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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
暴走列車編
13/21

第12話 深夜と鈴の音

深夜になり、無事に家についたルーク御一行。

真っ暗だった家に灯りが灯った。

 

 

ディン

「ルーくんやばい…身体が痛い…後からくるやつ…」


ルーク

「魔法使ったからだよ…大丈夫?我慢して歩いてたの?」


ディン

「いや、歩いてる時は大丈夫だった。お家ついて安心したからかも」


 

頑張りすぎちゃうんだからディンは…とルークが支える。


 

ルーク

「横になったほうがいいよディン。お部屋行こ」


ディン

「行くけどお風呂…」


デュオン

「お風呂は明日。元気になってから」


ディン

「じゃあ手は洗わせて…」


ヘスティア

「(魔力を流してあげた方が良さそうですね…)」


 

ルークがディンを抱えて部屋まで連れて行くことに。

デュオンとヘスティアもディンの看病をと続く。

ディンが落ち着いたらそのまま寝ますので、とヘスティアたちがおやすみを言った。

ゼナとソフィアとルシファーも自室で眠ることにしたようだ。

 


 ✳︎


 

静まり返った夜更け。

ロアとラウルとアスベルは眠らずにリビングに留まった。


 

ロア

「ん〜!なんか久しぶりに出かけた〜って感じだったな〜充実した一日だった」


 

アスベルは真っ先にソファに寝転がり、ラウルは近くに腰をかける。

ロアは伸びをしながら台所にココアを淹れに行った。

 


アスベル

「事件に巻き込まれて充実は強者すぎる」


ロア

「お祭り満喫したし、花火見たし充実してたでしょ!」


アスベル

「聞こえてたか」


ロア

「聞こえるように言ったくせに…。ほいココア。珈琲を少し混ぜてみたの。ディンの珈琲、高いやつだから美味しいよ」


 

ロアが熱いからね。と言いながら丁寧にカップを渡した。ココアの優しい甘い香りに、少しだけほろ苦い珈琲の香りが混ざっている。


 

ラウル

「ありがとう」


アスベル

「ありがと。でも眠れなくならんの?」



ラウルが両手で丁寧に受け取り、アスベルは片手で寝そべりながら受け取った。

 


ロア

「眠くならないように飲むの。君たちには、僕に付き合ってもらう」


アスベル

「いいけど…何すんの?」


ロア

「お喋りだよ!意外とさ、普段って深いお話出来ないじゃん?」


ラウル

「そんなことないと思うが…」


ロア

「あるの〜」



ロアはラウルの髪を弄りはじめた。

櫛を使わなくてもサラサラと指で梳ける綺麗な髪質だ。

暗い部屋でも、光を受けたように綺麗に揺れる。

ラウルはされるがまま。

アスベルは寝転んだまま、半目でその様子を見ている。


 

ロア

「ずっと聞きたかったんだけどラウルくんってどうやって人間界の生活に慣れたの?結構文化違ったでしょ?」


ラウル

「こちらに来てすぐにソフィアと出会ったから驚いたことは多かったが、困りはしなかった」


ロア

「あ、もう本当にすぐだったんだ」


アスベル

「ラウル最初、ソフィアを死後の世界のお迎えだと勘違いしたらしいよ」


ロア

「え?なにそれほんとに?詳しく」


ラウル

「あまりにも綺麗だったものだから…それに自分はもう死んだと思っていたから余計に」


ロア

「ソフィア姉さん綺麗だからね。気持ちはわかる」


 

うんうん。とロアが強く頷いた。


 

ロア

「死後の世界って…そういう言い伝え信じてるの可愛いねラウルくん」


ラウル

「ソフィアにも似たようなことを言われた」


ロア

「でも死んだと思ったって…誰かに殺されかけたとか…?あ、処刑的な??」


ラウル

「いや……“黄泉送り”という文化があって、大きな穴に身を捧げるんだ。生きて戻ってきた者はいないと聞かされていたから死んだのかと」


ロア

「え〜、なにその文化…怖」


ラウル

「神族の中では神聖な儀式とされているんだが」


アスベル

「生贄的なね。それやってどんな効果あったんだろうね」


ラウル

「"祟り神"が出てこないように…と聞かされていたな」


アスベル

「祟り神?」


 

