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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編
18/21

第17話 天冥の家族

天界第肆界域。神殿にて。



フェイクシード

「おいグレイスの子供。…お前いつも掃除してるな…」


ペデルギウス

「おや、これはフェイクシード様。一応、僕ペデルギウスです…」


フェイクシード

「知ってる。グレイスたちは?」


ペデルギウス

「父上と母上なら至聖所にいますよ」


フェイクシード

「そうか」


ペデルギウス

「…………。(あの壁すり抜けて行くの相変わらず怖いですね…)」


 

フェイクシードは神殿の最奥に向かった。壁を無視してすり抜けて行く。



フェイクシード

「おいグレイス、シオンはどこだ。おい起きろ」


グレイス

「ん……?フェイクシード…どうした…?すまんなこんな格好で」

 


長椅子の上で横になって休んでいたようで、かなり軽装になっているグレイス。頭をかきながら返事をした。


 

フェイクシード

「格好はどうでもいい。シオンはどうした」


グレイス

「さっきまでいたんだが…墓参りに行ったか…?」


フェイクシード

「すぐに呼び戻せ。ふみを預かってきた」


グレイス

(ふみ…?誰から…?」


フェイクシード

「お前たちの子供から」


グレイス

「え!?なんだと!?本当か!?まさか返事が返ってくるとは…!待て!待ってろ!すぐに呼んでくる!」


フェイクシード

「服」


グレイス

「おぉ…そうだった。悪いな」


フェイクシード

「(落ち着けよ…)」


 

グレイスは一人で大盛り上がりで大パニック。服装を整えてから急いでシオンを探しに部屋を飛び出して行った。

フェイクシードはそれを見て呆れている。


 

 ✳︎



レオレイア

「開けないのか?」


レティシア

「早く見たいです」


ペデルギウス

「あの…父上?母上?大丈夫ですか?」

 


早く中身が見たくて仕方がない子供たちとは反対に親であるグレイスとシオンは緊張しているのか固まってしまっている。



フェイクシード

「シオンだけ呼びに行ったと思えば子供たちも呼んだのか。遅いなとは思ったが」


ペデルギウス

「大声で走り回っているので何事かと思いました…」


レオレイア

「もう少し落ち着いてほしいものだ」


レティシア

「兄様、早く見たいです…」


 

レティシアがレオレイアに催促する。


 

レオレイア

「そうだな。開けてしまおう」

 


レオレイアが丁寧に封を開けた。



レオレイア

「……随分と多いな」


ペデルギウス

「五枚も包んでくださったんですね!」


レティシア

「不思議な質感の紙ですね…さらさらしてます。人間の技術なのでしょうか…。この封も素敵です」


 

神族の使う紙はざらざらとした触り心地で丈夫な物だが、送られてきた紙は随分とサラサラとしていた。

封蝋も神族には馴染みがないらしく興味深々。

子供達が勝手に読み始めた。



ペデルギウス

「え!?来る…んですね…」


レオレイア

「ダメ元と言ってなかったか?喜ばしいことだが」


レティシア

「兄様にお会い出来るんですか!嬉しいです!どんなお方なんでしょう」


グレイス

「なんだと!?」


シオン

「なんて言いました!?」


 

急に親二人が覚醒したようで話に入ってきた。



グレイス

「あの子が来るって!?本当にそう書いてあるのか!?」


シオン

「みみ…み、み…見間違いでは!?」


レオレイア

「落ち着け…」


グレイス

「ほ…本当に…?"会合に出席する"……」


レオレイア

「共に暮らしはせんが、会合には出てくれると言った感じだな。随分と肝が据わっているように思える」


ペデルギウス

「早くお会いしたいです!」


グレイス

「おぉ…我が子ながら美しい文字だな…」


レオレイア

「内容見ろ…」

 


