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第一話

「まだ追ってくる! 振り向かずに走っているのに背後の気配で解るわ―――襲った化け物がどんどん近づいてい来る!」


 女子大生が深夜の人通りのない道でそう言って、全速力で走っていく。

 空の黒い雲から血液の様に赤い雨が降り注ぐ中―――。

 大学生の教材の入ったカバンを肩に下げ―――ひたすらに走り続ける。

 血のようなの雨水で転ばないように目に映った公園に向かう。

 彼女の背後には得体のしれない黒の獣のような形をした異形の姿がある。

 まるで犬の姿のようだが、そのサイズは犬よりも長身の人と同じ高さである。

 それでいて両手には鎌の様に長い片手で五本の爪を彼女に向けて、背中に近づいていく。


「公園に逃げ切れば、その先は交番のある直線だわ! 警察官が守ってくれると思いたいけど―――」


 彼女がそう言って、公園の入り口まで到達する。

 赤い眼をした黒いオーラをまとう獣が口を開け犬歯を見せる。

 その口は人の腕があっさり入りそうな大きさで口内の奥にはどこまで深い闇が広がる。

 傘すら既に捨てて、彼女が雨の公園で濡れた砂道に足を滑らせる。


「しまっーーーーーきゃあ!」


 前から倒れ込み。

 濡れたカバンが倒れ込む彼女の鎖骨にぶつかる。

 痛みを上げる暇もなく―――。


「くっ! 早くしないと!」


 起き上がりかけたその時に―――。

 黒い獣が追い付く。

 立ち上がろうとした彼女に爪を振るう。

 振り向いた彼女の眼にその爪が映り込み。

 上から下に円の軌道を描くように―――爪が彼女の体に命を奪う形で下ろさせる。


「私がここで死ぬ!? いやぁ! 死にたくない!」


 直感と恐怖に包まれ―――叫ぶ彼女が目を瞑った途端―――。

 赤い雨を薙ぎ払うように剣の軌道が下から上を描く。

 大爪と剣がぶつかりキンッという金属音が響く。

 黒き獣の振り終えかける大爪に―――誰かか振った剣がぶつかり大爪を跳ね返す。

 獣が後退して、赤い眼でその剣を振った人間を忌々しそうに睨む。

 突如として現れ、剣を振った人間は転んだ彼女の前で構える。

 目を瞑ったままの転んだ彼女は―――何が起こったのか分からずに目を開く。

 彼女の背中に映るものは右手に剣を持った一つ年上の女性だった。


「えっ? 人? 警察―――じゃない?」


 女子大生の女性が炎の剣を持つ女性を見上げる。

 他に目に映るのは―――彼女の学生にしてはやや個性的な服装―――。

 黒のハイネックに紫のロングスカートにガジェットブーツを履いていた。

 炎の剣とのアンバランスさが幻想的かつ非現実的な異質さを見せている。

 その女性の握る剣は雨の中で消えずに炎を刃先に宿している。


「一体なんなの? 私まだ生きてる―――この女の子は一体?」


 疑問に思い続ける少女が―――同い年ほどの少女の背中を下から上目遣いで見る。

 炎を纏う剣を持つ亜麻色の髪のラフな外ハネのショートヘアーの女性が黒き獣に飛び掛かる。

 転んだセミロングヘアーでポニーテールの髪型はその瞳にこの戦いを見つめる。


「刃先の剣に炎が燃えてる―――現実よね?」


 千明が女性が黒い獣に振る炎をまとう剣を見て、そう呟く。

 それが二人の出会いであり、異形の黒い獣との戦いを始めて見た記憶―――。

 剣を持った女性が黒き獣と戦う中で、転んだ彼女の頭が痛み始める。

 彼女の頭の中から声が聞こえる。


『ストッパーの山本千明(やまもとちあき)―――我が主よ。今こそ我が見せよう―――この始まりの起こりうる過去を―――主の真の始まりを忘却されし記憶と共に取り戻せ』


 千明と呼ばれたセミロングヘアーでポニーテールの髪型の女子大生が―――頭に響くその声に頭を抱える。


「―――つぅ! 視界が……無くなる……やっぱり死ぬの?」


 戦い続ける女性の中で―――彼女は視界が黒で覆われ、倒れ込む。

 暗くなった視界には戦いの音が響いていた―――。





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