『出張という名の恋愛チャンス、降臨しました』
こんにちは、坂下あかりです。27歳、独身OL、ただいま恋愛モード爆走中です。
今回の出張、たぶん神回。
なぜなら、夢野くんと飛行機で隣の席だったからです(奇跡)。
しかも、喋ったんですよ? あの夢野くんが!「空、きれいですね」って!
……ちょっと待って? 空よりあんたが綺麗だわ?(声が)
耳で恋する時代来た。恋愛はもはや聴覚戦争。
そんなわけで、
これはもう仕事じゃなくて、恋と戸籍のサバイバル遠征です。
私の恋の飛行機、ただいま上昇中。
ブレーキは……知らん!
夢野くんと、沖縄出張。
それはつまり──戸籍の下見である。
(いきなり飛躍しすぎだって? だって二泊三日だよ? 人生の運命濃縮パックでしょ)
出張の目的は「新人研修の同行サポート」。
夢野くんは新人。私はその“サポート役”。
会社の正式業務である。
これはもう、公務恋愛でしょ。公認じゃないけど。
そして今──私たちは、那覇行きの飛行機の中にいた。
隣の席は、奇跡的に夢野くん。
彼はずっと、小さな窓の外を見つめている。静かに。黙って。
(もしかしてこの人、飛行機も静かに乗るタイプ?)
(“黙って乗る男ランキング”あったら殿堂入り)
私が座ってから10分経ったけど、隣から発せられた言葉はゼロ。
(……無音で存在感出すのやめてくれ、好きになっちゃうから)
(あと私、今たぶん5秒に1回は彼の横顔見てる)
ふと彼の目線の先に気づいた。
……空。
それはもう、果てしないくらいの青。
窓に映る空は、高さの感覚も重力も失ったみたいで、どこか別の世界だった。
(ああ……この人、空が好きなんだ)
そう思った瞬間、
私はふと、言葉を口にしてしまった。
「……空、きれいだね」
やっちゃった!
完全に話しかけるタイミング間違えた!
(いやでも、黙ってるのが礼儀みたいな空気、私だけが勝手に感じてただけかもしれないし?)
(……っていうか喋った私、勇気ある。もっと褒めていい)
しかし、彼は──ゆっくりとこちらに目を向けて、
「……はい。すごく、綺麗です」
って言った。
えっ……喋った!?!?
夢野くんが、喋ったぁ!???
(わぁ……わぁ……わぁ……今、私の鼓膜に夢野くんの声が直接届いた……!)
(これ録音して壁に貼りたい。毎晩再生して眠りたい)
(ありがとう飛行機。ありがとう座席番号12C)
そしてその横顔は、ほんの少しだけ、微笑んでいた。
ほんの一瞬、口元がやわらかくなって、
ほんのちょっとだけ、まぶしそうに目を細めて。
(……好き。無理。結婚して)
(私、今このまま機内婚できる)
那覇空港に近づく機内アナウンスが流れる。
飛行機の下には、広がる海。
それはもう、嘘みたいに、青くて澄んでいて。
「わぁ……」
思わず子どもみたいな声が出た。
自分の語彙力が今、預け荷物と一緒に格納されている気がした。
(このまま降りずに2周目飛びたい)
(できれば一生この席にいて、夢野くんの隣で空を見ていたい)
ふと横を見ると、夢野くんも──
同じ表情をしていた。
目を丸くして、窓の外をじっと見つめて、
微笑むでもなく、言葉を発するでもなく、ただ静かに。
けれどその目は、たしかに光を湛えていて。
(あっ、私……やっぱり好きだ)
これは、確信だった。
次回は沖縄で事件が……!?
ご覧いただきありがとうございます!
夢野くん、ついに喋りました。
しかも空を見て一緒に「きれいだね」なんて……
それはもう恋の始まりというより、落下開始ですね。
次回、沖縄に着いてからの“あかりの恋愛サバイバル作戦”が本格始動します。
家事力チェック、距離感の詰め方、そしてまさかの展開も……?
もし「続き、気になるかも」と思っていただけたら、
ブクマしていただけると、あかり大喜びです!
引き続き、よろしくお願いします!