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『未来の扉をひらく日』

こんにちは、坂下あかりです。


ついに——

夢野くんとの同棲、そして未来への第一歩を描く最終話です。


長い沈黙を破って語られた、

夢野くんの“本当の気持ち”。


仕事への迷い。

発達特性ゆえの生きづらさ。

そして、家で本に囲まれて静かに暮らすという、

彼自身の理想。


それは私の夢とも重なり、

やがてひとつの答えにたどりつきました。


「結婚してください。」


――その言葉に胸が震えた日。

私たちは新しい未来の扉を開きました。


どうかこの先の物語も、

あたたかく見守ってください。


では本編へ、どうぞ。


――沈黙。


私の言葉を聞いた聡太くんは、

まるで時間が止まったように動かなかった。


胸がぎゅっと苦しくなる。


(あ……やっぱり聞いちゃいけなかったかな……?

 専業主夫なんて、負担だったのかな……)


でも、ゆっくりと彼は

私の名前を呼んだ。


「あかり……」


その声音だけで、涙がこぼれそうになった。


「本当のこと、言ってもいい?」


私は小さく頷いた。



「僕ね……

 実は、できればずっと家にいたいんだ。」


ゆっくり、言葉を探すように。



「会社勤めって……すごく疲れるんだ。

 人と話して、頭で空気読んで……

 帰る頃には心がカラカラになってて。」



その表情は、どこか苦しげで。

胸の奥がズキッと痛んだ。


(気づいてあげられなかった……)



「でも、家ならね……

 本に囲まれて、静かに過ごせる。


 ご飯を作ったり、洗濯したり……

 いつか子どもが生まれたら絵本を読んであげたり……

 そういう生活なら、僕は……無理しないで生きられる。」



その言葉があまりにも優しくて、

静かで、現実的で。


そしてなにより――

私の夢と、ぴたりと重なっていた。



「……聡太くん」


涙がにじんで視界が揺れる。



「だからね。

 今日、ちゃんと決めてきたんだ。」


聡太くんは、小さな本を取り出した。



淡いクリーム色の表紙。

金の細い飾り文字。

ゆっくりと差し出されたそれを、私は震えながら受け取った。


表紙には――


“あかりの夢

 夢野あかり”


息が止まった。


足がふらふらして、その場に座り込んでしまいそうになる。


「ふ、ふぇ……っ……」


涙がぽろぽろ零れて、止まらなかった。


「これね……

 ぼくが、あかりのためだけに書いた本なんだ。

 あかりの夢も、ぼくの夢も……

 同じページに並んで進んでいく未来を、ずっと想って作った。」



(むり……っ……尊い……っ

 聡太くん……すき……っ)



言葉が崩れて、涙が溢れて、

胸が苦しいのに幸せで。


彼は私の手をそっと握った。


「あかり」


優しい眼差しが、まっすぐ私に向けられる。



「結婚してください。」


世界が、ふわっと光った。



涙でぐしゃぐしゃになりながら、

私は叫ぶみたいに笑った。



「す……すき……!

 もう……すきすぎて……どうにかなりそう……!

 100人でも1000人でも……っ」


(夢野家ベビープロジェクト脳内会議開始)



「そんなにいらないよ……」


と笑いながら、

聡太くんは私をぎゅっと抱きしめた。



「でも……君と家族になりたい。心から。」


その声は震えていて、

でも誰より優しくて、

胸の奥まで沁みた。


こうして、

私たちの同棲と結婚準備が本格的に動き出した。



ウェディングプランの打ち合わせ。

指輪選び。

式場見学。


全部がキラキラして、全部が新しい。


……だけど、その中で

ちょっと気になることもあった。



朝、気持ち悪い。

匂いに敏感。

眠気がすごい。



ある日の夕食準備中。


「……あかり。最近、ご飯食べられてないよね?」


「……えっ!?」


心臓が跳ねた。



(これ……まさか……?

 いや、でも……でも……)


気づかないふりをするには、胸がざわざわした。


でも、今はまだ言わない。




そして――結婚式当日。


つわりの波も少し落ち着き、

私はウェディングドレスに身を包んでいた。


鏡の中の自分は、

“夢野あかり”へと変わっていく途中の女の子で。


ふわっとドレスの裾が揺れた瞬間、

小さな温もりが胸の奥に宿っている気がした。


「……綺麗だよ、あかり」


その一言に、涙が溢れた。



(あぁ……やっとだ。

 推しと恋をして、

 推しに愛されて、

 推しと家族になるんだ)



誓いのキスを交わした瞬間、

心の中で、小さな命がそっと微笑んだ気がした。



――こうして私たちの第一部は、

ゆっくりと幕を閉じる。




でも。


これはまだ始まり。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


夢野くんの

“静かに生きたい”

“本に囲まれて家族を守りたい”

という願いは、

ずっと心の奥に抱えていた本音でした。


その想いがやっと言葉になり、

あかりと結ばれた今回のエピソードは、

第一部の締めくくりにふさわしい章になったと思います。


そして物語は次へ進みます。


結婚式の準備。

新しい生活。

そして――小さな命の予感。


第二部では、

「夢野ファミリーの物語」がいよいよ始まります。


あかりと聡太くん、

ふたりが紡ぐ“家族のかたち”。


これからもぜひ応援していただけると嬉しいです。


感想、レビュー、ブクマ、励みになります。

次章でまたお会いしましょう。


──坂下あかりより

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