第九十九話
薄暗いサークル棟内部の中で天文部の部室のドアをノックする。
「サークル自治委員会の方かな?」
ドアの奥から佳代子の声が聞こえる。
「あたしよ、千明。入っても良い?」
「うむ、千明か―――ドアは開いているので来るが良い」
佳代子の返答で千明がドアを開ける。
天文部の部室は左右に星座や天文部の本などが並び。
窓の光が眩しい。
真ん中に木製の机があり、パイプ椅子が並んでいる。
右横に佳代子が座って、講義の本をノートと共に勉強していた。
「ああ、自習中だったの?」
千明がそう答えて、ドアを閉める。
「五限の講義が始まる前に簡単なおさらいをしていただけだ。この前の夜に話していた入部届を今出そう」
佳代子がそう言って、立ち上がる。
「この部室って、古いタイプのストーブはあるけど―――冷蔵庫もテレビもないのね。夏とか不便じゃない?」
千明がパイプ椅子の設置されている左横に座って、話す。
「置くことも出来るが停電になるので上の電気の明りと扇風機くらいしか使えんのだ」
佳代子がそう返答して、本棚の下の収納スペースから紙を取り出す。
「なるほどなー。サークル棟の部室って、部屋多いからそういう弊害もあるのね」
千明がパイプ椅子の方向に歩いていく。
佳代子が入部届を机の上に置き。
机の上にあるボールペンを千明に渡す。
「ありがとう。これであたしも部員な訳だね」
「そうなるな。ここの隣の部屋は漫画研究会だが、実質コミケとかいう奴に出す会誌や過去の先輩たちの作品が置かれている物置だから人は基本的に来ない。漫画サークルはだいたい定期的に大教室を借りてイベント用の原稿を渡すだけらしい」
「ほーん。ここって、一番端っこに部室あるのね」
千明がそう答えて、ボールペンで入部届けに必要な情報を記述する。
「でも、それがどうしたの? なんか関連性でもあるの? 天文部もコミケ出るとか?」
千明がそう言って、書き終えた入部届を渡す。
「うむ、大いにある。コミケはないが、部室でレガシーウエポンや魂喰らいの話などが遠慮なく出来るということだ」
佳代子がそう言って、教材をカバンに締まっていく。
「なるほどね。じゃあレガシーウエポンや赤い眼の能力に赤い雨に関係ありそうな魂喰らいって、色々聞いて良い? なんだかんだであたしは良く知らないんだわ」
千明がそう言って、本棚の横にある大きな使われていないストーブをチラリと見る。
(さっきの論理学の時にドレッド君とレガシーウエポンとかの話をしそうになったけど、ドレッド君が空気読んでくれて周りにバレずに済んで良かったわ。あたしもうっかりさんよねー)
反省した千明が椅子に座って、佳代子と対面する。
佳代子がカバンから生協の売店で買ったであろう菓子パンを出す。
「色々説明するだろうから糖分を取っておくが良い。お互いに五限の講義もあることだしな」
「ああ、ありがとう。佳代子。お金は出すわ」
「また今度で良い。まず赤い眼の出し方だが―――」
千明が菓子パンを食べながら佳代子の説明を聞く。
「赤い眼には赤い雨の夜以外でも使える。千明と出会った時の昼頃の図書館の時にも出来たが―――時雨とドレッドのみ昼でも使える。他のメンバーは夜限定でしか使えないと思えばよい。太陽が沈むと出せるようになる」
千明が菓子パンを食べ、話を聞く。
「なんで時雨とドレッド君だけが昼のみ使えるの? 探知もそうだけどさ」
「二人に聞いても解らないそうだ。ドレッドか言うには先輩達も使えたようだが、私たちの代では何故か出来ないということらしい」
「先輩の人らの方が優秀だということかもね。そうなると時雨とドレッド君が無気力病になったら厳しくなるから守らないとね」
千明が納得して、ドーナツの袋を開封する。
佳代子が説明を続ける。
「うむ。それと赤くなった眼の状態で使えるのは治癒と暗示―――それと赤い眼を使うもの以外の人間である第三者の映像などがぼやけて映らなくなる力を持つ」
佳代子がそう言って、チョコレートのスニッカーズを取り出す。
「暗示は一般人の襲われた黒い獣に関する記憶を消せるのよね。二回襲われたあたしを時雨がかけたように―――」
千明がクリームドーナツを食べ、佳代子に話す。




