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第十四話

 朝食を終えた後に―――。


「よしっと! 電気代もガス代も水道費も引き落としってのは学生生活で良いもんねぇ。いくら使ったか気になるから別費用で領収書を郵送の紙で送ってほしいのは私が情弱みたいで切ないけど―――よし、しっかり閉めた」


 千明が二階のアパートの自分の号室の鍵を閉める。

 空は雨の跡の青空で綺麗な朝の晴天だった。


「あれ? 昨日って、確か赤い雨が降ったような?」


 千明が空を見て、考え込む。

 何かが抜けたような違和感を―――まるで本当に知らないように―――。


「あ、あの後何もなくて、そのまま帰ったんだっけ? そうだったわ」


 そう言って、彼女は納得する。

 そして千明が思い出したかのようにドアから離れていく。

 学生の教材を入れるショルダーバッグを肩に下げて、財布をスカートのポケットに入れる。

 そのまま郵便ポストを夜に確認しようと思い、スルーする。

 千明は徒歩で駅前のバス亭までのんびりと歩いていく。

 半分は畑と民家で覆われ、残り半分は二階建てのアパートが目立つ地域に新鮮味を覚えながら歩く。


「やっぱ左に畑で右にアパートやコンビニがあるって妙な気分ね。二年生の四月半ばになっても馴染めないもんねー」


 千明がそうボヤいて、あまり人の少ない通学路のような道を歩いていく。

 駅前のバス停に着く頃にはスマホは月曜日の八時を指している。

 千明がバスに乗りながらバス内の学生で満員になる中で―――。


(朝の講義の時はいつもこの無料バスが満員ってのは慣れたけど、三年生の就活の話を聞かされるのは二年生ながらに気になるもんね)


 千明が椅子に座って、窓の景色を見る。

 床屋や車の少ない道路とバイク屋を見ながら―――。


(この景色とも後二年の卒業式でお別れって思うと、まだ時間はあるけど、複雑な気分ね)


 そう思いつつ、ほぼ学生専用の坂道を上がっていく。

 景色は大学の大きな校舎に移り変わる。

 野球部のグラウンドや乗馬部の厩舎にテニス部のコートなど―――。

 サークルの活動で使う網が張られた景色。

 陸上競技場では部活の生徒が何人か準備体操をしている。

 サッカー競技場では部員が朝からボールのパス回しをしていた。

 左右に大学で講義を受ける多くの講義棟が映る。

 そして教授などが使う大きな棟がそびえる本館と呼ばれる研究棟が千明の瞳に映る。


(流石に院生は無理ね。いっそ埼玉で就職しちゃおうかしら? でも地元東京だし、うーん……二年生の八月頃には就活の準備しないとねー)


 千明が憂い顔で頬杖をつく中で、バスがカーブする。

 千明の目にバス内で最後に映ったのは落書きなどあるサークル棟とその隣の三つあるうちの学食堂だけだった。

 彰美の言葉を千明が思い出す。


(サークル活動かぁ……あの学食の場所ってほとんどサークルの学生さんが利用してるだっけ。二年生になってサークル活動ってのも遅い気もするわね)


 千明がそう思う中で―――。

 何かの映像が頭に映る。

 ―――赤い眼をした亜麻色の髪の女子大生。


(んっ? なんだろさっきの記憶? 彰美から借りたレトロゲームのやりすぎかな?)


 千明が考え込む中でカーブを終えたバスのドアが開く。





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