4話 夢
───「シャル、お母さんがいなくてもちゃんとお父さんの言うことを聞くのよ?」
「うん!分かったお母さん」
お母さんの約束を守るとシャルを撫でてくれるから好き。だからちゃんと守らないと。───
───「シャファル、ニアはしばらく帰って来れないだろうけど、しっかり約束守ってニアからご褒美を貰えるよう、父さんの言うことをちゃんと聞くんだぞ?」
「分かった、シャルはお父さんの言うことちゃんと聞く!」
「ははっ、シャファルはいい子だな」───
───「···から···無理だ!まだ···は幼い、俺までいなく···誰が守るんだ!」
(遠くでお父さんの声が聞こえる。)
今は夜でいつも隣で寝ていた父がいず、寝ぼけたまま父を探し始める。
「お前がいなく···たらワシらが守れば···も安心して──」
「──ッ!静かにしろ、シャファルが起きた、お前たちが···から···なら引き受ける、だが死ぬつもり···ない、早く特効薬を···しろ」
「くくっ、初めからそう言えば良いのだ。誰の···ここで住めると···感謝しろ。」───
───「お父さん、大丈夫?無理しなくても私は大丈夫だからね?」
「···ゴホッゲホ!なぁに、ただの風邪だ。すぐに治るだろうから心配すんな。
けど悪いな、今月はシャファルの10歳の誕生日なのにプレゼントどころかお祝いも出来なくてな」
「ううん、お父さんにおめでとうって言って貰えるだけで私はすっごく嬉しいからね」
「本当にシャファルはいい子だな」
それだけ言い、父は眠りにつく。───
───「ゲホゴホッ!ゴホゴホ!」
「おとう···さん···」
日に日に父は弱っていき、今はもう眠ることすらままならずどんどん衰弱していく姿を見ることしか出来ず、自分の力のなさを悔やむ。
そんな時、長老が家に訪問してくる。
「···フンッ、予定の時間になっても来ないと思ったら死にかけじゃないか。そんな状態でやれるのかシルヴァヌス?」
「ゴホッ、···く、ハーデス。あと2人だろ···すぐ行く···先に行ってろ···」
「フンッ、死にかけでも威勢だけはいいな。だが分かってるのか?誰がお前達をここに住まわせているのかを。お前が約束を破ればこちらも相応の対応をするからな。分かったならさっさと来るんだな。」
そう言い残し、家を出ていく長老。
「シャファル、お前は長老···いやハーデスのように力があるからといって、傲慢になったり人を傷つけてはいけない。これはお父さんと約束だ。お前はきっと俺よりも強くなるだろう。だが、後悔したくないなら奪うためにじゃなく、守るために力をふるえよ。」
「うん、約束するから···必ず帰ってきてね?」
「···あぁ、分かったよ。一応、お父さんの契約精霊のアウラシルを残していく。何かあったら助けてもらえよ。」───
───突然、長老が家に来た。
「おい、シルヴァヌスの娘よ、貴様のグズ親は死んだんだがその死体が邪魔なんでな、今すぐ森の奥に捨ててこい。あいつの体は今【身代わり】でいくつもの病原菌を持っている。腐り、また流行り始めると面倒だからな。」
「えっ···」
突然の事で思考が追いつかず、しばらくほうけていると長老が怒鳴る
「さっさと動けこのノロマが!誰がここに住まわせていると思ってるんだ!さっさと動け!」
お前に悲しんでる暇はないと言わんばかりに命令してくる。
長老が怒鳴った時、お父さんが死んだことを理解したのかアウラシルが寂しげな表情で立たずんでいた。───
───16歳の誕生日を迎えた日、長老に呼び出されたので長老の家に行く。なんの用か聞くと
「お前ももう16歳になり、大人になった。これからはきちんとワシとワシの息子のためにその身体を貸せ。無論、息子には許嫁はおるが無類の女好きで許嫁以外と間違いが起きないようお前には息子、ウィゲスの性奴隷になってもらう。もし子が出来ても余所者のお前の子だ、遠慮なく殺せるからちょうどいいの。」
「え···?」
「それにワシも久しく若い女子を抱いておらんからの、ウィゲスだけでなくワシの奴隷にもなってもらうかの」
そういうと長老は突然告げられた要求に思考が停止していた私を押し倒し、服に手をかけようとした時、突然長老が吹き飛ばされる。
『始祖様と守護者様の子、姫様に手を出すのは許さない』
そう言いながらずっと見守ってくれていたアウラシルが私の前に化現し、守るように降り立った。
吹き飛ばされた長老が起き上がって憤怒の形相でこっちを睨んでいた。その顔は飛ばされた場所が悪かったのか右目が潰れていた。
「貴様貴様貴様貴様キサマキサマーーー!!」
目を潰されて激怒した長老が私に向かって魔法を放つがアウラシルにいとも簡単に防がれる。
その防いだ隙をついた長老が大声で
「反逆じゃ!シャファルがワシらを滅ぼそうとしておる!皆の者、反逆者を殺せ!」
と叫び、また魔法を放ってくるがアウラシルが防ぐ
『無駄よ。姫様を気づつけてきたあなた達にはもう容赦はしない。』
そう言って、長老達とアウラシルの争いが始まった。───
───初めは優勢に戦っていたアウラシルだが、シルヴァヌスを殺したお返しとばかりに長老を殺してから、村の皆の攻撃の手が激しくなって徐々に消耗していった。
アウラシルは私を守るために村の人たちを1人、また1人と命を奪っていくが、そのせいで皆から「村から出ていけ!」や「死ね!悪魔の子め」と言われる度にもうここには居たくないと思ってしまう。
化現したアウラシルが消耗してきたことを察した村のみんなが一斉に攻撃してきたが、アウラシルは風のドームを作って外と仲を遮断し、優しげな表情で近づいてきて
『姫様、私はもう持ちそうもありません。この風の結界が解けた時、私の最後の力を振り絞り作った風で安全な場所まで逃がしますので、そこからは姫様のお力で生きて下さい』
「やだ、やだよ!そんなことしたらアウラシルが···」
『姫様、私はもうアウラシルではありません、ただのアウラです。それに、力を使い果たしたとしても死ぬことはありません。あの方の元に戻るのが少し早くなるだけですから。それに姫様ももうここには居たくないはずです。』
「そ···うだけど、でもただのアウラってどうゆうこと?それにあの方って誰のことなの?」
『···今の姫様に教えることは出来ません。それにもうお別れの時間です。じきに結界が消えます。今まで不幸せだった分、幸溢れる人生になることを切に願ってます。』
そう言ってアウラは力を振り絞り初める。
『風よ、姫様を安全な場所へ。それでは姫様、お元気で。また会いましょうね。』
「アウラ!!」
結界が解けた時、凄まじい風が優しく私を包み、村の皆が反応できないほどの速さで飛び始める。
私を包んだ風は涙を拭い、微睡みを与えてくる。まるでお母さんに守られているような優しさに意識を手放す。