表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/49

16


 転移の魔方陣でエルジュ王国へと転移して、馬車に揺られて王都へ向かう。さすがに魔王本人が訪れた時ほどの熱気はなかったが、それでも歓迎ムード一色だ。

 中には魔族の姿を見て怯える住人もいるし、帰れと心無い言葉を投げつけてくる者もいたが、留学生たちは誰も気にしていないようだ。


「いやしかし、少しぐらいは反応があると思ったのだがな。怒りとかあるんじゃないのか?」


 寮の前、馬車から降りながら魔王が留学生たちへと聞く。ディーゴが首を振って、


「いえ、予想はしていましたから。私たち魔族でも、人族を嫌う者は未だ大勢います。人族にも魔族を嫌う者がいて当然でしょう」

「それに、ルークさんが本当に何も気にしていないみたいですしね」


 続いて言ったのはドワーフのガルツだ。なるほど、と魔王は頷いて、


「そこまで理解しているのなら問題ないな。寮にいる学生にも、未だ偏見を持っている者はいるだろう。寛大な心を持ち、器の違いを見せつけてやれ。間違ってもこちらから手を出すなよ」

「畏まりました」

「あと、俺はお前らと同じ留学生だ。気楽に話せ」

「ぜ、善処するよ……」


 ディーゴとガルツが頬を引きつらせながら頷いた。

 仕方がないとはいえ、魔王も無茶を言うものだ。自国の王へと気楽に話せと言われても、はいそうですかと応じられるわけがない。


「あまり無茶を言うとかわいそうですよ」


 魔王の側に寄ってそう言うと、魔王はいたずらっぽく笑って、小声で返してきた。


「面白いだろう?」

「確信犯ですか……」


 お茶目と取るべきか、嫌らしいと取るべきか。少なくともミランダはこの立場に立ちたくはない。がんばれ若人。いや、年は大して変わらないけど。

 堂々と寮へと向かって歩いて行く留学生六人。もっとも、そのうち五人は表情にわずかに緊張が見える。間違い無くどこかの魔王のせいである。

 そんな六人を寮の前で出迎えたのは、王子のロイドと、侯爵家のフローラだった。


「ようこそ、エルジュ王国へ。僕はロイドだ。王子という肩書きはあるけれど、学園内では身分は考慮されないことになっているから、気にせず話しかけて欲しい」


 にこやかに、ロイドが笑って手を差し出す。魔王も笑顔でその手を取った。


「うむ。俺はルークだ。よろしく、ロイド。短い期間ではあるだろうが、仲良くしよう」


 この魔王の態度に、学生側が一様に驚きを顔に浮かべた。反対に、ロイドは本当に嬉しそうだ。わずかに怪訝そうにする魔王に、ミランダは耳元でそっと囁いた。


「身分は考慮しない、とありますが、有形無実となっている制度です。ロイド王子はその通りにしたいみたいですが、他の学生はへりくだっています」


 なるほど、と魔王が小さく頷いたので、ミランダはそっと離れた。


「では俺の友人たちも紹介しておこうか。……気になっているんだろう?」


 是非、とロイドが促してくる。その反応に、魔王も気を良くしたようだ。自分の国の子を紹介できるのが、ちょっとした自慢のようで嬉しいらしい。

 ディーゴの紹介では女生徒たちが黄色い悲鳴を上げて、ルルエラとエーシャの紹介では男生徒が興味を示してくる。特にサキュバスのルルエラの時が顕著だった。これだから男は。


