第九十六話
出入り口から教授がやってきて、上下の二重構造になっている黒板を下げて―――講義が始まっていく。
講義の中で―――。
「ドレッド君って、彼女いる?」
千明が窓越しのドレッドに隣の席で話す。
ドレッドが講義を聞きながらノートを取り―――。
「―――いや、いないな」
そう答えて、講義を真面目に聞く。
(あら、意外―――フリーなら行けるわね。押し込まずにちょっと他愛ない話でも混ぜるかな?)
千明が講義を聞きつつ、控えめなガッツポーズを取る。
「ねぇ、ドレッド君―――天文部って、普段は赤い雨の夜以外は何をしているの?」
千明がニコリと微笑み。
ドレッドに顔を向ける。
「―――天文部は赤い雨の夜以外は普通に天文部としての活動をしている。星座や夜景の観察を天体望遠鏡でみたりね」
ドレッドがそう言って、真顔で千明をチラリと見て、答える。
(夜景で星を観察するイケメン外国人―――絵になるわぁ)
千明が嬉しそうにその姿を想像する。
「チアキ―――」
ドレッドが声を掛ける。
「ドレッド君―――今度一緒にプラネタリウムとか一緒に見ない? 隣町にあるやつ」
「それは良いのだが、講義中だ。話すのは後にしよう」
「あ、ああ―――そうね……」
千明が慌てて、ドレッドからノートを見せて貰う。
「それと―――赤い雨の降る夜以外なら私用も無ければオレは問題ない」
ドレッドがそう答えて、千明の頬が緩む。
(おおっ! オーケーが出たわ! よーし、今度誘っちゃお♪)
千明が嬉しそうににんまりとした顔になり―――ドレッドと一緒に講義に集中する。
※
講義が終わったばかりの時間。
「いやー、講義終わったわね。ドレッド君ノート貸してくれる?」
千明が席に座ったままドレッドに話しかける。
「ああ、良いよ。出席日数この講義は取らないが、筆記試験を三回やるしな」
ドレッドがそう言って、席に座ったままノートを渡す。
千明がノートを借りて、執筆しつつ―――。
「それが単位の取得に関わるって高校とは違って珍しいわよね」
そう高校時代を懐かしむようにドレッドに話す。
ドレッドが少し黙り込み。
「……チアキ、俺にはハイスクール時代にはそんなカリキュラムもあった」
そう告げて、周りの教室を出ていく大学生達をチラリと見る。
「あっ、そっか―――アメリカだっけ? 開放的でいいわよね ドレッド君の実家とかどの辺?」
千明が人数の減った教室の中でドレッドに問いかける。
ドレッドが目をそらし―――。
「今はその筆記重視の講義の大事なとこあるから、故郷のことは今度話すよ」
そう微笑した。
(―――いい具合にはぐらかされたわ。爽やかな微笑付きで―――)
千明がノートを書き終えて、ドレッドにノートを返す。




