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第百七話

 二限の講義が終わった後―――。

 千明が彰美や吉澤と一緒にサークル棟の隣の学食で合流する。

 彰美が大盛りのカツカレーを食べながら千明に話す。


「千明ー。結局天文部に入部したの?」


 彰美の問いに千明がミックスフライ定食と油揚げ味噌汁定食を食べる手を止める。


「まあ、成り行きというか―――歓迎会で鍋までご馳走してもらったし入部届も書いちゃったしね」


 千明がそう言って、ソース付きのアジフライを箸で挟んで口に運ぶ。

 ウーロン茶付き牛丼定食を食べている後輩の吉澤がその話題に興味があるのか―――。


「山本先輩。天文部って噂じゃ謎の入部テストがあるって聞いたんですけど、入部テストありましたか?」


 吉澤の言葉に千明がアジフライの骨を噛みかける。

 動揺が少し現れた様子だった。


「吉澤。あんたそんな情報どこから聞いたのよ?」


 彰美がカツカレーの半分を食べて、聞き込む。


「サークル自治委員会の北沢先輩から選択科目のドイツ語の講義の時に聞いたんですよ」


「北沢って、法学部のメガネ?」


「彰美先輩。北沢さんは法学部ですけど、特徴をメガネで掴むのは女性として失礼ですよ」


「解ったわよ。あいつと同じ講義にいることないし、サークル自治委員会と法学部の科目ばかり取ってるから会う機会もないのよね」


 彰美がそう言って、カツカレーのルーのかかったカツを食べる。


「んで、千明」


「な、何よ彰美?」


「入部テストかあったわけ?」


 彰美の言葉に千明が脳裏に思い浮かぶ。

 夜の屋上での魔法陣からなるレガシーウエポンの取得―――。

 工場内の不法侵入と王冠の紋章の魔法陣から出てきた異形の魂喰らい。

 赤い眼の天文部たち―――事件を突き止める協力。

 それらを思い返して、どういったらいいか困惑する。


「どうなのよー?」


 彰美が横目で千明をジッと見る。


「いや、筆記テストがあっただけよ」


 千明が目をそらして、嘘をつく。


「筆記テスト? そんなのあったんですか?」


 吉澤が牛丼を食べ終えて、追及する。


「まあ、天文部に入る部員だから途中で退部はダメそうだから会費の説明と簡単な星座のテストとか……望遠鏡の豆知識とかそんな問いの用紙を書いただけよ」


 千明がアタフタしながら味噌汁を飲む。

 緊張のせいか味噌汁の味が薄まる。


「なるほどね。合格出来て良かったじゃない。あんたが囲碁以外に星座とか天文部に興味があったのは意外だけどさ」


 彰美が納得したのか定食を食べ終える。


「山本先輩。ドレッド先輩とお近づきになるチャンスですね」


 吉澤が話題を変えてくれたのか千明に話す。


「ああ、バレバレだった? まあ、進展があったら話すわよ」


 千明がそう言って、ミックスフライ定食を食べ終える。


「千明。ドレッド君と部室内で二人きりになったからってエロいことするなよ~?」


「しないわよ。ムードに流れされたらキス位するかもしれないけどさ」


「ラクロス部の部室は下の階にある雑談所になってるのよ。変な音立てたら来るからね」


 彰美が半目で笑いつつ念を押すように千明に言う。


「はいはい、大学生は大人と言えどルールは守りますよ。ってか、ラクロス部の部室って天文部の下の階なんだ」


「普段は申請書を書いて、オーバーブリッジを抜けてグラウンドで大会に向けて練習してるけどね。ごっそさん」


 彰美がそう言って、カツカレーを食べ終える。

 千明も昼食を食べ終えて、考え込む。


(吉澤さんや彰美も守らないといけないってことか―――日常を魂喰らいに奪わせないために特訓頑張んないとな)


 千明がそう決意した直前―――。

 周りの景色から音が無くなり、世界が灰色に包まれる。


「―――これはっ!?」


 千明が立ち上がろうとするも動けない。

 周りの人物達が一枚の画像のように動かない。

 灰色の景色のまま、千明の目の前に赤い色の王冠の紋章の魔法陣が浮かび上がる。


「まさか、魂喰らい? でもあいつらは昼は出ないはず? この前の謎の少女なの?」


 千明が動けずに口を動かして、その光景を見続ける。

 時の止まった灰色の世界から王冠の紋章の魔法陣に巫女が出てくる。


「あんたはあの時の!?」


 千明がタレ目の巫女を見続ける。

 巫女が男の声で千明に語り掛ける。


『こうして話すのは久しいな、ストッパーよ。13の王冠の力による其方のレガシーウエポンは13人の人の絆により強化される』


 その声は脳内で声が響くように振動する。




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