親が狼狽えているというのに子供たちは随分と楽しそうにしている。温度差が激しい。

そんな中、手紙を読んでいたレティシアがあれ…?と呟いた。



レティシア

「父様、母様、兄様のお名前が…」


シオン

「うん?どうしたのレティシア」


レティシア

「名付け名と同じです。一体どうして…」


シオン

「!本当だ…デュオン…。とても嬉しいですがどうしてこの名を…」


 

自分たちが名付けた名と、現在使っている名が全く同じ。どういうことなのか。偶然この名を誰かにつけてもらったという可能性はあまりにも低すぎる。かなり気になるところ。


 

グレイス

「と、とりあえず会合の準備をしなければな…。服が間に合うか…?ギラファ殿たちに手配を…あ、セティーナにも連絡をしなければ…」


ペデルギウス

「父上、デュオンにはライザ様に付いて頂くのでしょうか?」


グレイス

「ん?あぁそうだな」


レティシア

「となると、父様と母様にはヴィヴィ様が…?」


グレイス

「いや、俺たちはお付きなしで行く」


レオレイア

「なるほど」


グレイス

「こちらから言えば断れないだろうしな…ヴィヴィは人前に出るのは極力避けたい子だ。俺たちには誰も付かなくて良い」


フェイクシード

「色々決まったな。すぐに迎えにいくか?」


グレイス

「そうだな…すまないな。行ったり来たり」


フェイクシード

「別に」


 

フェイクシードは蜻蛉返りで人間界に戻った。



 ✳︎



フェイクシード

「と、言うことだ。これから向かうぞ」


 

フェイクシードがすぐ戻ってきたので、ルーク一同はぽかんとしている。



ディン

「君たちなんでも急すぎるよねぇ??心の準備ってことさせてくれないよね!?この前からぁ!!」

 

ルーク

「ディン落ち着いて」



ディンが半ギレでフェイクシードに返事をした。

 


フェイクシード

「ほら行くぞ」


ディン

「話聞けよ」


デュオン

「ちょっと待ってフェイクシード」

 


フェイクシードがデュオンの手を引いて外へ出ようとする。


 

デュオン

「ごめんね僕、すり抜ける能力ないんだ。ドアから出ていい?」


フェイクシード

「……そうだった…」

 


デュオンに続いてみんな外に出て行く。



フェイクシード

「………なぜお前たちまで付いてくる?」


ディン

「は?一緒に行くに決まってんじゃん」


フェイクシード

「……却下」


ディン

「は?」


ルーク

「ディンってば」


ロア

「一緒に行っちゃダメなの?」


アスベル

「定員オーバー的な?」


フェイクシード

「……神族はお前たちを受け入れない。……一緒に行けるとしたらそこの冥界神くらいだ。今回は他界域の者たちが関わっている。諦めろ」


ラウル

「…………。」

 


神族は人間界に対する差別が強いらしい。

特に人間に対しての偏見がすごいようだ。



ディン

「先に言ってよ」


アスベル

「(おれたち人間じゃないけど…)」


ゼナ

「じゃあデュオンとラウルで行く…?」


デュオン

「……………。」


ラウル

「……俺は……。」


デュオン

「ラウル。僕のことは気にしなくていいんだよ。ラウルの選択に、僕を理由にしなくていいからね。難しいかもしれないけど…」



デュオンがラウルの手を取って"僕は大丈夫"と伝えた。

きっと、ラウルのことだから立場だとか色々と気にかけてこちらを優先してしまうと思うから。



ラウル

「デュオン……」


ソフィア

「…ラウル?大丈夫?」


ラウル

「…………。」



焦点が合わない。考える時間があまりにも短すぎて…決断ができない。早く…早く…決めなければ…。


 

