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第八十六話

「いやー、素直で綺麗な人っすね。俺は魂喰らいにドレッドに助けられて、暗示をかける前に適性があるとかでそのまま入部しんすよね。今年の五月だったんで今からだとまだ半年も経ってないっすけど―――」


 真城がそう言って、真剣な顔で千明に手を差し伸べる。


「もし入部するなら今後ともよろしくッス。それと感謝のお礼ありがとうございます。俺らが魂喰らいから赤い雨の降る夜の街を守るんでまかしといてくださいッス」


「ありがとう。真城君」


 千明が真城に握手する。

 真城がドキッとする。


(うおっ! 思ったよりも柔らかくて冷たいっ手っすね。肌も綺麗だし、マジで惚れそうっす!)


 真城がギュッと千明の手を握る。


「あの……真城君?」


「なんっすか? 山本千明さん。天文部のオフの日であれば赤い雨以外なら―――」


「いや、そうじゃなくてそろそろ―――握手そろそろ止めないかな?」


 千明が困り顔で真城に話す。


「あ、そうっすね。すいません。良い匂いだったもんで、つい―――」


 真城がそのまま手をゆっくりと離し、握手を止める。


(良い匂いって―――この真城って後輩君―――もしかして童貞なのかな? でもそんな雰囲気じゃないわね。ドレッド君の方が断然いいし、真城君には悪いけどセール品よりブランド物よね)


 千明が口にせずに真城から視線を離す。

 素子と呼ばれた女子大生が金辺に問いかける。


「金辺、なんで新入部員が同じアルバイト先の大学生のこと電車で教えてなかったんだじぇ?」


「入部と事件に関係ないからだ」


「レガシーウエポン適正ある上に手に入ったのなら、もう関係ないじぇ。電車乗ってるときに詳細言ってくれればどんな人か想像つくのに黙りっぱなしなのは良くないじぇ?」


「余計な情報は要らないからだ」


 二人が軽口を叩いて―――。

 千明がマジマジと見つめる真城の熱視線を軽めに無視しつつ、金辺に話す。


「金辺がぶっきらぼうなのは仕事と面接と試験以外ではいつものことだから、しょうがないと思うわよ、素子さん」


 千明がそう言って、素子が千明を見る。


「素子で良いじぇ! そのかわり大学内や外であったら千明って呼んでも良いかじぇ?」


「ああ、うん。そうするね。よろしくね―――素子」


 千明が素子に笑顔で答える。

 金辺がずいっと千明の前に出る。


「金辺だ、よろしく!」


「や、あんたは知っとるわい」


 金辺のキリっとした真剣な表情でのボケを千明が突っ込む。


「「あっはっはっはっ!」」


 天文部のメンバーがそのやり取りに笑い声が響く。

 一通り笑い終えた後に―――。


「それじゃあ駅にいつまでいてもしょうがないから駅の外に出ようか? 駅前の学生バスはもう運行時間過ぎてるから人もいないし、そこで話そう、ね?」


 時雨の提案にメンバーが駅から離れていく。





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