第二十六話
客足が減ってきた時間帯の頃―――。
まかないの夕食を厨房の隅で食べている千明に店長が声を掛ける。
「そういや君を雇って一年近くになるな。どうだ青春してるか?」
ファミレスの中年の店長の言葉に千明が食事を中断して話す。
「毎月五万稼ぐのがこんなに大変なんだと勉強させてもらってますよー」
千明がそう答えて、まかない飯を早めに食べていく。
金辺は既に食べ終えているのか、フリーザーから冷凍食品を運んでいる。
「千明ちゃん―――社会人になればその三倍は稼がないとアパート暮らしも出来ないぞ? 金辺もそうだけどな。がっはっはっはっ!」
店長が楽しそうに中華鍋に油を注いで鍋を熱していく。
「実家の仕送りだけでは厳しいので、金辺と一緒に店長に拾ってもらって感謝していますね。はい、ごちそうさまです」
千明がそう返事をして、食べ終えたまかない飯を皿洗いの男性に渡す。
「千明ちゃん。大学で内定が決まらないときはそいつみたいにウチで正社員ってことで雇用もあるから、しっかりと単位取って就活すんだぞ?」
店長の言葉に皿洗いの男性が「感謝してますよ店長ー」と返して、皿を洗い出す。
千明がどう返していいか困り顔で笑う。
「あ、あははー。肝に銘じておきますね」
店長がそんな千明を気にせずに話を続ける。
「金辺の下の名前は陽美ちゃんだったな。彼女は聞けば教職の講義を受けて、教師になるまで家には帰れないと親に言われているそうじゃないか?」
金辺の本名を言った店長に千明が電子オーダー機を手に取って、代わりに答える。
「金辺は教職の講義はサボりませんからね。大学が終われば空いた時間をバイトに費やしているし、仕送りは私より多めですが体力ありますよ」
「がっはっはっはっ! 鍛えるところも鍛えてるし、高校時代はモテモテだったんじゃないか・ その時に雇えば給料ももうちょっと上げられたのになぁ」
店長がそう言って、手の空いた金辺と千明に洗い終わった皿の整理を頼む。
千明と客が減った時間で手の空いた金辺は皿の整理をする。
「金辺は女子高ですよ。そりゃあもう別の意味で女子にはモテてたそうですよ」
千明が金辺の代わりに答えると、金辺が千明を見る。
「どこで聞いた?」
金辺の質問に千明が皿を整理しながら話す。
「教育学部の後輩の女の子。金辺と同じ女子高だって、聞いてその時の話をダイジェストで聞いたわ。百合ユリしぃのー」
千明がからかうように流し目で笑って、腕を人差し指でプニッとつつく。
「……うるさい。そんなことはどうでもいい」
金辺が仕事口調から素の口調で返す。
店長が話題を返すように二人に話す。
「最近バイト多めだけど、学業に支障とかないのかい? 生活苦なら他の日雇いのバイトでも当日連絡でも大丈夫だけど?」
「夏休みに免許取るので今の内に一か月分くらい生活費を貯めておきたいんですよね。夏の期間にあんまり来ないので申し訳ないです」
千明がそう答えて、店長が腕を組んで目を瞑って考え込む。
「そっかー、千明ちゃん抜きだと夏の忙しい時期に他のアルバイト先のメンバーが足りないなぁ。夏が来る前に急募かけて、就活サイトに投稿しておくかな? 陽美ちゃんは夏休みに仕事来れるかい?」
「これる」
金辺が接待とは違ういつものぶっきらぼうな口調で話す。
店長がホッとして、目を開く。
「それなら千明ちゃんの分を陽美ちゃんと他の女子でシフト組んでみるかな。時給は夏は200円アップにするから昼の期間は頼むよー」
「はい」
金辺が普段の口調で答えた時に―――。
入店のアラームが鳴る。




