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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編
15/21

第14話 デュオンとラウル

ルシファー

「落ち着いた?ラウル」


ラウル

「落ち着いたというか、痛い…」


ルーク

「もうしない?」


ラウル

「もうしないです」

 


アスベルが抑えていたが体力切れを起こして選手交代。

ルークとルシファーが力ずくでラウルの腕を左右に引っ張っている。なかなかにシュールな絵面だ。

もう自分に刃を向けないと言ったので離してあげることに。



ロア

「ちゃんと話してよ。みんな多分、いろんなことあって状況が頭に入ってないから」


ラウル

「……その…デュオン…様…の親である、シオン様とグレイス様…だと思う…」


デュオン

「さま…??」


 

デュオンが顔を顰めた。


 

ルーク

「えっと…その、デュオンと会った紫色と灰色の髪の人?がシオンさまとグレイスさまってこと?」


ラウル

「そうだ…」


ゼナ

「デュオンの親とラウルは知り合いだったの?」


ラウル

「お知り合いというか…なんというか…。まず、そのデュオン…さまは、皇族こうぞくであられて、俺はその下の皇降族こうかぞくという身分で…子供の頃にお会いしたことがある…」


ルシファー

「こうぞく…?こうかぞく…?」


 

ラウルがデュオンに向かって深々と頭を下げて話を続けていく。


 

デュオン

「なんでもいいけど、その様ってやめてほしい…。あと深頭下げないでほしい…そんな深々と…」


アスベル

「すごい今まで見たことないくらい深々と」


ラウル

「そういうわけには…!それに、今までの軽薄な態度や話し方といい、なんと申し上げれば良いのか…」


デュオン

「……僕とラウルは皇族こうぞく?と皇降族こうかぞく?として出会ったわけではないし、今まで通りにしてくれると嬉しいんだけど…」


 

どうしてもラウルは頭を上げることが出来ず、デュオンの話も上手く聞き入れられない様子だ。



ラウル

「そういうわけには…」


デュオン

「ラウルもう死んじゃってると思われてるはずなら余計に気にしなくていいんじゃ…?」


ディン

「確かに。それはそう」


ルシファー

皇族こうぞくってなに?」


アスベル

「王様?的なやつじゃないかな。たぶん」


 

ルシファーの疑問にアスベルが優しく答える。



ルシファー

皇降族こうかぞくは?」


アスベル

「そっちはわかんないな。貴族的な?」


ラウル

「説明すると、皇族こうぞくはこちらの王族のイメージで合っている。皇降族こうかぞくはその下の身分で、皇族こうぞくにお仕えする身分で…」


ディン

「…で、デュオンは皇族こうぞくで、ラウルは皇降族こうかぞく。で、しかも仕えるはずだった皇族こうぞくの子がデュオンだったと」


ラウル

「そうだ」


ディン

「へぇ…すごい確率だねぇ…」


 

ラウルは皇降族こうかぞくの家系で幼少期に親に連れられてグレイスとシオンに会ったことがあるらしい。

なるほどね…とみんな一度頭で理解したはいいが…



ゼナ

「え!?お…おう…じゃない、こ…皇族こうぞく!?デュオン皇族こうぞく!?」


ロア

「待って!?おうじさまってこと!?!?」


ルシファー

「すごいすごい!!」


ソフィア

「ラウル、昔嘘ついたでしょ!随分と仕草に品があるから、"良い家柄の出なの?"って聞いたのに普通って言ったよね!」


ラウル

皇降族こうかぞくの家系なのは普通だと思ってたんだ」


ソフィア

「そんなわけないでしょ!」


ヘスティア

「(皇族こうぞくに比べて普通ってことか…)」

 


一斉にパニックになり、家の中が過去一番騒がしくなった。


 

デュオン

「ちょっとみんな落ち着いて…」


 

デュオンが必死に呼びかけるが、パニックに掻き消される。



ディン

「デュオンが落ち着いてって言ってるでしょうが!!」


 

ディンがそれに気づき、大きな声で叫んだ。



ルーク

「ディン!ちょ…そんな耳元で大きい声出しちゃダメだよ。デュオン耳大丈夫?」


ディン

「うわぁ!?ごめんねぇデュオン」


デュオン

「大丈夫…ありがとディン…」


 

なんだかんだ今ので全員我に返り、落ち着いて話が出来るようになった。


 