ソフィア

「………ちょっとだけ待っててくれる?」


デュオン

「うん」



デュオンがゆっくりでいいからねとソフィアに目配せした。ソフィアもありがとうと目配せした。

ソフィアがラウルを連れてリビングを後にする。



ソフィア

「ねぇ本当に大丈夫?」


ラウル

「……………。」


ソフィア

「ラウル」



ソフィアがラウルの頬に触れた。



ソフィア

「ラウルはデュオンが心配なの?自分が心配なの?」


ラウル

「…どっちかというと俺…。デュオンは何があっても揺るがない…覚悟を持っているから…でも…俺は…」


ソフィア

「"会いたい人がいる"……んだよね?」


ラウル

「……でも、俺は"死者"だから…戻っても……フェイクシードも口を噤んでくれている。だから、行かなければ…このまま一生会わないままだ。それに、今回はデュオンが優先されるべきで俺は…」



自分でも何を言っているのかわからない。

何か、言い訳を探している。



ソフィア

「本当はどうしたいの?素直な気持ち、聞きたいな」


ラウルが

「……会いたい…。すごく、会いたい…」



ラウルが震える声で弱々しく言った。



ソフィア

「うん。じゃあ、そうしよう」


ラウル

「……………。」


ソフィア

「文句言ってくる奴いたら、教えて?私がぶっとばしてあげる」


ラウル

「それは…心強いな」



ソフィアの逞しい発言に、ラウルは少しだけ笑った。

 


ソフィア

「でしょ?……いいんだよラウル。今は、"ただのラウル"なんだから。自分の心を殺すことないよ。素直な気持ちで素直に伝えてあげればいい」


ラウル

「………うん」


ソフィア

「……喜んでくれるよ。だから大丈夫。顔見せに行ってあげて。会えるんだから。きっと、行ってよかったって思えるよ」


ラウル

「………うん…」


ソフィア

「大丈夫。辛くない辛くない」


ラウル

「…………。うん」



ソフィアがラウルを優しく抱きしめた。

ラウルも無抵抗にそれを受けた。

 


ソフィア

「よし。じゃあ行っといで」


ラウル

「ありがとうソフィア」


ソフィア

「うん。どういたしまして」


 

 ✳︎



しばらくするとリビングにソフィアとラウルが戻ってきた。


 

ラウル

「俺も、一緒に行く」


デュオン

「……わかった」


ルーク

「気をつけて行ってきてね!」


デュオン

「うん」


ディン

「ルーくん痛い…」



ルークがディンの腕を後ろで掴んでいるようだ。

 


ルーク

「着いていこうとするじゃん」


ディン

「だってぇ…だってぇ…」


フェイクシード

「まったく…変な奴らだな」


デュオン

「ちょっと心配症なんだ」


フェイクシード

「……それにしても、あの冥界神、本当に大丈夫なのか?」


 

ラウルはずっと静か。でも少しだけ、前より顔色が良い気がした。

 

 

デュオン

「来るって言ってくれたからきっと大丈夫だよ」


フェイクシード

「そうか…では、ゲートを開けるぞ」


デュオン

ゲート?」


 

リィン…

鈴のような音が響き渡り、フェイクシードの頭上にあった光の輪から不思議な空間が広がった。


 

フェイクシード

「行くぞ」


デュオン

「うん。ラウル、行こう」


ラウル

「あぁ」


ソフィア

「(頑張れラウル)」



みんなで二人を見送った。

無事に帰ってきますように。



 ✳︎



デュオン

「(なんだか身体が重い気がする…)」


 

ゲートの中を潜って(くぐって)しばらくすると不思議な感覚になった。



フェイクシード

「大丈夫か?」


デュオン

「うん…なんだか身体が重い気がして」


フェイクシード

「天冥界は人間界より重力が強いからな。気のせいじゃない。俺にはよくわからないけど」


デュオン

「そうなんだ…」


 

天冥界は人間界に比べると重力が強い。

そして時間の経過がかなり早いようだ。



フェイクシード

「そろそろ着く。翼出しとけよ」


デュオン

「??え?翼…?」


ラウル

「…………。」


フェイクシード

「?だから翼。背中の」


デュオン

「背中…?」


ラウル

「デュオンは翼がないんだ。フェイクシード」


 

