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第十二話

 千明が畑道を走っていき―――。

 空を飛ぶ黒い獣が千明を上空から追って行く。

 黒い獣が人通りの少ない畑のある場所に着地すると―――。

 羽が吸い込まれるように背中に入り込み、無くなる。

 そのまま犬の姿で千明の背中を追って行く。

 走っていく千明が背後を確認せずに畑道の道路を通過する。

 千明の脳裏に何かの言葉が響く。


『冥界に帰るために待ちに待った。今こそ時は満ちた―――復讐を果たす時―――命を散らせはしない』


 声が聞こえて後ろを振り向く。

 誰のいないのが―――千明が不気味思い始める。


「なんなのよ。さっきの化け物と言い、この声と言い―――ビルのあの血が噴き出す出来事と言い―――」


 千明が息を切らして、公園のある方角まで走っていく。

 アパートとは違う方向。

 理由はそこに交番があることを思い出したからだ―――。

 犬の形をした黒い獣が千明に追いついていく。


「さっきは恐ろしい速さで飛び掛かった! でもすぐに近くにいることを感じられるこの怖さはなんなの? 走っても走っても隣にいるような―――体の上に出るような輪郭の無い気配は―――?」


 千明がそう思い、振り返る。

 黒い獣がやや離れた位置から追いかけてくる。

 赤い雨が降る中逃げる。

 それが千明が最初に黒い獣に襲われた日の出来事―――。

 その後に公園で謎の女子大生と出会い、黒き獣は亜麻色の髪の炎の剣を持つ彼女と戦闘している。



 時間は最初の千明が公園で黒き獣と炎の剣を持つ女子大生との戦闘に戻り―――。

 千明がストッパーと呼ばれた男性の謎の声から、意識を取り戻す。

 ラフな外ハネのショートヘアーの炎の剣を持つ女子大生が剣を振り―――。

 横を薙ぐような軌道で描く剣が黒い獣の胴に入り込む。

 黒い獣が爪を振り下ろすも―――。

 亜麻色の髪の女子大生は横に首を振り―――躱す。

 そのまま剣をスイングするように黒い獣を真っ二つにする。


「―――!? あがっ!」


 黒き獣が断末魔の様に声を出し、真っ二つにされて公園の地面に転がる。

 黒い獣が赤い光の中で消滅していき―――。

 オーソドックスな丸目の赤い瞳を宿す女子大生が泥だらけの千明を見る。


「…………」


 無言の中で女子大生が倒れている千明を立ったまま見下ろす。

 その女子大生の服や肌や髪の毛に至るまで、赤い雨を弾くように濡れもしなかった。

 赤い雨に濡れることもない傘も差さないその女子大生は―――炎の剣を持ったまま千明を見下ろす。





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