第三十五話
(しっかし、あの大男の頼まれた伝言を渡す代わりに―――貰った千円を飲食店で綺麗に使っちゃたけど―――)
千明が窓の景色を見る。
(あの大男の『媒体に完全に適応出来た。約束の時は近い』って伝言―――あの儀式がどうこう言ってたさっきの少女と関係あるのかしら?)
千明がそんなことを思い、暗くなった窓越しの景色をぼんやりと見る。
(そういや私の名前を知っていたわね。アルバイト先のファミレスではネームプレートはないわ)
畑と民家やアパートにマンションの並ぶ景色に映り変わり―――。
(なんで名前を知っているのか、あの伝言の意味と不思議な少女のセリフの中にあったストッパーとかいう単語)
千明があと一駅のところで各駅停車してあまり乗客が減らない中―――。
(ヤバい箸渡るどころか―――深入りしたくないから追求しない方が良いけど、記憶の片隅には残しておこう)
千明がそう言い聞かせ、気持ちを切り替える。
スマホを見ると時間は午後十時になっていた。
(それはそれとして―――流石に演劇部の連中も今日はなりきり役者の車両横断は休みか―――)
スマホを見て、千明がクスリと笑う。
やがて目的地の千明の住んでいるアパートのある駅に着き。
ガラガラの車両で乗客が千明と共に降りて行った。
千明が降りた時に駅内で雨が降り始める。
「あっ―――」
千明が駅のホームでその雨に言葉を漏らす。
赤い雨であった。
※
駅から出ると赤い雨は止むことをせずに振り続ける。
千明が折り畳み傘をバッグから取り出す。
駅前の大学行きのバス停ももうバスが来ない時間。
警察の車のパトロール音が響く中で―――。
千明がアパートに向かって、駅内で栄えている店などの場所から離れる。
「そうだ、この前の一年生の学生の自販機のあった場所に寄ってみようかな」
千明が帰り道を変えようと思った矢先に―――。
その自販機に何かあったか自分自身に確認するために寄ることにした。
駅と喫茶店の間の道路を通れば遠回りだが建物の少ない畑道を行かずに―――。
気分を変えて帰る別の帰り道を使って、傘をさして歩いていく。
血液のように赤い水たまりを靴で踏みながら、赤い雨の中をアパートまで進む。
「この赤い雨の道も慣れてはいるけど、なんか怖いわねぇ」
千明がぼそりと誰に言う訳でもなく。
人の少なくなった道を歩く。
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