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第三十四話

(ここ最近思い出せない記憶があったわ。この駅で過去に彰美と吉澤さんの会話の後を思い出せる。けれど―――)


 千明が考え込み。

 電車が駅にやってくる。


(アパートに戻って赤い雨が降ったことは思い出せるのに―――)


 電車が停車して、ドアが開く。

 千明が立ち上がる。


(自販機であたしの通う大学の一年生が落としたお金を拾って、お礼を言われた後―――)


 千明が電車に向かうとして―――。


(その後が何故かぽっかりと思い出せないわ。家に帰ったことは確かだけど―――帰るまでの一部の移動時間が思い出せないわ)


 その後に千明のお腹がグウッと音を立てる。


「それはそれとして、あたしって本当に高燃費ね。次の電車待つか―――」


 千明が電車に向かわずに進路を変える。

 駅ホーム内にある立ち食いうどんと蕎麦屋の出入り口に入る。

 食堂の中で券売機で千円札を入れる。

 表示された赤ランプの中の冷やし山菜そばとトッピングの海老天の券を買い。

 お釣りがぴったりなのでそのまま機械に出された券を取って―――。

 店主に見せて、立ち食いのテーブルの上で頬杖をつく。


(いくら考えても決定的となる記憶がないんじゃ不毛よね)


 いくつかの空いたスペースでサラリーマンや大学生らしき客が食べている中で―――。

 千明が店のコップを持って、給水機から水を注ぐ。

 冷えた水を飲んで山菜そばを店主から受け取る。

 割り箸をふたつに割る。

 片方だけ割り箸が上手く割れずに使えはするが不格好な形になる。


(うわっ、なーんか縁起悪いわね。この後に最悪なことが起こらなきゃいいけど―――)


 千明が海老天の乗った冷やし山菜そばを汁につけながら食べ始める。


(まぁ、命に関わるなんてことには慎重に対応すれば大丈夫でしょ)


 千明が汁に付けた海老天を冷えた山菜そばと一緒に食べる。


(んー、美味しい! ファミレスのまかない飯と違って、ゆっくりと味わえるこの時間―――たまんないわね)


 千明が味を楽しみながら冷やし山菜そばを最後まで味わう。

 食べ終えた後に水を飲み終えて、店主のテーブルに空のどんぶりを帰す。

 そのまま店を出ると―――。

 良いタイミングで電車が停止して、ドアを開く。


(さーて、すっかり夜になっちゃたけど帰りますかね)


 千明がそのまま電車に乗る。

 電車がアナウンスと共にドアが閉まり―――。

 人が半分ほどしか乗っていない車両の中で千明が電車に揺れる。





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