 ✳︎



ルーク

「デュオンのお母さんお父さんの反応からして、多分ずっと探してくれてた感じなのかな?」


ロア

「ぽいよね〜。でも良い親御さんじゃん?無理に連れ帰ったりしなくてさ。連れて帰りたかったろうに」


デュオン

「名乗らなかったのも、親だって言わなかったのも、僕に配慮してくれたのかも」

 


ルークとロアに続いてデュオンが話した。


 

デュオン

「会いに来てくれたのは素直に嬉しかったよ」


 

デュオンは優しい顔で微笑んだ。両親のことは何も知らないけれど、世界を跨いでまで会いに来てくれた。長い間、想われていた事実が素直に嬉しかった。



ヘスティア

「ですが、どうやって特定したのでしょうね。今まで、おふたり以外の神族なんて見たことはありませんし。ずっと監視されているような感覚もなかったでしょう?」


アスベル

「確かに…それにデュオンって小さい時からこっちにいるんだよね?大きくなって分からなくなっていてもおかしくはないとは思うけど」


ラウル

「髪だと思う」


ゼナ

「髪?」


ラウル

「デュオンほどの濃い青い髪を俺は見たことがない。神族の中でも青い髪は珍しいからな」


ルーク

「確かに髪見てた!綺麗な髪だねって」


 

青髪、金髪、赤髪は希少色なようで、滅多に見られない。どの世界でも共通なようだ。



ルシファー

「でもいいな。わたしもデュオンのお母さんたち見てみたかったな!」


ヘスティア

「?見かけて来たのではないのですか?」


ソフィア

「ラウルがおかしくなっちゃったから私たちちゃんと見れなかったの」


ヘスティア

「あぁ…なるほど」


ラウル

「申し訳ない…」

 


ルシファーとソフィアが残念だねと笑いあっている。その横でものすごく申し訳なさそうにするラウル。



デュオン

「それで、改めてお願いしたいんだけど…」


 

デュオンがラウルの方へ近づいた。


 

デュオン

「できたら今まで通りに接してもらえると嬉しいな。この通り、人間界育ちだし。そういう出会い方もしていないし…。難しいかな?」


ラウル

「……わかった…」


デュオン

「うん。よかった。ありがとうラウル」

 


デュオンがふっと微笑むと、空気がまた柔らかくなった。



ロア

「デュオンちゃんって無駄にかっこいい時あるよね」


ディン

「わかる。気抜くと余裕で好きになっちゃうよねぇ」


ロア

「そこまでは言ってない」

 


とりあえず、今後も今まで通りの関係で話し方もそのまま。

大きな出来事があったけれど、何も変わらない関係に安心した。

 


 ✳︎

 


???

「シオン、大丈夫か?」


シオン

「えぇ…えぇ…大丈夫です…」


 

薄紫色の髪のシオンは木の影で座り込んでしまっていた。

灰色の髪のグレイスは優しく抱きしめている。



シオン

「生きていた…生きていました…。これほど嬉しく、幸福なことはありません…この手で抱きしめて…声を聞くことができるなんて…」


グレイス

「そうだな…とても、喜ばしいことだ」


シオン

「……すみませんグレイス…。少し話すだけと決めていたのに…あんな…」


グレイス

「良いんだよシオン。良いんだ」

 


眼から溢れてくる涙とずっと押し殺していた感情を吐き出していく。


リィン…綺麗で澄んだ鈴の音があたりに響いた。



???

「満足したか?シオン。グレイス」


グレイス

「……あぁ。ありがとうフェイクシード」

 


鈴の音が鳴り、黒い光のような無機質で不思議な何かが二人の前に現れる。頭上には光輪があり、月桂冠のような葉飾りをつけている。まるで、天使を想像させる。



グレイス

「ずっと探してくれてありがとうな。こうして顔を見ることが出来た」


フェイクシード

「死んでいる可能性のほうが高いというのに。親の執念というのは度し難いことだ」


グレイス

「……一度でもこの手で抱いた我が子を、俺たちは絶望で割り切ることが出来なかったんだよ」


フェイクシード

「それにしても良いのか?連れて帰らなくて。会合にはかけられるぞ」


グレイス

「ひとり孤独に生きていれば連れて帰る気だったが、どうやら随分と大事にしてくれているようだったからな。あの子の意思を尊重したい。会合の件はまた考えよう」

 


