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第四十六話

 次の日になり、昼の二限終了後の大学の講義の教室―――。

 千明が教材を閉まって、椅子の上で黒板をじっと眺める。


(昨日の事思い出してみよう。……なんであたし途切れ途切れに覚えているんだろう? あれは一体……一度だけじゃなかった気がする)


 千明が考え込み、離れていく学生たちをチラリと見る。


(もしかしてあたしと同じ大学の奴が何か関係あるとか?)


 千明が三限の講義に早めに来たおにぎりや唐揚げにパンなどを持っている生徒達を見て―――。


(でも、それよりも体に響くあの聞きなれたあの男の声はなんなの? ああー、わからーん!)


 千明が断片的な記憶を頼りに思い出すも―――。

 諦めて椅子から立ち上がる。


(はあ、五限の講義まで図書館でレポートの書籍探しで時間潰すか―――図書館の一階にパソコンあるし、そこでレポート書こうっと)


 そのまま千明が三号棟を出ていく。

 それを近くの十号棟から見ていた二人の女性が千明を追って行く。

 オーバーブリッジを渡る千明と背後からくる二人の女子大生。

 気にすることもなく千明が図書館がある階段を下りていく。



 千明が図書館の入り口を入った後に―――。


「山本さん。ちょっと今良いかな?」


 千明の名字が呼ばれて、図書館の入場口の改札を抜けたばかりの位置で振り返る。

 亜麻色の髪のラフな外ハネのショートヘアーの女子大生が千明に声を掛けていたようだ。


「ええっと、どこの学部の人かな? 彰美の友達の友達とか?」


 千明が面識がないのかオーソドックスな丸目の黒い瞳の女子大生に話す。

 隣にいるもう一人の黒髪ロングのウェーブヘアーの女子大生が代わりに答える。


「我らは初対面だが、ここでは人が多い。二階の机の多い場所に行かぬか?」


「あ、はぁ、別に良いですけど? 自己紹介くらいしては?」


 千明がやや押され気味だが、歩きながら言葉を返す。


「うむ。私は岡橋佳代子(おかばしかよこ)だ。こちらが―――大藪時雨(おおやぶしぐれ)


 佳代子と呼ばれた黒髪ロングのウェーブヘアーの女子大生が自己紹介をする。

 時雨と呼ばれた亜麻色の髪のラフな外ハネのショートヘアーの女子大生が頷く。


「初めまして、よろしくね」


「あ、どうも」


 千明がぎこちなく頷くとスマホのコミュニティでメッセージが届く。

 彰美から『三つある学食の内のバイキングの学食で吉澤と一緒に食べまくろう企画!』という件名のメッセージだった。


「あいつ、よう飯に誘うなぁ。色気より食い気と悟ってんじゃないでしょねぇ? 女子大生は法律的にも先手が取れる婚活チャンスの瀬戸際ポイントだっつーのに―――」


 千明がスマホを流し見て、呆れる。

 時雨と呼ばれた女子大生が遠慮がちに話しかける。


「あの、お邪魔だったかな? 予定あるなら、すぐに終わるんだけど」


「ああ、別に良いですよ。エレベーター混んでるし、階段上がりながら話します?」


 千明がそう答えると時雨が頷く。


「うむ。それでは天文部のことについて教えねばな」


 佳代子と呼ばれた女子大生が千明に話しかける。


「えっ? この時期にサークル勧誘ですか? 天文部の? なぜに初対面のあたしに?」


「そ、その辺は私と佳代子ちゃんとで話すから―――赤い雨に関係することなの」


 ―――赤い雨。

 その時雨の何気ない言葉に千明がピクリと反応する。


「わかった―――じゃあ、二階で話そうか―――」


 千明が階段を上がり終えて、そう告げる。





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