アスベルが眉をひとつ上げた。

薄い照明が、彼の横顔にゆっくり影を作る。

ラウルはどこか遠い昔を思い返すような表情だった。

 


ラウル

「俺は見たことないんだが、襲いかかってくるらしい」


ロア

「うわぁ人間界だけじゃなくて違う世界でもヴァイスみたいなのがいるんだね」


アスベル

「どこもかしこも物騒で嫌だね」


ロア

「ヴァイス関連じゃなくても事件多いもんね。特に最近」


アスベル

「治安悪くなればそうなるよ。一周まわって何でもできる気がしてくる奴が出てくる。無敵モードってやつ」


ロア

「妖界隈ではどうなのさ」


アスベル

「いたんじゃない?あんまり覚えてないけど。普通に突っかかってくる奴いるし。きっと、どこも、どんな種族でも一緒だよ」



どこか他人事のように話すアスベル。思い出そうとすると頭が霞みがかったようになるらしい。

静かになってしまったので三人は同時にココアを啜った。

一息ついて再びロアが話し出した。


 

ロア

「ねね、ラウルくん。一番びっくりしたことって何?」


ラウル

「びっくりしたこと?……髪、だな」


ロア

「えぇ?なんでなんで?髪質が悪いとか?ラウルくん髪綺麗だもんね。羨ましいくらい」


ラウル

「そうではなく……神族は短髪がほとんどいないんだ。罪人つみびと)になった時に髪を落とすから、短髪だと罪人扱いされるんだ」


ロア

「えぇ…じゃあ罪人つみびとだらけだと思ったの?人間界」


ラウル

「そう」


アスベル

「おれ達、神族から見たら罪人つみびとだよロア」


ロア

「確かに」


 

最初は見慣れるまで時間がかかったものの、現在ではもう慣れたみたいだ。

 


ラウル

「あとは…こういうのとか」


 

ラウルは持ち帰ってきた戦利品の水風船を丁寧に持った。


 

ロア

「水風船にびっくりしたの?」


ラウル

「水風船というか、人間の発想力に驚く。何を考えたら思いつくのか。火をつける道具とか、今日乗った列車もそうだ。神族の世界にはない」


アスベル

「不便だからこそ的なね。発想力はピカイチでしょあの種族」


ラウル

「人間界はいろいろなものがあって楽しい。あとは天気というのも面白い。勝手に空から水が降ってきたり強い風が吹いてくるんだ。あと、四季というのもこちらにきて初めて知った」


ロア

「天気ないんだ。四季ね〜植物とか綺麗でいいよね。場所によって暑かったり寒かったりとか」


ラウル

「あと、朝や夜…時間帯で空の色が変わるのも驚いた」


ロア

「それは僕も一緒〜!天気はあったけど、空はずっと同じだったな〜。ずっと暗いの。人間界眩し過ぎて焦ったよね」


ラウル

「ソフィアもディンも言ってたなそれは」


 

共通点があって嬉しかったのかロアのテンションが上がった。ラウルも珍しくよく喋る。


 

アスベル

「天気とか空の色って…そんなに騒げることかね」


ロア

「アスベルくんは当たり前だから感動しないんだよ〜。初めて見る人からしたら感動もんだよ」


アスベル

「すみませんねぇ…感情がなくて」


 

いいね、若いと感性が豊かで。とアスベルがあくびをした。少しだけ拗ねてるように見える。


 

ロア

「あとは?」


ラウル

「あと?あとは…老い…?」


アスベル

「んふ…老い…!急に笑わせんといて」

 


アスベルがツボってしまい、ぜぇぜぇ息切れする。笑う体力もないらしい。


 

ロア

「ラウルくんの言いたいことわかるよ。あれでしょ?しおしおになっちゃうやつでしょ?」


ラウル

「それ」


アスベル

「あぁ人間の話ね。急に深刻なこと言うなと思った」


ロア

「僕、最初そういう病なのかと思ってた」


ラウル

「俺はそういう人種なのかと…」


アスベル

「そっか全く馴染みないんだもんな…人間くらいだもんね。あんなにしわしわになるの」


 