フェイクシードと呼ばれた天使のようなそれは、二人の周りをふよふよと移動している。



シオン

「私たちの代わりに探し続けてくださり、感謝します。フェイクシード」


フェイクシード

「……別に。暇な時にやってただけだし。お前たちは自由に人間界こちらがわには来られないしな」


グレイス

「長い間よく付き合ってくれたものだ」


フェイクシード

「俺たちはお前たちと違って、時間に縛られていないからな。数年など大した時間ではない」



シオンの呼吸が整うまで周りをふよふよしていたり、グレイスにちょっかい出したりして時間を潰していた。



フェイクシード

「そういえば」


グレイス

「うん?」


フェイクシード

「もう一人には会ったのか?」


シオン

「もう一人?」


フェイクシード

「……いや、会っていないなら良い。話題に出ないということは会わなかったのだろう」


グレイス

「俺たちの子は四人だが…行方不明になったのはあの子だけだぞ?」


フェイクシード

「こちらの話だ。今のは気にするな」


グレイス

「?そうか」

 


グレイスとシオンはフェイクシードの言葉にハテナを浮かべたが、気にするなとのことでそれ以上は話さなかった。



シオン

「だいぶ、落ち着きました。大丈夫です」


グレイス

「そうか。頑張ったな」


シオン

「……"またね"と言ってくれました。鵜呑みにはしていませんが、それがとても嬉しくて…。また、会えるでしょうか…」


グレイス

「……あぁ。きっとな」

 


グレイスはシオンの手を包んだ。きっと。きっとまた会える。今日のことを忘れずにまた想い続ければきっと。



フェイクシード

ゲートを開けるぞ。人間に見られるなよ」



フェイクシードは不思議な空間を出現させた。



グレイス

「あぁ。さ、天界に帰ろうシオン。ほら気をつけて」


シオン

「ありがとうグレイス」


 

三人は不思議な空間に入り、姿を消した。

リィンと、鈴の音が澄み渡った。


 

 ✳︎✳︎✳︎


【キャラクター紹介】

 

デュオン

神族。天界生まれ。人間界育ち。

生まれて間もない頃に天界から人間界に落ちた。

いろいろあってディンとルークに拾われ、現在にいたる。天界ではまさかの皇族という身分だった。

ずっとラウルと特徴が似ていたため、神族説が上がっていたが、ラウルが違うのでは?と言ったため確定していなかった。


ラウル

神族。冥界生まれ。冥界育ち。現在は人間界で生活中。

黄泉送りで流されて死んだはずが何故か人間界に流れ着いた。

もともとは皇族に仕える皇降族の家系出身。

親に代わり、お仕えする前に黄泉送りが決まり、培ってきた作法や礼儀を発揮することがなかった。

上品で丁寧な仕草や、真面目な性格なのは皇降族だったことが影響している様子。

まさかの人間界に本当だったら仕えるはずの皇族の人と出会っており大パニック。どんな夢物語なんだ…。


シオン

神族。天界生まれ。

薄紫色の髪に紫色の瞳をしており、癖のない綺麗な髪で、背中くらいまでの長さがある。

デュオンの親にあたる人物。どちらかというとデュオンはシオン似のようで、雰囲気がよく似ているようだ。


グレイス

神族。天界生まれ。

灰色の髪に黒い瞳をしており、癖のない綺麗な髪で、背中くらいまでの長さがある。

デュオンの親にあたる人物。今回は後ろに控えていたが、すごく抱きしめたかったし、会話もしたかったそう。


フェイクシード

冥府族。

天界にいるのが冥府族で、黒い光のような身体をしている。動く時など、鈴の音がする。

冥界にいるのが天使族で、白い光のような身体をしている。動く時など、鈴の音がする。

 

頭上には光輪があり、月桂冠のような金色の装飾品を身につけている。この装飾品に綺麗な布が結び付けられており、まるで髪の毛のように見える。

マントで全身を覆っており、マントには不思議な紋様が入っている。少し不気味。


グレイスとシオンに付いてきたのか、連れてきたのか…。

アルスダリアの祈り 第14話

最後まで読んでいただきましてありがとうございます。


ラウルさん大変でしたね(笑)

デュオンさんと意外な関係性があったみたいです。

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