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第六十三話

 ポストを確認せずに階段を登る。

 二階の部屋のドアの鍵を開ける。

 カバンをベッドの下の机に置き。

 手洗いとうがいを済ませる。


(さてと、母さんに電話しないとね。お父さん仕事だろうし、この時間ならまだ起きてるだろうしね)


 千明がスマホで電話をかける。


「はい、もしもし―――千明、こんな時間にどうしたの? 仕送りならまだ先だけど?」


 久しぶりに聞く母の声といつもの調子に千明は安堵する。


「母さん。今日ちょっと大事な話があってね」


 千明がスマホ片手にベッドに腰を下ろして、話す。


「マルチとか詐欺にあったの?」


 母親の心配そうな声に千明がバッサリと答える。


「いや違うわよ。まず無いから、そんなのは」


 千明がスマホの電話越しに壁に向かって左手を左右に振る。


「それじゃあ何? お金の貸し借りは友情を壊すわよ?」


「いや1円も借りてないし―――借金も銀行ローンも奨学金も使ってないから論外すぎるわよ」


 千明が脱力して、壁際のベッドに座り込む。


「じゃあ何なの? お母さんこれから主婦のみんなと飲みに行くんだけど―――」


「私今年からサークル入ることにしたんだ。もしかしたら命がけかもしれない」


 千明が少し間をおいて、ゆっくりと真剣な声で話す。


「命がけ? あんたが命がけねぇ、警察呼ぶような事件に巻き込まれるの?」


「うん、それもあるけど赤い雨って知っている?」


 千明が話すとスマホ越しの母の声が変わる。


「無気力病とかニュースで取り上げられてるアレでしょ? そんな危ない自警団みたいなサークルにでも入るの?」


(母さん、鋭いなぁ。まだどこ入るかいってないのに―――そういうサークルに入るかもしれないって察してる)


「千明? どうしたの? 危ない部なら首突っ込むの止めなさいよね。お父さんに似て正義感強いのは良いけど―――もっと楽に生きなさいよね。命ってのは失ったら終わりの取り返しのつかないことになるかもしれないのよ?」


 母親の心配そうな言葉が千明の耳に届く。


(ここで天文部の二人の言ってたことを母さんに話しても理解してもらえないだろうし、危険に巻き込む形になるわね)


 千明が少し黙り込み。

 それをスマホ越しに察したのか―――。


「あんたが何考えて入部するか、お母さん解らないけど―――やるなら上手くやんなさいよ?」


 母親の理解のある言葉で千明が少しギクリとする


「―――お母さん」


「ん?」


「―――ありがとう。ちゃんと無事に卒業して就職するから心配しないで今日は飲んでいってね」


 千明が日常から別れるかもしれない決意を胸に母に返答する。


「二年生の夏も来てない時期だけど、就活に必要な経費があれば遠慮なく言うのよ? それじゃあ―――夏の運転免許証の教習所の費用もあるから、来月から仕送りちょっと増やしておくわね」


「あいよー。じゃあね」


「変な男に捕まるなよ」


「解ってるって―――母さんと同じで男見る目はあるからさ」


「あほ、切るわよ」


「どーぞどーぞ」


 二人のやり取りが終わって、千明がスマホの通話ボタンを切る。


(決心がついたわね。母さんにある意味で遺言を送ったようなもんか―――警察が来てもサークルの話を出したし、あたしに危険が迫って事故になっても調査してくれるはずね)


 千明がスマホをベッドと対面する位置のパソコンのある机に置く。




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