第八十話
真城が思い出したかのように素子を見る。
「そういや素子。さっき言いかけた新入りって誰っすか?」
「その前にお腹へったじぇ! 深夜の夜食で食べる焼きそばやカレーうどんは最高だけど、今は真城も好きなラーメン食べたいじぇ!」
「お前ねぇ……レガシーウエポンの精神力より毎度腹が減るのはなんでだよ? それに俺はラーメンばかり主食じゃねぇから撤回しとけっすよ」
「チャーハンと餃子もセットで食べたいじぇ。真城、何か食わせろじぇ!」
「はぁ、わーたっすよ。ほれ、赤い雨が降る前に事前にコンビニで買ってたチャーシューおにぎりやるっすよ」
「さっすが真城! 話がわかるじぇ!」
素子がお腹をさすると真城がショルダーバッグからおにぎりを取り出す。
チャーシューおにぎりを受け取った素子がチャーシューおにぎりを袋から取り出して、モグモグと食べる。
「冷めてるじぇ……真城のレガシーウエポンの四属性の内の炎の気を放出する遠距離攻撃のアレでチャーシューおにぎり暖かくしてほしいじぇ! 真城も遠距離攻撃出来るんだから援護してほしかったじぇ」
「アホっすね。あれはチャーシューおにぎりをそんな電子レンジよりも温めるものじゃねーっすよ。それに威力も接近戦の殴る攻撃に比べれば微々たる威力だし―――拳で殴らないと本来の威力が出ないから動きとめるだけっすよ」
真城が突っ込み、ショルダーバッグから焼きそばパンを取り出す。
「あー! 焼きそばパンあるならそっちにしてほしかったじぇ! 何で言わなかったんだじぇ? 追加のお代わりを要求するじぇ! 代金後払いだじぇ!」
「飯テロ強盗かよ。ってか例の心理の女子大生の話してほしいっすね。俺のスマホは今は残量バッテリーヤバいからコミュニティアプリ起動できないんっすよ」
真城がそう言って、焼きそばパンを食べ始める。
三人が駅にむかって、無人の地帯を歩く間―――。
金辺が新入りの話題に興味があるのか歩きながら話す。
「そいつの名前は?」
「埼玉限定の本格チャーシューおにぎり、温めるとおいしさ二倍の期間限定のおにぎりだじぇ! 税込み160円だじぇ!」
「違う、そうじゃない。新入りの名前だ」
金辺が素子に突っ込み。
素子がチャーシューおにぎり片手にスマホをいじる。
「教育学部の山本千明っていうウチの大学の二年生だじぇ!」
素子が言い終えて、スマホの新着メッセージを確認する。
―――山本千明。
その言葉に金辺が足を止める。
「あいつか」
金辺がそう言って、複雑な表情になる。
適性があったとは言え、命に関わるやもしれない自分たちが追っている事件に身近な人を巻き込んだ。
その罪悪感もあったのか考え込む。
真城が手前に進んで金辺に振り向く。
「金辺先輩。どうしたんっすか? そいつと知り合いでも?」
真城がそういうと金辺が頷く。
素子がチャーシューおにぎりを食べ終わり、左右あるスカートポケットの空いている部分に袋のごみをねじり込む。
「歩きながら説明する」
金辺がそう言って、歩行を再開する。
真城と素子も金辺の手前で話し込む。
「千明は同じバイト先の同級生だ」
金辺が手短に説明する。
「そりゃあまた災難っすね。ってか俺らの大学にしかレガシーウエポンの適正者がいないっても変な話っすけどね」
真城がそう答え、人のある道に二人と一緒に混ざる。
深夜とはいえ少数の人の影もあり、横断歩道を待つ。
「成り行きなら仕方がない。だが、入部を今からでも取りやめることも出来る」
金辺がそう答え、素子が金辺の隣にならんで話す。
「辞めるように説得させることはできるじぇ。レガシーウエポン発動方法も暗示で記憶と共に出し方を封じれば平穏な生活に戻れるじぇ」
「そいつが正義感強ければ辞めないと俺は思うっすけどね。金辺先輩―――実際のところ千明先輩ってのは辞めると思うっすか?」
真城がそう軽く尋ねると金辺が青になった信号を見て―――。
「あいつは辞めない。絶対に!」
そう言って、三人と一緒に駅まで向かう。




