たちの優しさによって、生かされた。だから今、ここに立っている」
一拍。
デュオン
「……人間は傲慢で、意地が悪く、争いを好む。そういう人がいることも、否定はしない」
声に、感情は滲まない。
だが、言葉には重みがあった。
デュオン
「でも…心優しく、懸命に生きている人も、確かにいた。誰かのために、何も持たないまま、手を差し出せる人たちが」
静かに、言い切る。
デュオン
「何も知らないまま、知ったような口を利くな」
ハウザーを、青が突き刺した。
場の空気が、完全に変わった。
ハウザー(天界第壱界域主)
「……(こいつ……!)」
言葉が、続かない。
しん、と。
時が止まったかのような静寂が、空間を支配する。
その沈黙を、あっさりと破ったのは…
エメット(冥界第壱界域主)
「ふっ…ははっ!いいねぇ…気に入った。デュオンっていったっけ?僕たちはお前を歓迎する」
肘をつき、どこか退屈そうにしていた冥界第壱界域主が、初めて、まともに前を見た。
全員がきょとん…とした。意味のない瞬きを繰り返す。
ラスヴァディ(冥界第壱界域皇降族)
「え…?」
ラスヴァディに視線が集まる。
ラスヴァディ(冥界第壱界域皇降族)
「も…申し訳ございません…」
エメット(冥界第壱界域主)
「……こんなにも面白い会合は久方ぶりだ」
エメットはラスヴァディ(自分の従者)を横目に発言を続けた。
デュオン
「…………。」
エメット
「そんなの(天界第壱)なんて放っていいよ。いつも何か言わないと気が済まないだけだから」
デュオン
「えっと…」
エメット(冥界第壱界域主)
「神族を代表して、非礼を詫びよう」
エメットはハウザーに視線を移した。
ハウザー(天界第壱界域主)
「エメット…こいつが神族である証明がないんだぞ」
エメット(冥界第壱界域主)
「グレイスとシオンが探し出した執念で十分証明になる」
と天界第壱を黙らせるエメット。
デュオン
「(なんか…流れが…)」
エメット(冥界第壱界域主)
「それに、その頭では見間違わないでしょ」
デュオンの頭を指差すエメット。
青い髪の希少さがプラスなのかマイナスなのか、影響した。
すると、同じく沈黙を貫いていた他界域も動き始めた。
リースローゼ(天界第参界域主)
「では天界第参もその者を歓迎する」
ハウザー(天界第壱界域主)
「は?気は確かか!?」
リースローゼ(天界第参界域主)
「何?私たちを否定するの?好きにしたらいいけど。冥界第壱が動いた以上、私たちは"理のある方"につく。それだけよ」
ふんわりとしたような、毒を刺すような不思議な笑顔で応える。
シルヴィア(冥界第弍界域主)
「冥界第弐界域も歓迎する。その心意気が気に入った。堂々たる態度を評価する。確かに、翼が欠けた程度で、“我々の価値"は下がらない。よく言った」
デュオン
「???」
シルヴィア(冥界第弍界域主)
「人間界で発見されたと言うから、どんな腑抜けが来るかと楽しみにしていたのだが、存外、図太いのが来たな。随分と小作りだが」
急に展開が動きすぎて飲み込めない。
デュオン
「いや、僕はここに残る気はないって…」
エメット(冥界第壱界域主)
「人間界で過ごせばいい。たまに遊びにきてよ。その時は話を聞かせて。あぁ…会うのが大変になるから皇位もそのままに」
デュオン
「え…?」
ハウザー(天界第壱界域主)
「普段参加してこないくせに…!」
エメット(冥界第壱界域主)
「普段参加しないのはつまらないから。時間の無駄にしか思えないからね」
ハウザー(天界第壱界域主)
「エメット…!貴様…!!」
三つの界域がまさかの歓迎。
と、言うことはだ。多数決で勝てる。とセティーナが動いてしまう。
ステラ(天界第伍界域主)
「ふふ。随分とやんちゃだこと」
ステラが微笑むとそれを見てセティーナが微笑む。
セティーナ(天界第伍界域主)
「天界第伍もその条件で歓迎する。この場で怯まず、言い返す度胸が気に入った」
デュオン
「っ…!」
グレイス(天界第肆界域主)
「え?」
それに続けて冥界第肆も手を挙げた。
ギラファ(冥界第肆界域主)
「我々、冥界第肆界域もそちらの条件で歓迎致します。受け答えに誠意を感じました」
デュオン
「なんで…??」
ハウザー(天界第壱界域主)
「皇位剥奪もなしに人間界に野放しだと!?例外は作るべきではない!人間界で生きた者を、天冥界に置くこと自体が誤りだ。ましてや皇位を残したまま、天冥界と人間界を行き来させるなど――そのような前例を作れば、制度は形骸化する。それを“処遇”と呼ぶつもりか!?」
アモーリア(天界第弍界域主)
「例外を作るべきではない……秩序のため、その点は我々も同意見だ」
一拍、置いて。
アモーリア(天界第弍界域主)
「だが…なぜ、そこまで“焦っている”のか。その理由が、私には理解しかねるが」
ハウザー(天界第壱界域主)
「…っ…!」
デュオン当人を置いてどんどん進んでしまう事態に。
デュオンは、思わずラウルを見た。
どうしたらいいのか。
何を言えばいいのか。
よくわからなくなってしまった。
だが――
ラウルは、ただ微笑んでいた。
何も言わず、急かさず、
"それでいい"と言うように。
デュオンは、小さく息を吐いた。
ラウルの顔を見て落ち着きを取り戻す。
自分を納得させるように、思考する。
デュオン
「(……もう、いっか。最低条件は了承してくれたし…。こっちも譲歩をするべきだ…)」
デュオンはグレイスとシオンを目で探した。
目を合わせて、にこっと困ったように微笑んだ。
グレイス
「………っ!」
結論は出た。
五界域が、皇位をそのままに人間界で生きることを認めた。
二界域は剥奪と追放。
残る二界域は、天界へ連れ戻す。
――多数決。
天使族 フレイクラウン
「会合の結果、皇位をそのままに人間界で生存。これを執行する」
ハウザー(天界第壱界域主)
「……………。(認めない…例外など…!)」
セティーナ(天界第伍界域主)
「会合での決定は絶対だ。これ以上ほざくなよハウザー」
ハウザー(天界第壱界域主)
「……覚えておけ…。例外は必ず歪みを生む」
天使族 フレイクラウン
「当人は退場せよ」
デュオン
「(………後半の勢いがすごかったな…)」
天使族 フレイクラウン
「当人は、退場、せよ」
デュオン
「!(僕たちか…!)」
デュオンとラウルは会場から離脱した。
鐘が鳴り響き、会合が終了した。
『アルスダリアの祈り』第20話を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。
界域主様たち、いろんなタイプがいましてね…。皇降族も一人一人名前があります。
エメット様の皇降族であるラスヴァディ様は、普段全く会合に参加する気がない主人がまさかの発言をしたのでびっくりして「え?」と声に出してしまいました…笑
皇降族は基本的に発言してはいけないのでめちゃくちゃ焦っていたことでしょう。
発言は祈り手(左にいる者)がします。
30名(5界界域ずつ×2名+皇降族各界域1名)いますが発言するのは10名です。
次回、天冥界編最終回です。長らくありがとうございます。やっと帰りますよ〜!




