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第二十七話

 千明が仕事場所から出て、ファミレスの出入り口まで歩いていく。


「いらっしゃいませ!」


 千明が業務用の笑顔を作り、来客に頭を下げる。

 客は一人で―――。


(あっ、今日もやっぱり来てたか―――)


 そう思った千明が笑顔のままテーブル席に着いた女性にオーダーを聞く。

 客は緑の瞳の伏せ目の女性。

 いつものピンクのニットを着て―――柄入りのタイツが特徴を示す。

 金髪の内巻きのワンカールの髪型の黒のハイヒールを履いている。

 千明が例の大男から伝言を頼まれた例の常連客であった。


「毎度いつもご来店ありがとうございます。ご注文は?」


 千明がオーダーの機械を取り出して、女性に注文を聞く。

 裕福そうなけだるげで不機嫌そうな表情で成人済みの女性が髪をかき上げる。


「いつものやつとアイスティーを一つ。それと唐揚げ定食」


 綺麗な女性が無愛想そうに注文する。


(いつものって何よー! クレーム来たら給料減るのアタシなんだから、ちゃんとメニューを言いなさいよ)


 千明が心の声で握りこぶしを掲げて叫ぶ映像を脳内で再生する。


「いつものですか? ええとー、あのー、ご注文は?」


 千明がやや威圧の笑顔で問いかける。

 プライドが高いのか女性が退屈そうにメニュー表を開いて、メニュー写真に指を差す。


「このモンブランとチョコレートパフェに出汁醤油バターのキノコ入りネギパスタのことよ。さっさとしなさい。出来ないのなら犬の様に跪いて許しを請うことね」


 年は23歳ほどだろか―――女性が緑の瞳の伏せ目でつまらなそうにそう話す。


「はーい♪ メニューはモンブランとチョコレートパフェに出汁醤油バターのキノコ入りネギパスタと唐揚げ定食にアイスティ―ですね? かしこまりましたー♪」


 千明が怒りを抑えつつ、営業用スマイルで可愛らしい声で返事をする。

 オーダーの機械にメニュー番号を入れて、さっさと厨房へ戻っていく。

 金辺がテーブルを拭きながら横目で女性を見る。

 高貴そうな巨乳のわがままボディの謎の常連客は視線を気にせずに―――。

 退屈そうに客が減ってきた時間帯でスマホを出すわけもなく、窓を見つめる。

 千明が厨房のスタッフにメニューを伝えた後に―――。


(あっ! そういや幽霊なのかどうか定かでない大男に伝言頼まれたんだっけ? 更衣室行って、紙出してこないと―――伝言内容が仕事のラッシュで忘れてたわ)


 千明が慌てて、店長にトイレに行くと言って更衣室に戻っていく。

 更衣室から紙を取り出し、戻ってきたころには―――。

 金辺が他の来客の対応に追われていた。

 来客の姿を見ると金辺が業務用スマイルからダルそうなジト目に変わる。


「なんできた?」


「金辺先輩、酷くないっすか? 俺は今は客っすよ?」


 金辺の知り合いなのか―――来客の年下の大学生らしき男が軽く笑顔で返す。

 男は黒のパーカーで赤色のフードが着いている。

 連れの友人らしき大学生はラフな服装をして、金辺のウエイトレス服をジッと見る。


真城(ましろ)。さっさと座って、さっさと帰れ」


 金辺がぶっきらぼうに男の名前を明かすように話す。


「そんなぁ。相変わらずぶっきらぼうっすね。友達連れてファミレスの肉の割引クーポン券を減らしに来ただけだって―――」


 真城(ましろ)と呼ばれたフートの下に青のTシャツを着た男がクーポン券を見せる。


「伝言という訳ではないのだろう?」


「そうっすね。でも赤い雨が降ったばかりで時雨(しぐれ)先輩が念のために今夜もこの地域を俺が調査しろってこと言われたっす」


 真城がそう言って、薄茶色のカーゴパンツが目立つ服装でテーブルまで歩く。

 金辺が納得したのか、良く解っていないもう一人の連れを気にせずにオーダーを待つ。




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