第四十一話
(襲われたものはその時の記憶を無くしている。だが、獣のような爪痕が襲われた被害者の周りの器物にあったのは事実だ)
笹塚刑事が取り換えられた監視カメラを見る。
(見えない獣のような生物に人が襲われ、無気力病―――記憶を無くしてその後に普通に生活している)
笹塚刑事がガムを噛み続ける。
(襲われるものにしか見えない幻覚のような獣―――それに武器を振るうかのように表れた謎の集団)
ガムを銀紙に吐いて、包み込み―――。
(一年近く捜査して、しっぽすら掴めないこの事件。犯人は魔術師か? いや、そんな非現実なことが赤い雨の中で―――)
包まれた銀紙のガムを子袋に入れる。
(怪奇な事件だが、追って行かねば犠牲者がまた生まれる。何とかしなければな―――)
笹塚刑事が自販機と監視カメラの取り換えを済ました業者と警官を見る。
(まるで悪夢のような殺人事件とはいかないまでも異常な赤い雨と共に出る。歴史上においても他を見ない―――)
笹塚刑事がパトカーに乗る。
「まるで悪魔の儀式か、神話のような事件だな」
そう呟いて、車に乗る。
運転席の警官が笹塚刑事の一言に反応する。
「笹塚刑事。何か儀式だとか神話だとか言ってませんでした?」
「気にするな。署に急げ―――昨日の事件現場に来てみたが、無駄足だった」
笹塚刑事がそう言って、他の警官と共にパトカーが発進する。
「後列のパトカーは覆面でも良いから、パトロールを通常どうり行え、今日は赤い雨の降る日だ。いつもより多めにな」
「はい、本部からもその要請は出ています。笹塚刑事は書類の仕事お願いします」
運転する警官の言葉に笹塚刑事は少し間を置いて―――。
「地味なのも仕事の内だが、昼の非番の時は他の駅にある行きつけのバーにでも行って飲みたいものだな」
そう冗談交じりに呟き。
窓に打たれる血液のように降る赤い雨を見る。
運転席の警官はその言葉に笑いながら―――。
「飲みすぎはダメですよ?」
っと切り返す。
「解っている。雨の降らない日は昼くらい飲んでもバチは当たらんだろう。それとも―――」
笹塚刑事が窓を見ながら移り変わる景色を眺める。
「バチが当たるから悪魔とやらが―――こんな赤い雨やら雲のように掴むことも出来ない迷宮入り確定の無気力病事件を起こすのかね?」
言い終えて、前を見る。
運転席の警官は一連のこの年単位で続く怪事件を思い返して―――。
「だとしたら迷惑なことですね」
「まったくだ―――」
二人がやり取りを終えて、署に向かってパトカーが進んでいく。
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