第二十三話
「我々が銃を使っても勝てない何かが蠢いている。誰が絵を描いているかは分からないが、この二日続く異例の赤い雨の夜に犠牲者を出させないように本部に人数をもう少し回してもらわねばな」
彼女がそう言って、配属さればかリの警官が書類を他のベテラン警官から貰う。
書類を笹塚刑事に渡し、笹塚刑事の指示を待つ。
「このあたり一帯の外出中の市民に集団行動を伝える警告を出すようにしろ。バイト先の学生たちには指定通路だけを移動させるように指示するんだ、いつもの対応だが放送で伝えろ―――いいな?」
「了解でありますッ!」
笹塚刑事の言葉と共に警官が敬礼する。
その時に赤い雨が止み始める。
「っち! 二日続くのはここ最近では珍しいケースだというのに―――現場検証は人数を減らして、残りの警官は署に大至急戻らせろ」
笹塚刑事の指示に新人の警官が他の警官と共に頷き。
何台かのパトカーが事件現場から去っていく。
残った笹塚刑事が苛立たし気に銃をしまう。
「さて、本署に戻っても書類の山で判断力が鈍りそうだな。徹夜捜査をさせた報いを犯人に思い知らせてやる」
彼女がそう言って、地面に無残に転がった缶コーヒーを蹴り飛ばす。
「刑事! 現場を荒らしてはダメですよ」
警官に注意され、笹塚刑事が二枚目のガムを食べ始める。
「ここの所、眠れないで何度もこの事件の捜査続きだ―――どうせ缶コーヒー一缶では大した証拠にはならんだろう。なれたとしたら私は今頃は本署のエリート組入りだろうよ!」
そう言って、彼女がガムを不機嫌そうに膨らます。
女刑事と3人ほどになった警官たちの現場捜査と近隣獣人の聞き込みが続いていた。
赤い雨はやんだが、広がる雲は月すら覆い隠すように空を支配する。
※
千明が電車から降りて、バイト先の駅に着いた頃。
改札からやや離れた人ごみの中で椅子に座って、スマホにイヤホンを付けている女性がいる。
髪は染めているのか金髪だが、不良少年のようなイメージはない。
美肌で白い肌が金色の染めた髪と合わさって、美しさを際立たせることに成功している。
女性はジト目で、座っているが身長が女子の平均よりも低い。
見たところ千明と同い年ほどの女子大生のようだ。
何人かの男子大学生や若い社会人の大人たちが座る彼女に見すぎないように視線を移す。
見られている金髪のツインテールの女子大生は慣れているのか、無視を決め込んで動画を視聴する。
スマホの丘の上に咲く一輪の花の画像の音楽付きの動画を見終えると―――。
「―――金辺。待たせた?」
近くに来た千明が女子大生のジト目の彼女に挨拶する。
「こっちもきたばかり―――バイト先行くよ」
金辺と呼ばれたツインテールの女性がぶっきらぼうに返事をする。
そのままイヤホンを外して、ミニスカートのポケットに入れ込む。
「まーたロマンチストなポエムバンドでも動画で見てたわけ?」
千明が立ち上がる金辺に尋ねる。
「悪いか?」
「いんや、別に―――アルバイト先を去年教えてくれなかったアンタには感謝してるから聞いてみただけ」
千明がそう言って、金辺と一緒に駅から出ていく。
金辺が黙り込んで肩を並べて歩く。
千明が話題を提供する。
「アンタまた他の女子大生から飲み会の誘いのメール来てたわよ? 何故かあたし宛に伝えてイエスを貰って来いというと謎の特命付きでね」
千明が歩きながら金辺に話す。
「どうせ無為やり押し付けられたのだろう? そんなものは頼まれたとはいわないわよ。放っておけ」
金辺がぶっきらぼうに返事をする。
千明が軽く笑って、頷く。




