【第20話】死の廃工場② 僕は両方だから
「・・・ここにいたんですね」
「お前を待っていた」
コテキは以前と変わらず落ち着いた態度を保っている。 黒いTシャツの上に黒いジャンパー。 そして紺色のジーンズとウォーカーを履いていた。
一方、リョウタの制服は爆弾の被害を受けすぎて着ることができなかった。 それで死体が着ていた服を着ている。 コテキはゆっくりと近づき、口を開いた。
「ここまで来るのにご苦労だった。 その圧倒的な再生力だけでここまで来たのか?」
「おかげで地雷と爆弾がどれほど恐ろしい道具なのか分かりました。 国が制限をしたのが幸いだと思います」
リョウタはわざと彼が嫌がることを言った。 そして、彼の意図通り、コテキは彼の言葉に感情的に少し刺激を感じた。
しかし、彼の爆弾がもたらした被害を知っているため、特に反論するつもりはない。 それで平気なふりをして話を続けた。
「他人の何倍の苦しみを経験させる再生力。 それが果たして祝福なのか、それとも呪いなのか・・・」
彼の言葉は決して挑発ではなかった。 身を捨ててまで戦うリョウタに対する個人的な好奇心だった。
彼も自分の驚異的な再生力に対して複雑な感情を持っていた。 それで自分も曖昧に思っていた。
「祝福になれるように生きています」
「それなら自由に生きるのはどうだ? 騎士団の犬になって生きても祝福だと感じにくいはず」
「犬じゃなくて・・・騎士団の隊員です」
「それはあくまでお前の考えだ。 本当に彼らが貴様を隊員として受け入れたように見えるか? 必要なくなればデパートの時のようにすぐ捨てられるだろう」
彼の言葉はいつもよりも微妙に感情がこもっていた。 リョウタは彼の過去を知っていたので、その微妙な感情を読むことができた。 そしてリョウタもデパートの時のかすかな記憶を思い出した。
騎士団が自分に明白な殺意を示していたことを。 彼もやはりそのような状況を体験することになったのがかなり悔しかったので、口をぎゅっと噛んだ。
「・・・」
「お前も内心騎士団を疑っているんだな」
「・・・僕は証明します」
「なんだと?」
「人を救える侵食者がいるということを世界に証明します」
「・・・」
コテキはデパートで彼が人を救出したことを当時は知らなかった。 だが、その後ニュースで出てくる「人を救った侵食者」ニュースを見て、リョウタであることが分かった。
そのため、彼の言葉は単なる虚勢ではないと認めた。 破壊を繰り返す自分と比べて、その圧倒的な身体能力で他人を助けることができる彼の精神が理解できずうらやましかった。
「お前は・・・どうしてそんなことができるんだ? 侵食者になると、自分の欲求と本能に素直になる。それはお前も同じはず」
「僕はまだ記憶しています。 クリスマスの夜、サトウという侵食者に死ぬ直前まで行ったとき、僕は願い事をしました。 この世がもっと暖かくなってほしいっと」
「・・・!」
殺される前まで行ったにもかかわらず、相変わらない利他心。 そして一時同僚だったサトウがまさか目の前の少年と会うとは思わなかった。
「・・・そうだったのか。 奴はお前にやられたのか」
「・・・だから教えてください。 一体どうしてですか? なぜ、そんなに多くの人を殺したんですか? なぜ何の罪もない僕の家族を殺したのですか!」
「・・・」
コテキはリョウタのように一般的な侵食者とは違っていた。 普通の侵食者はほとんど人間的な感情を持っていなかった。
そのため、自分の罪を振り返るどころか、罪悪感という感情すら薄い。 しかし、彼は自分の罪をある程度知っていた。
「・・・それはすまないと思っている」
「なん・・だと・・・?」
素直に自分の過ちを認める彼にリョウタはむしろ違和感を感じた。 自分が予想した答えとはあまりにも遠かったので。
「許されるとは思わない。 俺の罪は何よりも重いのは事実。 それでも俺は前に進むしかない。 新しい世界のためなら」
「そんな方法で作った世界に何の意味があるんですか!」
「これを見ろ」
