第九十四話
―――隣町の駅での午前五時の時間。
ホテル街の細道ではパトカーと救急車がそれぞれ二台ほど止まっていた。
ツリ目で目にクマがある笹塚刑事がガムを食べて、現場に指示を出していた。
無気力病になった学生証にあるシュンという名前の学生を警官たちが傷などを調べる。
もう一人の女子大生が失禁しながら虚ろな目で敗れた半裸の姿で倒れ込む。
服がはだけて肌が胸や局部まで露出している女子大生を警官達が傷などを調べている。
一通り終わった後に警察が女子大生を担架で保護する。
「こっちの女子大生は例の無気力病事件の犠牲者ですね。病院に搬送しておきましょう。無気力病事件と殺人事件―――同じ時期に起きているし、関連性はあるんじゃないですか?」
若い警官がガムを食べている女刑事に話す。
「赤い雨の降る日に警備を強くしてもこれだもんな。愉快犯ってわけでもない―――」
女刑事がそう言って、ガムを噛むをの中断する。
警官達が朝から救急車で二人の大学生を搬送し―――。
「笹塚刑事。無気力病になった二人の大学生と傷跡を確認しました。今から救急車に被害者を搬送し終えました」
若い警官が敬礼して、報告を終える。
ガムを食べている名前を呼ばれた女刑事が目に薄いクマを浮かべて、不機嫌そうに話す。
「―――報告ご苦労。今回はケースAだな。監視カメラも映像すら掴めないとは相変わらずカメラ班も顔がぼやけていたなどどと抜かすし、謎のままなのが不愉快だな」
そう呟いて、敬礼する若い警官に話す。
笹塚刑事がガムを噛み終え―――銀紙にガムを包む。
若い警官が続けて報告する。
「カメラにはスーツ姿の男が映っていたと報告になるが―――顔はぼやけておりました。男子大学生と女子大生の財布を取っていた映像もあります」
その言葉に―――笹塚刑事が目を細めてカメラを睨みつける。
「そんなことをするのは逃走中になっている赤い雨が降ってから逃げ続けている殺人犯の鏡志咽規だろう」
「笹塚刑事。例の無気力病になった学生たちの中で稀に見る殺人犯でありますか?」
警官の疑問気味の声に笹塚刑事が頷く。
「ああ、赤い雨が最初に降る直前で起きた事件の脱走殺人犯だ。私の勘だが間違いなくこの無気力病事件に関与している。夜にしか現れないから昼はどこにいるかもわからないが―――服装は当時の鏡とカメラに映る服装で一致している」
笹塚刑事がそう言って、若い警官を真っ直ぐ見る。
その瞳には田舎の若さゆえの刑事魂が宿っていた。
笹塚刑事が話を続ける。
「女子高校生を刺殺した殺人犯―――刺した時の傷が感知して刺した刃物が見つからずに刑が確定する頃には銃刀法違反がなかったっと記録にあった。その女子高生は医務室で手術を受ける中で医師が異常な出来事が起きたと述べている」
「医務室での異常な出来事でありますか?」
警官が疑問に思い、問いかける。
「針で縫ったわけでもないのにその女子高生の傷がどんどん塞がっていく現象が起きたそうだ。意識も取り戻してきたらしい」
「そんなことがあり得るのでありますか?」
「どんな刃物か私も気になっていた。鏡の担当刑事の話だと刃物は警官の男に当てられたとか―――」
「書類にあった岡橋警察官でありますね?」
若い警官がその男性警官の名前を述べる。
岡林―――その名前に笹塚刑事がピクリと黙り込む。
どこか思う所があるのか間を置いて―――。
「ああ、殺人犯の鏡と同じで行方不明になっている岡橋警察官だ。キャリアもあって優秀な警官だったが―――鏡を移送中に周りの警官を突然銃殺。車の運転手も死にかけの警官を人質に捕られて、車を止めさせた後に運転手ごと下ろさせて銃殺だ」
そう無念そうに若い警官に彼女は告げる。
「過去の報告書を調べましたが―――岡橋警官は事件直後に銀髪のシャギーストレートの髪型に変わったとありました。死体以外は二人の男は見つからずじまい―――ニュースになった上に雑誌にも取り上げられた怪事件でありますね」
若い警官が遠慮せずに話していく。
「まったく―――あんな真面目で優秀な悪を憎む岡橋があんな馬鹿な真似をするとは思えない。髪の色も監視カメラで変わったのが謎でもある」
笹塚刑事がガムを取り出し、話を続ける。




