表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

つなげろ

作者: sonoda

『ねぇ、今時間ある?』


大学卒業以来、全く音沙汰がなかったA子から急に連絡がきた。

昔のように愚痴を聞かされるだけだと思い、やんわり断る。

しかし何やら深刻な悩みを抱えているらしいので心配半分、興味半分で承諾した。

時計の針は午前二時辺りを指していたが、五分程でA子は私の家に来た。

私に連絡をした時点で家の周辺にいたらしい。


「それでA子、急に連絡くれたけど悩みを聞いてほしいって珍しいじゃん。どうかしたの?」


「それが、最近見た夢の話なんだけど……」


--

薄暗い密室で目が覚める。石で作られた壁、散乱する瓶、埃の独特な臭いが鼻につく。

周囲を見る限り光源は存在しないはずだが、物の位置は把握できていた。

なにやら木製扉だったものと推測される破片が、前方に続く狭い通路の手前に散乱している。

二人並んで歩けない程の通路を進むと階段があった。

ここは地下なのだろうか。螺旋状になった階段を上る。

辿り着いた先のボロボロになった扉に触れたところで、ハッと目が覚めた。

お腹の上には愛猫がくるまり気持ちよさそうに寝息をたてていた。

安堵し、白くもふもふな愛猫を撫でる。

この時は悪夢とも思っておらず、変わった夢ぐらいの印象だった。

しかし私はその後もまた同じ夢をみることとなる。


不可解なのは、一日目と同じ行動をする事だ。

意識を持ち、周囲を見渡し、階段を上っていく。

そして、扉に触れると目が覚める。


六日目、同じ行動をするのは相変わらずだったが、これまでと何かが違った。

埃だらけの部屋の方面から、微かにザーザーと聞こえているのだ。

雨の音か。いや、昔テレビで流れていた砂嵐に近い音。

何かの言葉を繰り返している気もした。

本能的に耳が研ぎ澄まされ、徐々に聴覚が適応し始める。


『………ろつ……ろ………………げ…』


かなり早い速度で繰り返しているようで中々聞き取れない。

声のトーンは一定、途切れることなく何度も何度も同じ音を繰り返す。

階段を一歩、一歩と上っていく。上る度に音の距離が近づき、心拍数がどんどん早くなる。

後ろから足音は聞こえない。


『つな…ろつ……ろつ…………なげろ』


つな…なげろ…?扉はもう目の前だ。

後は、扉に触れるだけで目が覚めるはずだ。

右手がゆっくりと伸び始めた。その直後。


『つなげろつなげろつなげろつなげろつなげろつなげろ』


無機質な男の声が私の中で響いた。扉に触れたところで目が覚めた。

白い猫が私の横で威嚇していた。


--

A子が帰った後、私は薄暗い密室にいた。

短編をちょくちょく書きたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