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第三十一話

 真城の連れの堂本が帰ったばかり頃。

 ファミレスの店長が入り口に閉店の看板を付ける。

 ウエイトレス服の千明が不機嫌そうな高貴な女性客に話す。


「お客様、そろそろ閉店なのでお勘定お願いします」


「あら? もうそんな時間なの? 香りを楽しむために紅茶にシロップと蜂蜜を入れたのに残念だわ」


 謎の常連客がテーブルから立ち上がる。

 テーブルのメニューの紙を取って、千明とレジに向かう。

 金辺が女性客の食べかけのメニューをトレーに載せていく。

 レジに立つ千明が会計を今夜最後の客に伝える。


「合計で4320円になります」


 千明の言葉に女性が一万円札を渡す。


「お釣りは要らないわ」


 その女性客の言葉に千明が困り顔で一万円札を貰う。


「お釣りの5680円でーす♪」


 千明が気にせずに会計を済ますも―――。


「要らないわ。そんなもの―――」


 常連客の女性が金髪の髪を片手で退屈そうに弄る。


(そんなものって―――マネーは人生(ライフ)で大切やろうが! アンタは出銭はゲンが悪いとかいうギャンブラーかいっ!)


 千明が心の中で怒りとツッコミをしながら、業務用スマイルで対応する。


「お客様。当店では後からお釣りのクレームが来ても渡せません。今後の来店の為にもお釣りを受け取ってはくれないでしょうか?」


 千明の抑え気味の声に女性が不愛想にハイヒールをカツンッと鳴らす。


「これからのことに比べれば安い物よ。清算はそれで済ますし、別ということにしておくわ」


 意味深な言葉に伏せ目の謎の金髪内巻きワンカールの常連客がそのまま店を出ていく。


「お客様。確かにお伝えしましたよー。赤い雨の日には早めに帰ってくださいね」


「―――それは貴方にも言えることでしょ?」


 女性の緑の瞳から何かを訴えるように言葉と共に視線を送る。


「また来るわ。貴方が一カ月間の無気力病になっても自業自得ってことでね。フフッ♪」


 言い終えて、わがままボディの常連客が微笑して去っていく。

 皿を片付けた金辺がその言葉を聞いて、少し険しい顔になる。


「まさか、な」


 金辺がボソリと呟いて、厨房に食器を全て運び終える。


「まったく現金でお釣りはいらないってバブリーなやり方するなら、電子マネーカードにでも現金つぎ込んでレジ払いなさいよね」


 千明がさきほどの謎の常連客への愚痴をこぼす。

 客が誰もいなくなったファミレスで―――。

 店長が入り口から店内に入り―――。


「陽美ちゃんと千明ちゃんはもう上がって良いよ。後は厨房班と皿洗いだけだし、今日もアルバイトお疲れさま」


 そう言って、外で一服した店長が入り口のドアを鍵で閉める。


「店長。また謎の常連客から例の諭吉様です」


 千明がガッカリしたのか呆れているのか微妙な表情でファミレスの店長に話す。


「今月の給料を一万円分引いておくから、そのお金は千明ちゃんが貰っておけ。がっはっはっはっ!」


 店長が高笑いで返答する。


「いや先払いは雇用上問題あるから無理です。レジの鍵閉めておきますね」


 千明がいつものトーンで答えて、レジの鍵を閉める。


「店長。あの常連客って何者なんですかね?」


 千明が質問すると店長が髭を指で弄りながら話す。


「まあ、来てくるなら客は質を問わず、されど料理の素材は上質に、だ! 金払い良くて今回も黒字だよ」


 店長が愉快そうに話して、千明が呆れ顔でレジの鍵を店長に渡す。





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