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壁|w・)忙しくて、読み直しができていません。
誤字脱字、人名違いが多いかもしれません。申し訳ないです。
「分かりました……! ではまず、その誰かさんを調べます!」
明日から忙しくなる。そうしてやる気を漲らせたミランダだったが。
「うむ。協力してやりたいのは山々なんだがな……」
「はい?」
「今回はあくまで視察だ。二日後には戻るぞ」
言われた意味が分からずに、ミランダは硬直してしまった。
魔王はしばらく反応を待ってくれていたが、やがて面倒になったのかさっさとベッドに入ってしまう。どうやらここに来る前に就寝の用意は調えていたらしい。いやそれはどうでもよくて。
「え」
呆然としたミランダの、呆けたような声だけが、暗くなった部屋に静かに響いた。
二日後。当然のことだが、ミランダは魔王城の魔王の執務室にいた。ミランダとしては残って調べたかったが、魔王の魔力がなければ身動きできなくなる、もしくは存在できなくなるだろう状態なので、こうして一緒に戻ってきたのだ。
一日だけは自由な時間があったので、知っている限りの貴族の屋敷に侵入してみたのだが、結局何も分からなかった。
だがそれも当然だ。後ろ暗い過去をわざわざすぐに分かるようにする馬鹿はいない。故に書類などをじっくりと調べたために、三つほどしか屋敷を回れなかった。当たり前だが、男爵家まで含めれば貴族は数多くある。そう簡単に当たりを引けるわけがない。
「どうすれば……」
執務室をうろうろしながら考える。どうにかして探したいが、魔王の側を離れることはできない。魔王がまた視察に行く機会があったとしても、二日三日で探しきれるわけもない。
「どうすればいいの……」
ゆらゆら、ふらふら。執務室の空間を漂っていると、魔王がため息をついたのが分かった。
「やれやれ……。あとで驚かせようかと思ったのだが、いい加減鬱陶しい」
「鬱陶しいなんてひどいです。これでも私、悩んでいるんですよ。よよよ」
「その嘘泣きをやめろ。不愉快だ」
「失礼しました。……いや、ひどくないですか?」
調子に乗ったのかもしれないが、その言い方はあんまりだと思う。魔王を睨んでみると、ふっと鼻で笑われた。
「そんなことよりも、とっておきの話だ」
「そんなこと」
ひどい。
「うむ。ついてこい」
魔王が立ち上がり、執務室を出て行く。ミランダも慌ててそれを追った。
魔王が向かった先は、魔王城の地下だ。地下室にはなんとなく牢屋があるイメージだ。そんなことを言うと、魔王に呆れたような目を向けられた。
「犯罪者を城に置くとか、正気を疑うぞ」
ごもっともである。
「お前の国ではそうなのか?」
「物語にあっただけです。私の国ではどうなのかは、ちょっと知りません。公爵家とはいえ、成人前でしたから登城することが稀なのです」
「む……。それもそうだな」
薄暗く、けれど広い廊下を歩く。なんとも雰囲気のある通路だ。物語に入ったような錯覚を覚える。
「暗いな」
魔王が呟き、指を鳴らす。廊下が一気に明るくなった。
「えー……」
「なんだ」
「こう、雰囲気って大事ですよ?」
「お前は勇者みたいなことを言うな……」
なんと。会ったことも見たこともない勇者だが、もしかするとミランダと同じような物語を読んだことがあるのかもしれない。少しだけ親近感を覚えた。
やがてたどり着いたのは、大きな扉。魔王がそこを大きく押し開いた。
そこにあったのは、大小様々な透明な筒。魔王曰く、カプセル。カプセルはそれぞれ様々な色の水で満たされていて、中には人間が入っていた。人族であったり、魔族であったり、それもまた様々だ。誰もが目を閉じ、漂っている。
そのカプセルの側には大勢の魔族。書類を持って、何かを話し合っている。興味はあるが、魔王の目の前なので聞きに行くのは控えておいた。
「魔王様。これは一体……?」
魔王が片手を上げる。黙れ、という合図。人の目があり誰に聞かれているか分からないから応えられない、ということだ。なお、勝手に喋るのは問題ないと言われている。
魔王は一つのカプセルの前で集まっている集団へと向かう。その集団の魔族たちは魔王に気が付くと、慌てたように跪いた。
「これは、魔王様。このような場所までご足労いただき、申し訳ありません」
「かまわん。それで?」
「はっ。この体なら問題ないかと」
代表して話をしていた魔族が立ち上がり、側のカプセルを示した。
そのカプセルは黄緑色の水で満たされていた。中に入っているのは、深紅の髪の魔族。もっとも、魔族としての特徴は小さな角しかないのだが。
「この体なら、魔王様の魂にも、魔力にも耐えられるはずです」
「そうか。では引き続き調整を頼む。急な依頼ですまんな」
「滅相もございません」
「これが終われば、酒でも届けてやろう。ついでにボーナスも弾んでやる。期待しておけ」
おお、と魔族たちから歓声が上がる。随分と太っ腹だな、と思うが、それほどこの集まりは大事なのかもしれない。
魔王は魔族たちへとさらに何かを述べて、踵を返した。執務室に戻るようだ。
ミランダもそれに続く。扉を通って、その扉がしっかりと閉じられてから、ミランダは魔王へと問うた。
「魔王様。先ほどのものは何ですか?」
「何だと思う? 予想でいいから言ってみろ」
いたずらっぽく笑う魔王。なんだか子供のような笑顔だ。ちょっと楽しんでいる、という程度には魔王のことが分かってきた。
「そう、ですね……。ホムンクルス、なんて……」
「うむ。その通りだ」
「えー……。駄目なやつじゃないですか……」
ホムンクルス。人造人間。それに関する魔法理論などは遙か昔からあるらしいが、これに関する研究は禁止されていて、人族も魔族も破ってはいけないルールのはずだ。ミランダが知る限り、人族側は守っている。
「本当にそう思うのか?」
魔王の問いに、ミランダは口をつぐむ。
ない、とは言い切れない。こうして魔族がひっそりと研究をしているのだから、人族側がしていないとは言い切れない。
「そもそもだ。お前は誤解をしている」
「誤解、ですか?」
「そうだ。禁止されているのは、ホムンクルスを作ること。研究そのものは禁止されていない」
壁|w・)誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。




