第九十七話
「そういえば―――この論理学の講義が終わると四限は教室使わないで五限まで使わないんだったな」
ドレッドが話題を変えて、人の少なくなった教室を見渡す。
残っているのは雑談をしている学生が十人足らずで残るだけだった。
「そうだね。私は四限の講義とか今年は取ってないから五限まで暇かな? ドレッド君はこの後は暇?」
千明が目をキラキラさせて、ドレッドに話しかける。
「四限はオーバーブリッジを歩いて、十号棟の大教室で選択科目の講義があるからそろそろ失礼するよ」
ドレッドがそう告げて、教材をカバンに締まっていく。
「あっ、そうなんだ。じゃあ一緒に歩く? 三号棟の売店でスイーツ食べたいし―――そこまで一緒に歩こうよ。オーバーブリッジはこの号棟だと二階にあるしね」
千明も教材をカバンに入れて、席から立ち上がる。
「―――チアキ、再度だが天文部に入部するかどうか改めて決めてほしい」
ドレッドがそう言って、千明と一緒に教室を出ていく。
「大丈夫よ。私は決意してるから―――最後まで事件を解決するまで一緒に頑張るわ。入部届持ってる?」
千明がドレッドと一緒に並んで四階の廊下を歩いていく。
「入部届はサークル棟の部室に何枚か残っている。サークル棟に行って、天文部の部室で書けばシグレが事務室に出してくれる」
ドレッドがそう返答して、千明と一緒に階段を下りていく。
「あ、そうだ。入部するしアドレス交換しない?」
千明が階段を下りながらドレッドに提案する。
「コミュニティアプリでメッセージのやり取りとが出来るが? オレとわざわざアドレス交換する必要はないのでは?」
ドレッドが階段を下りながら返答する。
「ドレッド君と個人的なお話とかしたいしねー♪」
千明が嬉しそうに言って、ドレッドより先に階段を下りて、二階に着く。
「わかった。あまり出られないこともあるが―――チアキがそれでいいのなら交換しよう」
「ありがとうねー♪」
二階の階段を出て、八号棟のオーバーブリッジに繋がる空間で二人がスマホを取り出す。
そのまま多くの学生が歩く中でアドレスを交換し終えた。
(やったわ♪ ドレッド君の個人アドレスゲット! 後は赤い雨以外でデートしまくって家に……きゃあ♪ ドキドキするわー♪)
千明がニコニコしながら不思議そうな表情をするドレッドを見る。
「チアキ。入部するならサークル棟に行って瞑想でも良いからしてくると良い」
「部室で瞑想? なんでさ?」
疑問に思う千明にドレッドがオーバーブリッジを一緒に歩きながら話す。
「レガシーウエポンは瞑想でも精神力が鍛えられる。それだけ長く使いこなす時間が増えるから空いた時間でメンバーが行うんだ」
「……ふーん……なるほどなー」
千明がなんでそうなるのかあまりわからずに相槌を打つ。
「サークル棟はオーバーブリッジを歩かずに八号棟や七号棟から一階まで降りて行って―――キャンパスプラザの先のバス停を越えた第二厚生棟の奥の食堂の隣にある」
「夜に佳代子と一緒に行ったから覚えてるわ。ドレッド君と時雨が屋上でいたし、夜だったけど道はしっかり覚えているわ」
「部室には今の時間だと佳代子がいる。鍵の心配はないから今日はここでお別れだ」
ドレッドがカバンを片手に微笑んでスマホをしまう。
「ありがとう―――じゃあ、四限は講義ないし、五限始まるまでに部室に行ってくるわ」
「呼び名なんだが、チアキで構わないかな?」
「ええ、それでいいわよドレッド君」
「チアキ、こうなった以上は天文部の活動で後戻りはもうできない。一緒に乗り越えていこう」
「もちろんよ。じゃあ別々の講義だけど、またね。頼りにしててね」
「ああ、頼む。それじゃあな」
「んじゃねー♪」
千明がドレットに手を振る。
控えめに手を振るドレッドがオーバーブリッジに歩いていき―――。
(ドレッド君もドレッド君で色々あるんだろうなぁ。イケメンだし、ほっとくのはなんかあたしの性に合わないのよね。なんとかすっかな―――最近脳内でたまに聞こえる謎の男の声も気になるし、解明するしかないか)
決意を固めた千明が壁越しにある外の非常用にも使う階段に向かって別々になる。
千明がコミュニティアプリを起動して、天文部のコミュニティに部室に行くことを書き込む。
佳代子のアイコンから「来るとよい。入部届の紙を出しておく」っと書き込みが残り―――。
階段を下りていく千明が昼の晴れた体温のホカホカする明るい天気の中で階段を下りていく。
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