 ミランダから見ても格好良いと思えるディーゴの紹介での黄色い悲鳴があるので、あまり強く言えないのが少し悲しいところである。

 ガルツとレンザの紹介の時は、今まで反応を示していなかった生徒が興味深そうにしていた。技術関係を学んでいる生徒や、騎士を志す者などだ。

 留学生の五人はそれらの反応に戸惑いつつも、安堵の表情を浮かべていた。やはり、嫌われるよりも歓迎された方が嬉しいだろう。


「食堂でささやかだけど、パーティの用意をしてあるんだ。もちろん、君たちの歓迎の、ね。是非とも参加してほしい」

「もちろんだ。参加させてもらうとも。ただその前に、部屋に行ってもいいだろうか? 荷物を置きたいし、少しばかり休ませてもらいたい」

「ああ、大丈夫だよ。男子諸君は僕が案内しよう。フローラ。ルルエラさんとエーシャさんをお願いできるかい?」

「畏まりました」


 フローラがルルエラとエーシャの前に出て、頭を下げる。ルルエラたちも慌てたように頭を下げた。自己紹介をして、三人で寮の中へと入っていく。


「それじゃあ、僕達も行こうか」


 ロイドの案内で、魔王たちも寮へと足を踏み入れた。




 寮に入ってすぐはちょっとした広間になっていて、学生たちの憩いの場となっている。食堂や大浴場も一階に集中しているらしい。というよりも、学生の部屋以外の施設のほぼ全てが一階だ。

 二階は平民や下級貴族の部屋が集まっている。三階はもちろん上級貴族だ。今回、留学生は全員が三階に部屋を与えられている。


「身分を考えないというわりに、寮ではっきりと扱いを変えているのだな」


 これでは意味がないだろうに、という魔王の呆れ声に、ふわふわ浮かんでいるミランダだけでなく、ロイドも苦笑しつつ同意を示した。


「言いたいことはよく分かる。僕もそう思うよ。でも、部屋ぐらいはわけておかないと、色々とトラブルが起きてしまうんだ」

「だろうな。今まで特別扱いをされていたのに、突然平民と同じだと言われて納得できる貴族はいないだろう」


 故に階層ぐらいは別にしたというのは分からないでもない。ロイドとしては、これすらもどうにかしたいそうだが、さすがに王子一人の意志でどうにかなる問題でもないだろう。


「ちなみに、僕の意見に賛同してくれた子もいるんだよ。ミランダという子で、平民にも分け隔てなく接していた優しい子だった」

「本人がいないからって余計なこと言わないでくれます? いるんですよここに。おいこのやろう」

「……っ」

「ん? ルーク、どうかした?」

「い、いや、何も」


 ロイドの周りをくるくる回りながら文句を言っていると、魔王が噴き出しそうになってしまったのが分かった。恐る恐る魔王へと視線を戻せば、微妙に睨まれているような気がする。

 これ、後で怒られるやつだ。ミランダはそっとロイドから離れた。


「えっと……。ロイド、と呼んでいいのか?」


 ディーゴが聞くと、ロイドは驚いたように振り返って、そして嬉しそうに笑った。分かりやすいと思うが、対等に接してもらえるのが本当に嬉しいらしい。


「子犬王子ですね」


 ぼそりと呟くと、一瞬だけだが魔王に睨まれた。黙れ、ということだと思う。

 そっと距離を取ったミランダの耳に、ロイドの嬉しそうな声が届く。


「ああ、いいよ! もちろん! それで、何かな?」

「お、おお……。びっくりした……。寮の見取り図はもらってるんだけどさ、俺たちの部屋ってどこになるんだ?」

「空き部屋がいくつかあるんだ。とりあえず全てを案内するから、そこから選んでもらえるかい?」

「分かった」


 納得したようにディーゴが頷いて、その視線はそのまま魔王へ。魔王は振り返ることはせずに、軽く手を振った。

 好きに選べ、と言いたいのだろうと、今までの付き合いでミランダは理解できるが、他の留学生に伝わるはずがない。案の定首を傾げてしまっている。

 ミランダは魔王の隣に立つと、魔王へと言った。


「今のはこの子たちに伝わっていませんよ。ちゃんと口にしてあげてください」

「む……。そうか」


壁|w・)感想返信できてなくて申し訳ありません。

ちゃんと目は通しています……!


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 念力使えるんだから筆談したまえ、ミランダ君。空中に浮く紙と筆記具がシュールだが(笑)
[良い点] 学園生活さあ思う存分学園を満喫するがよい [気になる点] 帰れ! よろしい、ならば侵略だ。 ただの侵略では物足りない、一心腐乱の大進攻を! [一言] 更新お疲れさまです とりあえ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