ラウルが静かに言うと、空気が少し重たくなった気がした。


 

フェイクシード

「翼無し…」


ラウル

「そうだ」


デュオン

「(僕はってことはラウルはあるんだ。知らなかった)」


フェイクシード

「"欠け"か…これはまた大変だな。お前は?」


デュオン

「(そんなに…?神族にとっては翼がないってかなりよくないのかな…)」


ラウル

「俺はある」


 

キィン


ラウルの身体が一瞬光ると背中から黒色の翼が発現した。



デュオン

「わぁ!初めて見た。ふわふわ…」



デュオンが興味深々といった様子でラウルの翼に触れた。


 

ラウル

「翼を出すと昔から疲れるんだ。人間界ではあるほうが目立つし、ずっと出さないでいたんだ」


フェイクシード

「翼を出さないほうが疲れるのではないのか?力が抑制されるんだろう?」


ラウル

「俺はなぜか出しているほうが疲れる…。身体が熱くなる感覚がして」


フェイクシード

「ふぅん」


デュオン

「出し入れできるんだ。でもなんで僕にないの知ってたの?」


ラウル

「背中に印がなかったから…そもそも神族ではないと思っていたし…」


デュオン

「……なるほど(印なんかあるんだ…)」


 

それなりに長い付き合いだけど知らないこともあるもんだなと呑気に考えていた。



フェイクシード

「(象徴がない…か…。会合が更に荒れるだろうな…)」


 

ゲートを抜けたようで、視界が開けてくる。



デュオン

「………!うわぁ…建物の中…?」



石でできた建物のようだ。

随分と綺麗にされていて、音もよく響いた。


 

フェイクシード

「神殿の中だ」


ラウル

「(なんとなく見覚えがあるような…)」


デュオン

「(重い…足が重いってこういう感じなんだ…)」


フェイクシード

「歩けるか?」


デュオン

「うん。大丈夫。平気だよ」



フェイクシードが慣れたように神殿内をふよふよ移動し、道案内していく。デュオンとラウルは静かに着いて行った。

コツコツと足音が神殿に響く。

しばらく歩くと、おそらく最奥の部屋の前まで来たようだ。



フェイクシード

「この部屋にいる」


デュオン

「フェイクシードは入らないの?」


フェイクシード

「あぁ。興味ないし。じゃあな」


デュオン

「そっか。案内してくれてありがとう」


 

そういうとフェイクシードは姿を消してしまった。

ラウルが部屋の扉を慎重に開けた。



 ✳︎



部屋を開けると、グレイスとシオンが待っていた。



グレイス

「おぉ!よく来てくれた!」


シオン

「来てくれてありがとう!」


 

暖かい声色で出迎える。初めて出会って少ししか経っていないけれど、とても久しぶりにも思えた。

グレイスとシオンはデュオンを抱きしめる。



デュオン

「また会えたね」


シオン

「はい…!」


グレイス

「うん…?君は……」



デュオンの後ろから付いてきた橙がグレイスの視界に入った。


 

シオン

「……!グレイス…もしかして…」


ラウル

「ご無沙汰しております…グレイス様。シオン様」



ラウルが深々と頭を下げた。

 


グレイス

「ラウル…か…?大きくなったな…!」


シオン

「でも…!ラウルは確か…」


 

デュオンの横で膝をつき、頭を下げられるところまで下げて挨拶をしたラウル。

どこか見覚えのあるその顔にグレイスとシオンも気づいたようだ。


 

グレイス

「ラ…ライザ殿!ライザ殿!部屋へ!!」


 

グレイスが大きな声で部屋の奥に声をかけた。きっと、ライザという人がラウルの家族なのだろう。ラウルは体勢を一切変えずに動かない。デュオンは一歩下がってそれを静かに見守った。


 

 ✳︎



ライザ

「ラウル…なのか…?そんなことが…」


 

