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第百三話

 椅子に座っていた素子が携帯ハード機を中断して代わりに話す。


「大丈夫だじぇ。いざという時はドレッドの暗示もあるから良いように解釈するようにしてるじぇ! 暗示は今のところ使ってないらしいけどじぇ」


「襲われもしない一般の人に暗示を使うのは気が引けるわね。で、今日は赤い雨は探知の力で降るわけ?」


 千明が立ち上がり、壁に背を向ける。


「うむ。今日は降らないらしい。千明の入部祝いも兼ねて私の車でスーパーから材料を買ってきた。コンロもあるので鍋にしてささやかだが祝いたい」


 佳代子がそう言って、ガスコンロと鍋を取り出す。


「そうなんだ。ありがたいわね。これであたしも夜に協力を申請して、天文部に入部ってことになるわけだ。ってか―――」


「うん? どうした千明?」


「佳代子って、車持ってて運転出来るんだ」


 千明が時雨に支えながら椅子に移動する。


「うむ。父親から譲ってもらった白いバンで遅刻の素子とセットで運転してきた。普通自動車の運転免許は去年の冬休みに合宿で取ったのだ」


「あの白いバンは佳代子の車だったわけね。佳代子って金持ちなのね」


 千明がそう言って、椅子に座る。


「佳代子は埼玉県のここから離れた市にある空手道場の娘だじぇ。入門者多いからお金持ちだじぇ! 千明の入部祝いということで部室でご馳走を振舞われろじぇ!」


 素子がそう言って、スーパーの袋から肉や野菜を取り出す。


「幹事として仕切るじぇ!」


「ったく、隣町のゲームセンターにはまりすぎて遅れた癖に幹事っすか? 佳代子先輩に隣町の駅前で送迎してもらったやつが仕切るなつーことを突っ込みたいっすね」


 真城がそう言って、鍋の中に鍋用の汁のパックを流し込む。


「新作稼働中のガンシュー筐体でハイスコアが出そうだったんで止め時が遅かったんだじぇ!」


 素子がそう返答して、ガスコンロの火をつける。

 ドアのノック音が鳴り―――。


「合言葉を言わないと入れないじぇ!」


 素子が子供っぽくドア越しに話す。

 ドアの奥から金辺の声が聞こえる。


「―――入るぞ」


 ぶっきらぼうにそう言うと素子が弾んだ声で返答する。


「合言葉をちゃんと言うんだじぇ! もう一度チャンスやろうじぇ。入室の為の合言葉を言うじぇ!」


 ドア越しから沈黙の間の後に―――。


「―――そんなものはない」


 ぶっきらぼうにドア越しの女子大生が返答する。


「二度も間違えたじぇ! 金辺のゲームオーバーだじぇ! お前は既に出禁だじぇ!」


「あほ。入るぞ」


 声の主の金辺のぶっきらぼうな声でドアが開く。

 鎌の形をした木製の武器を持った金辺と木刀を持ったドレッドが部室に入る。


「二人ともお疲れ様っすね。屋上での身体訓練は上出来っすか?」


 真城が紙コップを机に並べながら、ドレッドと金辺に話す。


「ヨウミは勘を取り戻している。また赤い雨が降っても問題ない」


 ドレッドがそう返答して、ロッカーに木刀をしまう。


「木刀ってことは模擬訓練やってたの? あたしも特訓するべきかしら?」


 千明が問いかけると―――。


「明日からで良い」


 金辺がぶっきらぼうに返答して、ロッカーに大鎌の模造武器をしまう。


「それどこで買ったのよ?」


 千明が大鎌の模造武器を見て、問う。


「秋葉原、だ」


 金辺がぶっきらぼうに返答する。


(もしかして囲碁雑誌読む前に読んでた西洋武器の怪しげなコラムがあったあの雑誌の店かしら?)


 千明が槍のことについて書かれていた大学内の売店にあった怪しげな雑誌を思い出す。


「千明のレガシーウエポンは槍だから部費で槍の模造武器を買っておこう」


「いや、佳代子。その辺の長い棒で良いわよ。むしろ木刀でも良いくらいだから―――天文部で木刀買う必要性ないでしょ? 学園長に暗示かけるにしても無理あるし―――」


「うむ。そうか? ならそれで構わないな」


 佳代子が納得したのか紙コップにジュースを注ぐ。





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