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第二十九話

「まったく、人をこき使うものね。まぁ、復讐だから仕方ないけれど―――」


 ―――復讐。

 ファミレスの中では似つかわしくない言葉。

 真城が聞こえていたのか、金辺から渡されたメニューを食べながら聞き耳を立てる。

 千明が言葉にするのが嫌で渡された紙を女性のテーブルに置く。

 女性が紙を手に取って、文字を退屈そうに見る。


「なるほどね。メッセージありがとうね」


 女性がそう言って、アイスティーを上品そうに飲む。


「伝言は確かに届けました。それではごゆっくり―――」


 千明が業務用スマイルで下がろうとした時―――。

 アイスティーを二割ほど飲んだ女性がダルそうな流し目で誰に言う訳でもなく―――。


「不思議な匂い。嫌いな貴族の男の匂いがする―――どこかで覚えがあるような忌々しさ。まるであの憎き臣下達を殺すだけでなく、しつけてやりたいほどに―――」


 千明の背中をチラリと見て、そう呟き。

 唐揚げを箸で食べ始めた。

 真城はその言葉を聞き、考え込む。


(気のせいかな? 夜にばかり来るとは金辺さんから聞いていたが、あの女性はやっぱただの奇人か? 赤い雨には関係ないのかもな)


 真城が牛カルビハンバーガーを食べながら、金辺を見る。

 金辺は真城と目が合い、すぐに反らす。


(金辺さんでもマークしてたみたいだけど、確かな証拠も無いしな)


 真城が金辺から視線をずらす。


(食い終わったら伝言だけ伝えておくか―――というか俺もまだ実戦知らずの新人だしな)


 そう思い―――連れの男子大学生と食事をしながら雑談を始める。

 坊主頭の連れの男子大学生が野球の話をしている中で―――。

 真城は自分の代の高校野球の話を入れつつ、話し込む。



 ワイルドグランジの髪型の髭おやじの温和な表情のファミレス店長が閉店の準備を始める。

 会計のレジ前で真城が金辺に何か伝言を伝える。


時雨(しぐれ)先輩の話だとここか、もしくは俺らの大学のある場所らしいです」


 真城がレジで会計をする金辺にそう伝える。


「また降るのか?」


 金辺がそう返答して、真城にお釣りを渡す。


「今回はドレッドも時雨先輩も予知では間違いないらしいっすよ。二人が同じ時間を指定するのは素子先輩の話じゃ確実っすからね」


 真城がそう言って、連れの男子大学生が店の外で缶ジュースを飲む。


「わかった。ここにしばらくいる。降り始めたら―――」


 金辺がそう答えて、言い終える前に真城が頷く。


「俺も連れの堂本(どうもと)を家に帰したら、金辺先輩と別の場所でパトロールするっすよ」


「いや、お前は戦闘経験がまだ浅い。私と合流しろ」


 憂い顔の金辺の言葉に―――真城がいたたまれない表情で黙り込む。


「数カ月だから実質まだ目覚めたばかりだ。それにお前は接近戦用だ」


 金辺の言葉に真城が悔しそうに目を瞑る。

 そのまま無言でファミレスを出ていく。




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