『恋するお弁当、のち、すれ違い。』
こんにちは、坂下あかりです。
27歳、恋愛観察者(自称)、現在進行形で恋に進展中……の、はず!
沖縄研修から帰ってきたばかり。
夢野くんとの距離は──あれ? 近づいた?それとも、変わらない?
さて、今日は、私の超スペシャル作戦『お弁当作戦』の初日です!
そう、お昼休み。
社内の屋上ベンチで、夢野くんとふたり。
「坂下さんのお弁当、ですか?」
「うんっ、今日はちょっとだけ頑張ってみたの」
お弁当箱を開けると、そこには……
しろまる(=勝手に命名した夢野くんのシロクマぬいぐるみ)を模した
ゆで卵のデコレーション♡
目と鼻は海苔で、ほんのり赤いほっぺはケチャップで。
我ながら、100点満点の可愛さ!
「……これ、しろまる、ですよね?」
夢野くんが、すっごく可愛く笑った。
(ああああ……その顔、反則ぅううう)
「よく食べてくれるし、可愛いし、癒されるんです」
(私の妄想の中じゃ、夢野くん=シロクマだから、しろまる=ライバルなんだけど!?)
夢野くんは、箸でしろまる卵をすくって、大事そうに食べてくれた。
それを見てるだけで、私はもう……お腹いっぱいです。
「今日の飲み会、夢野くんも参加するの?」
「はい、一応」
「そっか。……酔わせたりしないからね」
(自爆発言ぃぃぃ!)
……そして、夜。
会社の飲み会が始まりました。
夢野くんとは少し席が離れたけど、私、がんばって普通に飲んでた。
隣にいた男性社員が、やけに話しかけてきて……
なんだか、ちょっと盛り上がってしまった。
ふと見ると、夢野くんがこっちを見てた。
一瞬、目が合って──そして逸らされた。
(ん?いま、目、逸らされた!?)
(なんで??? まさか、怒ってる?)
(ああああっ、もしかして……しろまる、勝手に真似したから!?)
(……っていうか、私のこと、うざかったりする!?)
(ごめん、そうだよね、勝手に弁当作ったし、勝手にしろまる命名したし……!)
もう頭の中は、自己嫌悪の大渋滞。
飲み過ぎたのか、ちょっとフラッとした私は、トイレへ。
そして、トイレから出た瞬間──
「飲み過ぎじゃないですか?」
夢野くんが、そこに立っていた。
「えっ……あ、うん、大丈夫……ふらっ」
ふらついた私を、夢野くんの手がそっと支えた。
その手が、温かくて、優しくて……
「……ありがとうございます」
「いえ……坂下さん、そういうとこ、ちょっと危なっかしいですよ」
(……え、なにそれ。ドキュメンタリー級にキュンなんだけど……)
(好きです、って今、言っていいですか?)
いや、ダメ、今はダメ、タイミングが違う!!
でも。
でも、これは──恋の“兆し”だよね?
たぶん、きっと、絶対……!
【To be continued】
今回のお話は、少しずつ近づいていた心が、ほんの些細なきっかけでまたすれ違ってしまう──そんな“じれったさ”を描きました。
夢野くんは自分の感情にまだ確信が持てず、あかりは彼の些細な変化に敏感に反応する。
どちらも悪くない、でも噛み合わない。そのリアルさを大切にしています。
次回はいよいよ、“あかりの涙”が物語を動かします。
恋って、簡単じゃない。
でも、だからこそ、気持ちが重なった瞬間は、何よりも尊い。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
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