『夢野くんの無自覚、罪すぎ問題について。』
恋って、こんなに難しいなんて思わなかった。
すれ違う気持ち、届かない言葉──。
夢野くんの一言が、心をざわつかせる。
そして、そっと重なった手の温もりが、私をもっと好きにさせた。
こんにちは、坂下あかりです。
27歳、全力恋愛中。しかも片想い中。
だけど今朝──私は、
なぜか涙が出そうになっていた。
理由は……わかってる。
昨日の飲み会での、あの出来事。
夢野くんが、わたしを見て──目を逸らした。
あの時、確かに彼の感情が揺れたような気がした。
一瞬だけど、私にはわかった。
(……気づいてないと思ってたでしょ? バレバレなんだから)
「夢野くん、なんで……」
そう思いながら、会社に向かった。
だけど今日の彼は、
いつも通り、あの表情だった。
ポーカーフェイス。感情ゼロ。
笑うこともなく、怒ることもなく。
──でも。
「……昨日のお弁当、ありがとうございました」
ふいに言われた、その一言。
一瞬、心が止まりそうになった。
(やば……ちょっと、泣きそう)
(でも、泣かない。……泣かないっ)
「すごく、おいしかったです」
一瞬だけ、夢野くんは目を逸らした。
でもすぐに、また私の目を見た。
(……あれ? 今、ちょっとだけ照れた?)
そんな気がして、また好きになった。
なにそれ。そんなの、ずるいよ。
無意識に、人の心、動かさないで。
午後の打ち合わせ中、私はずっと妄想していた。
──夢野くんが、わたしの名前を呼ぶ日。
──夢野くんが、「好き」って言ってくれる日。
それって、いつ?
いつになったら、来るの?
いや、きっと、来る。
(そう信じなきゃやってらんない)
でも……今日だけは、ちょっと弱音。
「夢野くん、可愛い」と思うくらい、
夢野くんに“好きになってもらえる”ように頑張ってるけど、
それでも届かないって、しんどいよね。
──明日も、お弁当作ろうかな……。
それが、今の私にできること。
【To be continued】
読んでくださって、ありがとうございました。
今回のお話では、あかりの“ちょっとだけ弱い部分”が顔を出しました。
好きな人の何気ない一言に救われる瞬間って、ありませんか?
それだけで、また明日も頑張ろうって思えてしまう。
恋って本当に不思議です。
嬉しくなったり、寂しくなったり、期待したり、不安になったり。
だけど──
「明日もお弁当を作ろう」って思えるあかりの前向きさが、
ちょっとでも皆さんの心に残ってくれたら嬉しいです。
次回はいよいよ、夢野くんの気持ちに少しずつ変化が…?
ふたりの距離が、ほんのすこしでも近づきますように。
ブクマや感想、本当にありがとうございます。
いつも励みになっています。
また次回、お会いしましょう。