プロローグ
カタカタ…カタカタ…
時刻は、午前4時。上ってきた太陽が外を照らす時間。
カーテンを閉めてもなお薄暗い部屋で一人の男がパソコンで何かをやっていた。
「できた、できた。…よっし!!」
男がやっているゲームは「Unlimited adventure end」というゲームで、ストーリーの良さと圧倒的自由度で世界的に人気の話題作だ。
名前の通り最終版で運営会社はもうこれ以上は出さないと言っている。
そうなるとやはり何か噂が立ってくる。
曰く、運営の人間は寝る時間が三時間しかないほどの激務だとか、曰く、スポンサー会社がそろって手を引いただとか。
そんな噂の中にはびっくりするほど突拍子のないものも当然ある。
その一つに、このゲームを完全制覇したものはこのゲームの世界に行けるというものがあった。
男は「Unlimited adventure 」シリーズの大ファンだった。それこそこのゲームのために一生をささげられるぐらいには。
そんな男だからだろうか。こんな何の根の葉もないうわさを信じ、「Unlimited adventure 」シリーズのすべてを制覇しようとしている。
そもそも、先にも書いたように、「Unlimited adventure 」シリーズは信じられないほどの自由度を誇る。ゆえに何をもって完全制覇とするかなどわからない。
それでも男はこの作業をやり続けているのだ。とても正気とは思えない。
「これで俺は、異世界に行ける!」
いや、もうとっくに狂ってしまっているのだろう。
強い達成感による反動か、たまっていた疲労が男を襲う。
男は睡魔に抗えず、床に滑り落ちていった。
《特殊職:成長の種の条件を達成しました》