ライザと呼ばれたその人は、部屋から出てくると急いでラウルに駆け寄った。

ラウルよりも暗い橙色をしていた。



ラウル

「ご無沙汰しております…父上…」



ラウルの声は震えていた。

消えてしまいそうな小さな声で。

必死に声を出したのだろう。


 

ライザ

「ラウル…!ラウル…!!お前……っ!」


 

ライザはラウルを抱きしめて涙をこぼした。後ろからは見えなかったけれど、ラウルもきっと涙をこぼしているんだろう。



グレイス

「ラウル、こちらは気にしなくて良いから。ライザ殿にしっかりと顔を見せてあげてくれ」


ラウル

「……はい…」


ライザ

「お…大きくなって…お前…生きているなんて…」



いつも大人びているラウルが、子供のように見えた。

されるがまま顔に触れられたり頭に触れられたりしていたけれど、嬉しそうに見えた。

 


グレイス

「わかる…わかるぞライザ殿…!!」


ライザ

「グレイス様…!」


 

ラウルの父ライザとデュオンの父グレイスが抱きあって号泣し始めた。似たような境遇で、さらに突然前触れもなく失ったと思っていた子が目の前に現れたのだ。同じ気持ちなのだろう。


ライザもしばらくして我に帰ったようで、デュオンに気づいて深々と頭を下げてきた。


 

ライザ

「デュオン様…!こんなお見苦しい姿をお見せしてしまい申し訳ございません。ご挨拶もせずに大変失礼を…」


デュオン

「ううん。会えてよかったね」


ライザ

「…あぁ…なんてお美しい…」


デュオン

「ありがとう…?」


 

少し話しただけで涙を流したり、褒めてくるライザ。

ラウルよりも少しだけ弾けているように見えた。

子のラウルのほうがお淑やかな印象だ。



グレイス

「本当に生きていてよかった。二人とも」


シオン

「本当に…デュオンもラウルもよくぞご無事で…」


 

と、シオンが二人を抱きしめた。

その外側から父二人がさらに抱きしめるという周りから見たら不思議な光景である。

きっと、まだ実感が湧かないのだろう。体温や鼓動を感じて、安心したいようだ。



グレイス

「それにしても、まさかデュオンとラウルが一緒にいたとは…不思議な縁があるものだな」


デュオン

「今回のことがあるまで知らなかったんだよ」


ライザ

「そうでございましたか…」


 

少し落ち着いた後、お互いに聞きたかったことを話した。ラウルもライザと二人で少し話が出来たようだ。

グレイスたちから少し離れて、親子水入らずで話した。



ライザ

「元気にしてたか?あぁ本当に…夢みたいだ…」


ラウル

「はい。父上もお元気そうで良かったです」


ライザ

「……人間界は…どうだ?」


ラウル

「良いところです。昔、書物で読んだこととは全く異なりました…。とても、楽しいです」


ライザ

「そうかそうか…。お前が、一人で辛い思いをしていなかったのならそれで良い」


ラウル

「……っ…」


ライザ

「本当に、よく来てくれた。色々と、葛藤があっただろう?」


ラウル

「はい…。ですが、来て良かったです」



意を汲むように、泣いて喜んでくれた父。ソフィアの顔が浮かんできて"だから言ったでしょ?"と言われた気がした。



✴︎



一方、こちらはグレイスとシオンとデュオン。



シオン

「え?私たちが親だってわかっていたんですか?」


デュオン

「うんなんとなく。ルークたちもみんな気づいてたよ」


グレイス

「そうだったのか…無理に隠さなくてよかったのか」


デュオン

「何か理由があるのかなって思ってこっちから言わなかったんだ」


グレイス

「やっぱり気遣い屋さんじゃないかっ…」


 

