第七十話
―――駅からだいぶ離れた場所。
工場がある土地の中でドレッドたちが工場裏に侵入する。
「凄い身体能力ね。だけど不法侵入なんだけど―――マズいんじゃない?」
千明がそう言うとドレッドが軽々とセメントの壁を跳躍する。
「工場員が無気力病になるよりはマシと考えよ。カメラにも我らの姿は映らないし、見つかっても赤い眼の時はぼやけるので実際は目撃者も服装や情報が曖昧で忘れるようにも出来ている」
そう言った佳代子がドレッドに続く形で跳躍する。
そのまま佳代子と同じように高い壁を飛び越えていく。
「全く危ない橋をドンドン渡るものね。銃刀法違反に不法侵入―――無事に卒業できるか色んな意味で怖くなったわよ」
千明がそう言って、跳躍する。
「うわっ! 凄い飛べる! アメコミのスーパーヒーローみたいに軽く飛べるわね。これもレガシーウエポンとかの付属の能力かー!」
千明が驚きつつ、空中での夜景を楽しむ。
風の切れるような音を耳に残して―――冷たい夜のコンクリートの地面に着地する。
千明はそのまま壁を越えて、工場内の敷地に着地する。
最後に時雨も着地して、四人が工場内の裏の目立たない場所で周りを見る。
「ドレッド。魂喰らいはここに召喚されるのか?」
佳代子がドレッドに聞くとドレッドが頷く。
「ああ、間違いない。そろそろレガシーウエポンを出しておけ。すぐに戦闘に入るかもしれない」
ドレッドがそう答えると―――。
後方にいる千明が隣の時雨に質問する。
「そういやレガシーウエポンってのは使える人とか適正とかあるわけ?」
「チアキ。儀式のときに説明していなかったか?」
ドレッドの言葉に千明が思い出す。
「あー、あん時はテンパってて忘れてた。おさらいお願い」
「わかったわ。レガシーウエポンの適正者年齢の18歳から22歳の男女なの。それを過ぎるとレガシーウエポンも能力も無くなってしまうわ。そうなると魂喰らいに狙われても抵抗するすべがないの」
時雨が千明に講義をする教授のようにそう説明する。
「その魂喰らいって奴らもなんで突然現れたのかわからないんだけど?」
千明の言葉に前にいる佳代子が背を向けて、答える。
「魂喰らいとはレガシーウエポンの適性年齢のある人間を無差別に襲い、無気力病にさせるのだ」
佳代子の言葉に時雨が補足するように千明に話す。
「うん、そしてそれ以外を魂の大事な部分をその人から奪って消し去ってしまうの。無気力病になるのは魂の大事な箇所が死なない程度に奪われているって、ドレッド君から聞いたんだ」
「オレ達がなぜ発生したのか分からないこの赤い雨の降った日から始まっている事件に―――適正として選ばれたレガシーウエポンの起動者たちで事件を解決するために先輩の代を除けば一年前の六月から真相を追っている」
言い終えたドレッドの険しい顔に千明が考え込む。
「警察に相談して協力してもらうとかは出来ないわけ? そっちの方が危険を冒さずに人手も増えるし、ベターでしょ?」
千明がそう答えると時雨が暗い顔になる。
「千明ちゃんの言うようにそうしたいんだけど、過去に先輩たちの話では信じてもらえずに証拠もぼやけて見えないから協力以前の問題だったんだ」
「ああ、そうか―――赤い眼の能力が裏目に出たと―――その魂喰らいには結局レガシーウエポンでしか対抗できそうもないしね」
千明が納得して、半目になる。
「うむ、そして魂喰らいをレガシーウエポンで彼らも知らぬ次元の世界で封印し―――戻しているらしい」
佳代子がそう話し、辺りを警戒する。
周りには人がいなく工場の電灯もシャッターも締まっている。
「次元の世界? そいつら別の世界からここに来ているの?」
「うん、レガシーウエポンは魂喰らいを一部の彼らの言う冥界という場所に送られるらしいよ。そこにはどこかも私達は知らないけれど、二度と他の世界に出てこれないらしいので封印するんだって―――」
時雨が誰かに教えられていたのか嬉々として話す。
佳代子も真顔でサムズアップする。
「これからも我らを頼りにしてほしい」
「あのねぇ……危機感……」
呆れ顔の千明が言いかけた時に―――。
「魂喰らいの魔方陣が現れた。奴らが出てくるぞ」
ドレッドの冷静な言葉で千明以外のメンバーが気持ちを切り替える。




