第四十八話
「ええっと、天文部に興味はない?」
時雨が僅かな緊張の間に耐えきれないのか千明に問いかける。
「サークル内の暗そうな雰囲気だったり、チャラそうな彼氏候補とか興味ないからね」
「え? ええっと―――」
千明の返しに時雨があたふたとする。
佳代子が時雨の代わりに答える。
「いや、別に体目当てのヤリサーとかいうやつじゃない」
「あっそ、別に私はそんな直結女じゃないんだから―――入部したとしても調子乗らないから安心しなさい」
「うむ、ヤリサーというのは冗談だ」
「でしょうね。ってか、要領を得ない会話そろそろやめなさいよ。それはそれでムカつくし、本題に入ってよね?」
佳代子と千明のやり取りにあたふたとしている時雨が割って入る。
「ええっと、天文部はね。赤い雨の日に治安維持の特別活動をしているの。学院長には表向きにはサークル活動として許可を取っているけど―――」
時雨の言葉に千明が頬杖をついたまま顔を向ける。
「治安維持? 物騒な言葉が出たわね」
千明がそう言うと時雨がドギマギしながら話を続ける。
「千明ちゃんは私に二回記憶を消す魔法みたいなものをかけてるの」
「は? 何それ? 記憶を消すなんてそんなご都合主義なこと天文部入れば出来るわけ? 冗談でしょ?」
千明がハッと笑って、椅子の背に体重を背に乗せる。
「ここ最近赤い雨の降る日に抜けていたあいまいな記憶がないか?」
佳代子の言葉に千明が黙り―――。
「あるわね。でもあたしが喋ったわけでもないのに何で知ってるの? そもそも天文部にはそう言うことも含めた証拠でもあるの?」
千明が半信半疑で時雨たちを交互に見る。
「時雨。千明の暗示を解いてやれないか? 百の言葉よりも一の証拠であろう?」
佳代子が言うと時雨が頷く。
千明が興味深そうに時雨を真っ直ぐ見る。
「へぇ、面白いじゃない? 記憶が消せるなら戻せるってこと? やって見なさいよ」
千明が意地悪そうな笑みで時雨を見る。
「―――暗示をかけた記憶を一度返すね。千明ちゃんの襲われた過程での嫌な部分は省くから―――」
時雨がそう呟き―――。
彼女の頭上に半透明の王冠の紋章が浮かぶ。
「えっ?」
千明が王冠に驚き―――。
目線を戻すと赤い目に変わる時雨と目があう。
その目に千明がビクッと怯える。
(なんて恐ろしい目の色なの―――まるで悪魔や鬼のようだわ)
時雨が気にせずに赤い目になったまま話しかける。
「―――暗示を解くね」
時雨の言葉と共に―――。
時雨の赤い目が少し黒く濁る。




