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第八十八話

 男の投げた右側のナイフが女子大生の右手に刺さったまま外れずに血を吸収していく。

 二人が痛みを訴えるように悲鳴を上げ。

 スーツの男とが女子大生に投げた右手のナイフを取らずに―――。

 再度赤い光でナイフを右手に作り出す。


「さてと―――アンチレガシーウエポンが相手に見えないとはいえ、痛みも危害も加えられる。俺様の力でトコトコいたぶるしかない時間だな」


 そう言って、男がゲロを吐き終えた男の髪を掴み上げて、顔を上げさせる。


「てめぇ、こんなことやってタダで済むと思ってんのかよ」


 男がそう言うとスーツの男が不敵に笑う。


「それはこっちのセリフですよ。人を怒らせるようなイキリ発言と刑法に触れる無断配信が罰を生むのですよ? ってことで―――はい、サービス」


 男が左手のナイフを男子大学生の心臓に差し込む。


「あがっ! あががががっ!」


 男子大学生の声にならない痛みの悲鳴でナイフが心臓までゆっくりと入る。

 今度はゲロの次に口から血がこぼれていく。

 刺さったナイフからは血が吸い込むようにナイフの刃に吸われていく。

 痛みで這いずり回る女子大生にスーツの男は蟲を見るような眼で見下ろす。


「逃げてはだめですよ。まだお楽しみはこれからなんですから―――」


 男がそう言って、右手のナイフを女子大生に向かって、投擲する。

 ナイフがそのまま女子大生に向かって、矢のような速度で飛んでいき。

 女子大生の腰に刺さる。


「痛い、痛い! 痛い! 誰か! だ、だか―――」


 女子大生が右手と腰に刺さるナイフで動けなくなり、声が徐々に弱まっていく。

 隣に落としたスマホはまだ起動しているが。

 女子大生の手には届かない。

 腰と右手に刺さったナイフが血を吸い込むように吸っていく。

 一方で男子大学生は倒れ込んだまま動かない。


「もしもし~! まーだ生きてますぅ~?」


 男がそう言って、男子大学生を蹴り飛ばす。

 蹴られた男子大学生がホテルの壁まで転がっていき。

 壁にぶつかって、眼から涙と口から涎が垂れる。


「おっ、良い顔だねぇ。アホ面通り越して、薬でも決めてるみたいでいい感じだねぇ! ヒャアッハッハッハ!」


 男が高笑いし―――。

 その時にスーツの男のポケットからスマホが振動する。

 男が笑みを浮かべたままスマホの着信に出る。


「はいもしもし! ただいまクソ生意気な大学生カップルを絶賛殺し中でーす♪」


 男が陽気な声で話す。

 ナイフが刺さった二人の大学生の転がっている姿を見て、その表情は嬉しそうだった。

 スマホ越しから若い男の声が聞こえる。


鏡志咽規(かがみしのどき)―――儀式と関係のない余計な殺生をするな。魂喰らいだけ臨時召喚しろ」


 名前を呼ばれた鏡というスーツ姿の男が笑みを消す。


「はいはい、解りましたよ。気分転換にウザウザ野郎とカスメス殺すまえに痛めつけて、何が悪いんだか―――」


 鏡と呼ばれた男がそう言って、ビジネスシューズで女子大生の頭を踏みつける。

 スマホ越しに若い男の声が聞こえる。


「赤い雨が止んだばかりだ。パスタリアの調整で私は忙しい。忘れていない後は思うが、降り終えた後でも僅かな時間で非常時の臨時召喚は限られている。早く儀式をさせろ」


「わっかりましたよ。俺様のアンチレガシーウエポンを吸った血で強化できるってのに―――ま、獲物をいたぶって楽しんでるのにこればかりはしょうがないっすね」


 鏡がそう言って、スマホを切る。


「んじゃあ、召喚させますかね」


 鏡がそう呟いて、目を瞑って念じ始める。

 途端に―――鏡の左右に赤い色の王冠の魔法陣が浮かび上がる。

 その魔方陣から魂喰らいが二匹現れる。


「さーてと、俺様のアンチレガシーウエポンよ。刺した相手の肉体から戻って、手元に重なれ―――」


 鏡がそう言うと―――。

 二人の男女の大学生に刺さったナイフが磁石のように鏡の手元に戻っていく。




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