グレイスが話をするたびにウルウルするのでデュオンは少し困ってしまった。あの時全然話さなかった反動が来たんだろうか。



シオン

「そういえば、デュオンという名はどなたが…?」


デュオン

「最初からディンとルークがそう呼んでたよ。なんか僕に取り憑いた何かが言ってきたとかなんとかって…」


シオン

「取り憑いた何か…??大丈夫なんですかそれは…」


デュオン

「僕の名前はデュオンだって言ってそれっきりなんだって。その時の記憶がないからなんとも言えないんだけど」


シオン

「そうでしたか…」


デュオン

「こっちも聞きたいんだけど、僕が子供だってわかったのって髪の色?」


シオン

「そうですよ。滅多に見ない髪色ですから。生まれた時から綺麗な青色で…」


デュオン

「人間界でも珍しいって言われる」


シオン

「そうなのですね。共通なのでしょうか…。神族では青と赤と黄の髪は珍しいのですよ」


デュオン

「同じだね」


 

少しずつ、距離が縮まって会話が弾むようになったころ、奥の方から物音がした。


 

ペデルギウス

「父上〜母上〜僕たちのこと忘れていませんか?」


グレイス

「!しまった忘れてた。もう出てきて良いぞ」

 


そういうと、奥の部屋から三人出てきた。おそらく、手紙に書かれていた兄弟たちなのだろう。



ペデルギウス

「わぁ!初めましてです…!」


レオレイア

「よく来たな」


レティシア

「綺麗です…!」

 


目をキラキラさせて歓迎してくれた。ラウルはレオレイアには会ったことがあったらしく、お久しぶりです。と挨拶をしていた。

ペデルギウスとレティシアにも丁寧に挨拶を交わす。

ラウルに注目が集まっている間にデュオンが一つすごく気になっていることをシオンたちに聞いた。



デュオン

「レティシアって本当に僕の弟…?」


グレイス

「そうだぞ」


デュオン

「どっちかっていうと僕のほうが弟なのでは…」


シオン

「人間界とここ(天冥界)は時間の流れが違うらしいから…仕方ないのかもしれないですね…」

 


そう。デュオンの弟であるレティシアはデュオンよりも背が高く、大人っぽいように見えるのだ。デュオンより後に誕生しているので弟なのは確かなようだが不思議な感覚だ。ちなみにデュオンとペデルギウスとは、ほぼ同時期に生まれているらしい。



デュオン

「ふふ」


シオン

「?どうしました?」


デュオン

「ううん。僕はきっと、こっちで育っても幸せだったんだろうなって思っただけ」


シオン

「……それは嬉しい言葉ですね」

 


デュオンがこの空間に微笑んだ。

人間界の家族も、天冥界の家族も暖かい。

ずっと離れ離れだったけれど、確かに想われていた事実。

来てよかったと心から思った。


 

 ✳︎✳︎✳︎

 

【キャラクター紹介】

 

ライザ

ラウルの親。ラウルよりも暗い橙色の髪と瞳をしている。ラウルに皇降族の作法を教えた人。

ラウルの他にもうひとり子供がいる。

死んだと思っていた子と急に再開して情緒が大変。

グレイスとは皇族皇降族の間柄だが、親友のような関係。


 ✳︎


【小話】


神族は結婚する時に、"祈り手"と"愛の手"を決めます。

"祈り手"は常に左側に立ちます。"愛の手"は常に右側に立ちます。

"祈り手"を父。"愛の手"を母と呼びます。


 ✴︎


【ワード集】

 

神殿

界域主、皇族、皇降族が住んでいる場所です。

至聖所は神殿の最奥です。


大聖堂

神殿とは別の施設です。

神殿よりも丈夫らしく、何かあった時にシェルターの役割もするらしいです。

集会や皇族同士の対談の場として使われることも多いです。

『アルスダリアの祈り』第17話を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。


天冥界でのお話は、造語や設定がかなり多めで、読んでいると大変かもしれません。

こだわりが強くてですね…それでも、お付き合いくださっている皆様、本当にありがとうございます…!

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