第八十四話
深夜二時半―――。
金辺達が電車に乗り―――。
千明達が駅前に集合する。
無人の証明が付いた駅内で千明が改札前の椅子に時雨達と一緒に座り込む。
駅改外のコンビニが無人の客層の中で店員たちが商品の仕分けと配置を行う姿を窓越しに千明が見る。
時雨が千明に話しかける。
「千明ちゃん。今日は本当にお疲れ様。コンビニでサンドイッチ買ってくるね。一緒に食べよ?」
「いや、あたしは何もしてなかったし、足手まといだったわよ」
千明が脱力して椅子にもたれかかる。
ドレッドが佳代子の隣の椅子に座り、ミルクティーを片手に話す。
「チアキ。最初の内からレガシーウエポンを使いこなせるのは厳しい。今日は魂喰らいとレガシーウエポンの出し方が出来ただけでも上出来だ」
「そう? ありがとうドレッド君。正直言って、怖くてまだ手が震えてるわ。ってか―――」
千明が目を瞑り、そのままメンバーに話す。
「残りのメンバーに金辺がいたってのが意外だわ」
ドレッドの隣に座っている端っこの佳代子が駅内のコンビニで買ったであろうハンバーガーを食べ―――。
「ふむ? そう聞くと千明は知り合いのようだが? 金辺の口からは千明の名前は今まで一度も聞いていないが?」
そう話して、佳代子がコンビニのレンジで温めていたハンバーガーを頬張る。
千明がそれを聞いて、ハッと笑う。
「金辺は口下手というかぶっきらぼうだし、隠し事はしっかりするからそうなるでしょうね。時雨、お腹減ってんなら何か奢ろうか?」
千明がそう言って、財布を取り出す。
時雨が慌てて、手を振る。
「いいよ、いいよ。千明ちゃんを危険な目に合わせた訳だし、まだ仮入部の段階だしね」
「仮入部? レガシーウエポンや事件の原因の一つを知ったうえで戦ったのに?」
「チアキ。記憶を消す暗示と呼び戻す暗示は使ったが―――それは数日後には消去される暗示だ」
ドレッドがそう言って、ペットボトルのミルクティーを飲みだす。
千明がやや驚き―――。
「そうなの? んじゃあまだ引き返せるし、改めて記憶を消されない暗示も後々かけてもらうってことね」
千明がドレッドにそう話すと彼が頷く。
それを見た千明が―――。
「―――あんたら優しいのね」
そう皆に言うように呟いた。
「えっ? 優しい?」
時雨が意外そうな顔をする。
ドレッドが冷静な表情で千明を見て―――。
「チアキ―――なぜそんな風に思える?」
そんな疑問を千明に投げる。
千明は静かに慈愛のこもった優しい顔つきになり―――理由を話す。
「自己の任意で決意したとは言え、私に引き返せないことろまで進んだ後に無理にこんな事件に巻き込まないように配慮してる」
佳代子が黙って、千明の言葉を真剣に聞く。
続くドレッドと時雨が戸惑いつつも黙り込み。
千明が話を続ける。
「そしてあんた達は警察でも対応できない事件を人知れずに夜を守っている」
千明の慈顔にドレッドが引き込まれるように無言でそんな千明を見る。
言葉を千明が続ける。
「それも明日の朝の訪れを守るためにさ。無気力病になった先輩3人が過去にいたとはいえ、今は6人でそんな危険を背負って街を守ってる」
千明がそう言い終えて、椅子から立ち上がる。
「今日まで埼玉県の一部の街を守ってくれてありがとう。市民としてここでお礼を言うわ」
千明が佳代子と時雨にドレッドに一礼する。
三人は驚き、そしてそれぞれ照れているのか戸惑う。
「うむ! 今の千明は婉容だな。朝を迎えるための赤い雨の夜を守り続けた天文部として嬉しく思う」
佳代子がそう言って、嬉しそうな表情になる。
婉容とは婉やかで美しい姿―――言動が落ち着いていて好ましい感じを与える美しい女性の姿である。
千明がその言葉に照れる。
「婉容だなんて―――そんな持ち上げなくていいわよ。でも6人でも被害はあるっていうの考えると魂喰らいの探知を持っているドレッド君と時雨だけじゃ厳しいのかなあ」
千明が普段の落ち着いた表情に戻り、メンバーに話す。