コテキがリモコンのスイッチを押すと、工場の床が半透明になり、下を見ることができるようになった。 そこには数多くのドローンが爆弾が付着していた。
「これは・・・!」
「ここにあるドローンはちょうど夜8時に東京一帯を爆撃する予定だ。 その時間帯が流動人口が一番多いからなぁ—。残りはあと30分か」
「・・・あんた、正気ですか?」
「すまないけど、そんなものはとっくに捨てた」
「・・・普通の侵食者たちと違ってもやはりあなたも同じ怪物、いやそれ以上の悪魔だ——————!!」
そしてリョウタは彼に向かって突進した。 わざと彼の視線を避けて地面を見ながら接近した。 やがて彼の拳がコテキの顔に的中した。
「どんな理由があっても人を殺してはいけないんだ——————!!」
「くぅ・・・!」
彼の攻撃はこれまで以上に多くの感情を含んでいた。 単なる虚しい正義のための攻撃ではなかった。 ただ個人的な怒りと悲しみを込めた拳。
だから単純な拳も普段よりも大きな威力であり、それによってコテキは遠くへ飛んでいった。 しかし、それで終わらず、リョウタは周りにあるバールを拾って走り続けた。
「フアアアッ——————!!」
コテキは横になったまま彼の棒で殴られていた。 だが、やがて顔を上げてリョウタと視線を合わせた。 彼はそれが何を意味するのか知ってびっくりした。
「うっ?!」
リョウタの体は動けず、コテキは横になった姿勢で彼の腹を蹴った。 そして立ち上がり、リョウタの頭をつかみ、何度も拳で彼の顔を殴った。 最後に彼の顔を床に打ちつけて足で蹴った。
「カハッ!」
横になっている彼に向かって、コテキは口を開いた。
「お前は甘すぎる。この前のデパート以来何も変わってない」
「・・・」
リョウタは痛みのため、彼の言葉に答える余裕がなかった。 コテキは話し続けた。
「侵食者が人を殺すことを拒否するなんて、生まれて初めて見る事だ。 無駄な偽善を持っても役に立たない。
生き残るためには殺すしかない。 騎士団も侵食者を殺すのに、どうして貴様はそうできないんだ?」
「・・・僕は両方だから」
「なに?」
「僕は騎士団でありながら侵食者だから・・・だから僕だけができることをする。 その過程で人殺しはない!!」
そしてリョウタは床のほこりを手に取り、彼の顔にまいた。 視野が遮断されたため、今すぐ能力を使うことができなかった。
「うっ・・・!目が!この野郎・・・!」
「うおおお——————!!」
リョウタは彼の顔を拳で 3回殴った後、頭をつかんでニーキックで腹を攻撃した。
「カハッ!」
そして両手で彼の右腕をつかんで持ち上げ、再び床に突き刺した。
「ふぁぁぁ——————!!」
「クフッ!この野郎・・・!」
コンクリートの床から重い音が工場内に響き渡った。 コテキが反撃の姿勢を取ろうとしたとき、リョウタは右手で彼の顔をつかんだ。 そして指先から黒い光が出始め、コテキはめまいを感じた。
【マインドリーディング】
「こ、これはあの時の・・・!」
コテキがまだ正気でないとき、リョウタは横になっている彼の顔を殴り続けた。 攻撃するたびに周りに血が散った。
コテキはやっと気を引き締めて左手でリョウタの右脇腹を攻めた。 左脇腹と違って肝臓があるため、痛みがさらに大きかった。
「うっ・・・!」
そしてコテキは上半身の力だけで立ち上がり、彼を押しのけた。 そして拳で押しながら、同時に小さな小型爆弾を彼の右腕に取り付けた。
【IED設置】
リョウタは慌てて剥がそうとしたが、コテキと視線が合ってしまった。
「し、しまった・・!」
やがて爆発が起き、彼の右腕は遠くへ飛んでいった。
「あああああ——————!!」
コテキは素早く接近し、追加攻撃を彼に飛ばした。
「フアアアアッ——————!」
「カハッ!」
後ろに大きく押されて床に倒れてしまうリョウタ。 コテキは彼に口を開いた。
「お前はこれくらいのやつじゃないことを知っている。 立つんだ、長谷川リョウタ——————!!」
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