第四十四話
赤い雨が降る中で―――。
炎が雨で消えずに狼の黒い獣が苦しみながら燃えカスになっていく。
炎の剣をもつ少女が千明を抱きかかえる。
「魂が半分食べかけられる寸前でなんとか生きている。レガシーウエポンの力で意識と服を治さないと―――」
女子大生の少女がそう呟き―――。
彼女の頭上から赤い線の王冠が浮かび上がる。
少女が千明の体に触れて、意識を集中させる。
千明の服が元に戻っていき―――。
赤い雨に濡れて、直った服越しから下着のラインが映る。
目を瞑った千明が涙の跡と口から吐き出された黒い液体の後を残す。
女子大生の少女が千明をアパートの屋根のある場所にお姫様抱っこで運ぶ。
「目が覚めたら暗示をかけなければいけないわ。佳代子に連絡を入れなくては―――」
女子大生の少女が屋根のあるアパートの階段でスマホを起動する。
赤い雨に濡れた綺麗なボディラインと下着の跡が映る倒れ込んだ千明を他所に―――。
女子大生の少女がスマホで佳代子と話を始める。
千明の意識は失ったままだった。
※
千明が目を覚ますと―――。
目の前にはアパートではなく、城の王室の景色が映る。
「ここは? 私、さっき狼に襲われて!?」
千明が気づいて、体をあちこち触る。
何も外傷もなく、服も元のままである。
「一体ここは? 私どうなっちゃたの?」
千明が人もいない王室の周りを見る。
西洋の装飾がなされている王室で一人玉座に座る者がいる。
「―――誰?」
千明が玉座の人の姿をしたシュルエットを見る。
『ストッパーよ。目が覚めていない中で―――我が力なくば魂を半分奪われていたな』
人型のシュルエットの方向から言葉が聞こえる。
「その声、何度か聞いたけど―――」
千明が驚きつつ、玉座のシュルエットを見る。
『我は冥界の王なり―――』
声と共にシュルエットが段々と映っていく。
上着は袖の無い白い着物に下は巫女装束の赤い色の袴を履いている。
おかっぱで目がタレ目の細い眼をした胸の大きな女性の姿だった。
「女性? 男の声だったのに?」
千明が違和感を覚える。
若い女性の髪に金色の王冠が被られている。
『ストッパーよ。そのレガシーウエポン―――他の物ならそのまま武器になるがストッパーである貴殿は違う』
女性が男の声のまま話し続ける。
「何を訳の分からないことを言っているの? 私は死んだの? ここはどこなのよ?」
千明が言葉の意味も解らずに女性に話す。
女性は気にせずに千明に淡々と告げていく。
『仲間達との絆により―――貴殿のレガシーウエポンはより強力なものになる。その時が来たら王冠が輝くであろう』
「王冠? レガシーウエポン? 何をさっきから訳の分からないこと」
千明が女性に問いかける。
『13の人々が王冠の力を上げ―――レガシーウエポンを強化してくれる』
女性がそう告げると周りの景色がぼやけていく。
千明がぼやける視界で怯えいていく。
「私、死ぬの? ここは地獄なの?」
黒くなる視界の中で男の声がエコーで響く。
『ストッパーよ。今は再び記憶が消されるが、しかるべき時にまた我を思い出すであろう。その時まで―――しばし待たれよ』
その言葉と共に千明の目が覚める。
千明の目に映ったのは亜麻色の髪の女子大生だった。
「目が覚めたみたいね。また貴方なのね。連続で襲われるなんて……あいつらが一度助けた相手を再び襲うことはないのだけれど―――」
黒のハイネックに紫のロングスカートにガジェットブーツの服装のその女性が―――。
「えっ? 貴方は誰ですか?」
千明が質問する前に―――。
「魂喰らいの襲われた記憶を消すわね。偽りの記憶を作るけど、貴方に無事な朝が訪れるわ」
赤い目の少女の瞳に千明が何か大事なことを忘れるように―――。
そのまま人形のようにアパートの階段を上っていく。
「これで大丈夫か―――」
炎の剣を宙に浮かせたラフな外ハネのショートヘアーの女子大生が立ちあがる。




