第九十八話
八号棟から一階に降りていき―――。
千明がキャンパスプラザのある通路を歩いていく。
左には貯水池や芝生があり、空中にはオーバーブリッジが繋がっている。
千明が第二厚生棟の売店をチラリと見て―――。
ガラス越しに読書をしている時雨を見かける。
(あっ、時雨だ。五限まで暇なのかな? 何やら真剣に雑誌読んでるし、そっとしておこう)
千明が時雨から視線を離して、キャンパスプラザの階段を上がっていく。
キャンパスプラザの石の階段を登り終えるとバス停が見える。
そこには三限の講義などを終えた学生がバスを待って並んでいる。
人数はかなりあり、千明がその列を通り過ぎて、サークル棟行きの横断歩道を目指す。
「あれ? 千明じゃないかじぇ?」
不意にバス停の列の前列から背の小さい女子大生が声を掛ける。
つい最近見知った顔なので千明が挨拶に向かう。
「ああ、素子ちゃんだっけ? サークル棟にはいかないの?」
千明が自然にトレーニングなどをするのかという言葉をサークル棟に行くという言葉で置き換える。
二人はバス停でバスが来るまで短い雑談をする。
「ドレッド君からある程度聞いたけど、部室とかで例のアレしないわけ?」
千明は瞑想や屋上での合同の身体訓練などをそう説明する。
「今日はダメだじぇ。講義終わったし、隣町のゲーセン行くじぇ! オールナイトだじぇ!」
素子が目をキラキラさせながら返答する。
「あ、ああ―――そうなの。私は入部届書いて、佳代子と訓練かな」
千明がやや小声で答えて、素子がサークル棟の方向を指差す。
「バス停前の横断歩道渡って、食堂があるからそこの階段上ればサークル棟に着くじぇ!」
「ありがとう。一回だけ夜に行ったから道覚えたわ。素子ちゃんはゲーセン行ってて良いの?」
「ゲームセンターに射撃のゲームがあるからそれで練習してるじぇ! 瞑想は部室でするからたまにくるじぇ!」
素子が弾んだ声でそう返答する。
(ああ、そういう訓練方法もあるのか―――遠距離型のレガシーウエポン使うのかな?)
千明が想像している間にバスが山を上がってやってくる。
「んじゃあ、今日から天文部入部を歓迎するじぇ! それじゃあバス来たからゲームしに行ってくるじぇ!」
素子が笑顔で敬礼する。
「ああ、またね」
千明がやや置いてけぼりの半笑い顔で手を振る。
バスが止まり、素子たち学生がバスに入っていく。
千明がバス亭とは反対側の休講報告やバイト先の紹介や大学の報告などが張られている掲示板をチラリと見て―――。
(五限の休講はホームページでもあったけど、今回は休講無しで普通にやると―――そんじゃあ五限開始が近づくまでサークル棟に行きますかね)
千明が発進するバスを待った後で、キャンパスの信号のない横断歩道を渡っていく。
そのまま高い場所に立っている別荘のような趣きの食堂がある場所に向かう。
(彰美や吉澤さんが部活に行く前に食べに行くって、コミュニティで言ってたサークル棟の部員たちが良く利用する大学内の三つ目の食堂かぁ。あたしも天文部に入部したらお世話になるのかね?)
大きな食堂を横目に千明が階段を登っていく。
食堂を過ぎると右側に階段が続き―――。
そこを登ると灰色のやや汚れたコンクリートのサークル棟の建物が目に映る。
五階建ての建物から管弦楽部のバイオリンの音や他の文科系サークルの楽器の音が控えめに響いていく。
千明は部室に向かって。サークル棟の出入り口に入っていく。
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