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第五十七話


 二人の委員会の男子学生が書類を整理しながら、スマホで他のメンバーに連絡を入れる。

 書類とデスクトップパソコンにノートパソコンがいくつかの机に置かれた会社じみた空気で―――。


「はい、コーヒー。机の書類どかすからまだ手に取らないでね」


 北沢がそう言って、千明の席に紙コップに注がれたコーヒーをホルダーカップで置く。


「あ、どうもありがとうございます。味の美味しそうなコーヒーですね」


「この部屋の給水ジュース機のコーヒーだよ。レモンジュースもあるけど、今はそっちのジュース給水機は空だからさ」


 北沢がそう言って、自分のコーヒーを机に置いて書類を束ねる。

 一通り整理が終わった後で北沢が対面する席に座る。


「天文部についてだっけ? 山本さんだっけ? どこのサークル所属?」


 北沢がコーヒーを飲んで問いかける。


「サークルには入っていなくて、天文部に入部するかどうか決めかねているんです」


「ただの入部ならわざわざサークル自治委員会に来なくても天文部に見学で行けばいいじゃない?」


「それはそうですけど、天文部に入るには入部テストとかあるとか聞いたので」


 千明は適性のあるものを入部テストに置き換えて、北沢に話した。

 北沢がコーヒーを飲むのを止める。


「入部テスト? 書類に無いわね。設立したばかりのサークルなのにそんなことをやるメリットあるの?」


「私もそれは思います。入部テストに入った人はどんな人たちなのかも気になって―――」


 そう言って、千明がコーヒーを飲む。

 北沢が手の空いた委員会の男子大学生を呼ぶ。


「天文部の書類出してくれない? PDFのデータこっちのノートPCに添付ファイルで送るでもいいから」


「はい」


 北沢の指示で返事をした男子大学生がノートパソコンで北沢の手前にあるPCにデータを送る。

 送られたデータを北沢が目で軽くモニターを流し見する。


「天文部に入部届を出した学生は過去にそれなりにいるけど、一週間以内に退部届を出してるわね」


「そうですか、辞めた理由とか分かりますか?」


「それは一個人の気持ちとか意見だからサークル自治委員会の私らには追求できないわね」


「……」


「ただ、まぁ、入部テストは確かにその話とこのデータならありそうにも思えるわね」


 北沢がそう言って、パソコンから千明に視線を変える。


「逆に私が聞きたいほどよ。天文部は夜に星座見たりするイメージあるのに一体何のテストなんだか―――設立したばかりで部費もまだ少ないしね」


 北沢がそう言って、パソコンを操作する。


「北沢さん、天文部はいつから活動しているんですか? 赤い雨の降った日から活動しているんでしょうか?」


 ―――赤い雨。

 その千明の言葉に北沢が眼鏡を外す。

 その目は綺麗だった。


「夜に赤い雨が降ったらどのサークルも活動は禁止して、集団で帰宅するように注意勧告出してるわよ。バスが最終運行時間を超えた場合は集団で外出および建物で止むまで待つこと―――大学内で降った場合はそう決めているわ」


 北沢がそう言って、眼鏡拭きを出す。


「関係性はないけど、天文部は一応活動はしていることになるわね。最初は二人ほどの研究会だったけど、去年の十月ごろに人数がサークル認可人数を越えたので申請書を審議してサークルとして設立されだけよ」


 そう言って、北沢が眼鏡を拭き終える。


「それに入部テスト? 文科系サークルでそんなの将棋部以外で聞いたことなわね。怪我防止のために空手部や剣道部みたいなスポーツ系のサークルは有段者しか入部させないしね」


 千明が黙って、北沢の話を聞く。


「ああ、将棋部は将棋連盟の段の免状がないと入部出来ないとかは聞いてるけど、ウチの大学将棋推薦がないから―――差別化ということで将棋囲碁チェスに麻雀のよろずサークルのテーブルゲーム部が別にあるわね。初心者や級段者は将棋したいならそこ行けってことで書類通ってたわね。まぁ、将棋部は学生の将棋大会でBリーグに入ってるから実績あるし、部費はそれなりに出してるけどね」


 北沢が言い終えて、眼鏡をかける。


(脱線したとは言え、将棋の話なっが!)


 千明が気圧されたかのように黙り込む。


「天文部はそんな将棋部と比べてあんまり活動らしい活動はしてないけど、文化祭で星の星座の写真とか学術的な視点での記事とか書いて、来場者向けに教室借りて張ってるわね。まぁ、出し物してない駄弁り場のすぐに潰れるサークルよりはマシだと思って―――書類越しに認可してるけどね」




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