人間は年齢を重ねるごとに腰が曲がり、身体に皺やシミができて老いる。人間ではない彼らからすると衝撃的なようだ。



ラウル

「すごく腰を曲げて歩いているから何か落としてしまったのかと思って声をかけたら全然違ったんだ。俺、最初、老化というのを知らなくて随分と失礼なことを言ってしまったことが…」


ロア

「めっちゃ想像できる」


ラウル

「だから俺はソフィアと出会っていなかったら危ない奴になっているところだった…。人間界では不敬罪や侮辱罪というものがあるらしいからな…無意識にやらかしていたところだった。場所によっては牢獄行きだと…」


アスベル

「今頃、どこかの国の牢屋にいたかもしれんね」



世間知らずで随分とソフィアを驚かせていたラウルだったが、今ではすっかりこちらの文化に順応している。



ロア

「こういうお話ってなかなか出来ないからさ〜お話聞けて嬉しいよ僕」


ラウル

「気にせず聞いてくれて構わないのに」


ロア

「僕は繊細なの。今だに神族とか妖族とか、そんなことある?って思ってるもん」


ラウル

「それはお互い様では…」


アスベル

「神族は知らんけど、妖は絶対会ったことあるって。その辺に普通にいるし」


ロア

「人に化けてたらわかんないよ」


 

笑い声が消えたあと、しばし静寂が流れた。

外の空気が少しずつ変わっていく。

夜の冷たさが薄れ、窓の向こうがわずかに明るむ。


そのとき――


リィン……


どこからともなく、澄んだ鈴の音が響いた。

風の音とも違う、耳の奥を撫でるような音色。

ロアがきょろりと周囲を見回し、ラウルが顔を上げる。


 

ロア

「……今の、聞こえた?僕だけ…?」


ラウル

「いや俺も聞こえた」


 

締め切っている部屋に、澄んだ鈴の音が響いた。

この家には、鈴などないのに。


 

ロア

「待って待って怖い!アスベルくんが妖の話するから!」


アスベル

「とばっちりすぎん?妖と幽霊は違うし」


ラウル

「(どこかで聞いたことあるような……なんだったか……)」


アスベル

「聞こえなくなったし大丈夫だよロア」


ロア

「ほんと……?ほんとに大丈夫……?お化け出てきたら呪うよ?僕ってば、こういう類の苦手なんだから」


アスベル

「大丈夫だって」

 


冷静なアスベルとラウルに対して、パニックのロア。

ぴよぴよと小声で"怖いよ〜"を連呼しながら、ラウルの腕にしがみついている。


 

ゼナ

「ロア……?大丈夫?大きい声がしたけど……」


ロア

「!ゼナくん!」


 

ロアの叫び声を心配して、ゼナが眠そうな目をこすりながら部屋に入ってきた。

 


ロア

「ゼナくん聞いてよ!鈴の音がね!あ、わぁ!?避けないで!」


ゼナ

「ごめん…反射で……大丈夫?」


 

ロアが勢いよく抱きつこうとした瞬間、ゼナがひょいと避ける。

ドタバタと笑い声が響いたあと、窓の外がうっすらと白み始めていた。


朝が来る。

けれど、ほんのかすかに――


リィン……


もう一度、どこか遠くで鈴の音が鳴った。


 

 ✳︎✳︎✳︎


 

【キャラクター紹介】

 

ラウル

種族は神族。神族は冥界生まれと天界生まれがいる。

ラウルは冥界生まれの神族。

ラウルが使っている双剣は"神器"という神族特有の武器で、全体が白い綺麗な武器。

意識的に出したり消したり出来る。

かなり重たい武器のようだ。


 ✳︎

 

【ワード集】

 

黄泉送り

神族特有の文化です。生きている神族をお清めしてから黄泉という黒い大穴に捧げます。祟り神を鎮めるための儀式だと言われています。選ばれたものは断ることは出来ません。神族の中では神聖な儀式となっており、選ばれることは名誉であるとされているらしいです。 

アルスダリアの祈り 第12話 

最後まで読んでいただきありがとうございます。


実はみんな同時に出会ったわけではなく、順番に巡り合っています。ロアくんは割と最近みんなと一緒になったのでみんなのことを知らないことが多いようですね。

13話からまた動きがあります!日常編お疲れ様でした。

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