第百十一話
そのまま部室のドアをノックする。
「そうなのかなぁ? 何か金辺ちゃんがそうだと断定できるものがあるってことなの? 同じレガシーウエポンが使えるって点では一緒だと思うけど?」
「レガシーウエポンを持つ前の私達とは違う出来事が起きすぎている」
そう言って、奥から聞こえる素子の声に返事をして、ドアを開ける。
時雨も険しい表情になり、そのまま部室に入る。
素子が携帯ハードを机に置きつつ、講義のプリントを流し見する。
三人は四限が始まるまで報告と雑談を始めた。
コミュニティに殺人犯と無気力病の事件のリンク先を送って―――。
※
大学の三限の講義の始まる前の数分前。
「あれ? 真城君?」
「あ、山本先輩。どうもっす。同じ講義だったんっすね」
千明が大教室の後ろの席の真城と出会う。
「大人数の講義だから気付かないもんよね。真城って呼び捨てで良い?」
「良いっすよ。俺はこのまま千明先輩で良いっすか?」
「好きなように呼んでいいよ。まぁ、大学で先輩後輩言うのもちょっと違和感覚えるかも」
「体育会サークルなら上下厳しいっすけどね」
二人がそんなやり取りを終えて、ホールに教授がやってくる。
学生たちが並んでカードリーダーに学生カードを差し込みに行く。
「高校と違って、出欠点呼じゃなく学生カードをカードリーダーに差し込むって言うのがスマートっすよね」
真城が並んで後ろの千明に話す。
「この三限の講義の自由科目はそういうもんよ。この十号棟が大教室で段差のある一階のみのホールみたいな教室だし、そういう講義はカードリーダーに差し込んで出席取るのよ」
「まぁ、出席点呼を取らない少人数の講義でも用紙とか渡して講義受けるってのも大学なんだなって思うっすね。用紙やレポート提出したらそれでオーケーって講義も学生カード必須だし、忘れた奴は用紙に名前書くだけってのも高校とは違うっすね」
「ああ、そっかまだ六月だもんね。真城は一回生というか一年だもんね」
真城と千明がやり取りを並ぶ列でして、カードリーダーに学生カードを差し込む。
カードリーダーが読み込まれ、二人はそれぞれ学生カードを取り出して財布にしまう。
教授の手机に置かれている用紙を一枚取り、席に戻っていく。
千明がチラリと真城の頭上を見る。
(ちょっと違和感感じてたけど、やっぱ関係してるのか)
千明がそう思い、真城の頭上に浮かぶ青色の紋章を見る。
うっすらと現れた13の球体が外側にある王冠の紋章が真城の頭上で浮かんでいる。
「―――意外ね」
千明が真城と一緒に席に戻る中でそう呟く。
「えっ? 俺のナイスな性格がっすか?」
「や、そっちじゃなくて理工学部なのに自由科目で史学部が受けるような自由科目の講義受けてることがさ」
千明が誤魔化すようにそう話す。
「金辺先輩から聞いたんっすよ。ここの講義だけ映像だけ見て、出席してれば単位が前期と後期合わせて4単位取れるってことで受けてるんっすよ」
「へぇ、口下手というかぶっきらぼうというか多くは語らないあいつがねぇ」
真城と話しながらカバンと一緒に後ろの席に座る。
「まぁ、あたしも去年に彰美―――同じ学部の友達が受けてたから同じ理由で受けてるけどね」
二人が話ながら教授の講義を聞く。
「同じ理工学部のドレッド君や文科系サークルっぽい素子は受けないわけ?」
「いや、理工学部の素子はそう言う科目以外は出欠ギリギリまで取って友達にノート借りてテスト受けて単位取ってるっすよ。あいつ研究とか得意だから適当にやっても評価高いんっすよね」
「―――世渡り上手なことで」
「ドレッドも俺もこれ以外の科目は体育以外は理系科目っすよ」
千明がその話題に興味を示し、聞き手に回る。
「ドレッドは自主トレっていう体育の必修科目取ってたんすけど、俺は野球選びましたね」
「自主トレとかなんとも地味で成果が上がる講義を選んでるもんねぇ……なんで野球?」
千明がプリントの講義内容を確認して、問う。
「同じ理工学部の堂本の勧めで一緒に選択必修の野球の体育の講義受けることにしたんっすよ」
「知り合いと講義が一緒だと安心感とかあるもんね。出席しやすくなるし―――」
「それもあるっすね。堂本は―――あいつ高校まで野球部だったから空手部の俺を無為やり呼んだんっすよね。一人だと心細いとかで―――」
真城が返答して、講義のプリントを確認する。




