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第十七話

 千明がそのまま正門とは反対側の貯水池に向かっていく。


(先生の言葉に誰も手を上げない自分たちのそれぞれの考えがあるとかいう自由科目の哲学の講義より―――囲碁の講義の方が確実に私の棋力なら単位が取れる中級編のが面白わね。あー、来年は囲碁の上級編の講義うーけよっと―――)


 千明は四限の自由科目の囲碁の講義にテンションが上がりつつ、彰美と吉澤を見つける。


(でも昨日って、割引券をアルバイト先に行く前に彰美に渡した後に―――何かあったような?)


 千明が大切な夜の出来事などをあまり思い出せず―――。

 芝生で座る彰美たちと一緒に食事に参加する。

 貯水池に柵がある芝生の周りはそれなりの数の学生が賑わって、雑談や食事をとっていた。



 昼になり―――。

 千明は彰美と吉澤と一緒に芝生に並べられた食品を食べていく。

 千明が半額のシールが張られたサンドイッチを手に取る。


「大学内の食堂は三つともそれぞれ500席あるのに―――今回の食事の場所が芝生とはね」


 千明がそう言って、袋を開ける。

 半額のシールが張られたベーグルを彰美が食べながら話す。


「たまにはいいじゃない。こういう所で食べてみたいし、他に芝生で食事食べてる人もいるしさ」


 彰美の言葉に―――吉澤が控えめに頷いてカフェラテを飲む。

 飲み物を半分飲み終えた吉澤が千明に話しかける。


「昨日は赤い雨が駅前で降りましたよね。私たちは降る前には家で飲み会でしたけど―――千明先輩は平気でしたか?」


 吉澤の言葉に千明が何か欠けた記憶を通り過ぎるように―――。


「―――いや、何もなかったわよ。普通に帰れたわ」


 ぼやけた映像に多少の違和感を覚えたが、平然と千明はそう返答した。

 半額のベーコンレタスハンバーガーを食べる彰美が吉澤に話す。


「そういや、赤い雨の事件で無気力病になった人達―――ほとんど一カ月で退院したら試験は再試験ってわけでも無く別の教室で試験だものね」


「出席日数が無気力病のほとんど一カ月のせいで足りてなくても、事件のせいで単位が取得扱いってのもおかしな話ですよね」


 吉澤の疑問に千明が答える。


「赤い雨の降る場所は私らの大学や近くの小都会の街だけだし、ここの被害にあった大学生への処置って変わってるわよね」


「ほとんど一カ月くらいで病気が治って、そのまま元の生活に戻ってるんですよね? 就活の三年生やバイトする学生さん達でも事件ならしょうがないで済まされますしね」


 吉澤の返答に千明が疑問に思う。


「それもそれで変な話よね。ニュースで話題になってるし、赤い雨の降った日は内定者や面接中の学生に会社や試験官が安否のメールを送るっていう対応だしね」


「―――千明、何も大学生だけじゃないのよ。襲われた埼玉の駅近くの高校生の処置は補習という形で卒業扱いになっているのよ。推薦組はともかく受験組は何故かなんだかんだで大学に合格出来てるし―――」


 彰美の補足の言葉で千明が食事をとる手を少し止める。


「それと退院した大学生は単位に関係なく企業も異常現象だから納得して採用していることが多いしね」


 彰美が話し終えて、半額のエンゼルフレンチを食べ始める。


「他所の県から来た私も受験中の日には運よく赤い雨が降らなかったです。こんなことが二年連続で起こって、それから大学生を中心に事件が起こるってのも怖いですよね」


 吉澤がそう言って、半額になったハムカツサンドを食べ始める。


「どっちにしろ。受験中や就活中に襲われたらたまったもんじゃないわね」


 千明が袋からおにぎりを取り出そうとすると―――。

 芝生の外側の第二厚生棟の通路から視線を感じ―――。

 その方向に振り向く。

 芝生の外側の通話から金髪マッシュの髪型の海外の美青年が映る。

 無表情なクールそうな肌の白い青年が千明をジッと見る。


「千明どったの?」


 彰美が飲み物のストローから口を離す。


「いや、私好みのイケメンがお熱い視線を―――」


 千明がそう言うと彰美と吉澤が千明の視線の方向に目を向ける。





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